―――――――045:変化―――――――
「いやぁ、驚くほどに昔の顔ぶれがいるものだね。」
今日も今日とて何故だかエヴァーズ城にいる某国の英雄。
「まぁ、3年しか経ってないからな。」
そして、その目の前には当然の如く、紅茶を啜る役職不明な少年。
「君が言う台詞じゃないだろ。」
右には常に不機嫌、暴走傾向ありのルック。
「そんなに多いんですか?」
その左にはエヴァーズ城の城主であり軍主でもある。
カフェテラスに、今日もある意味派手な一団が揃っている。
「多いんじゃないか?違う国の戦いだってのに、関係者や当事者、知人友人顔見知りがぞろぞろいるじゃないか。」
「まぁ、そうだけどね。ルックもその一人だし?」
「僕も一緒にしないでくれる?僕はレックナート様に言われて仕方なく・・・・・・」
「理由も一緒じゃないか。」
「五月蝿いよ。」
これもまた毎度の如く険悪なムードになるルックと、そのルックで遊ぶ。
は慣れたもので、我関せずと、クッキーをつまんで紅茶を啜る。
「3年前も、『レックナート様にいわれて』来て、『石版の前に立ちっ放し』だったじゃないか。」
「それが僕の仕事なんだよ。」
「パシられるのが?」
「違うよ!!」
更に険悪になっていく2人の喧騒なんてどこ吹く風。は空を見上げながら『今日も洗濯日和だ。』なんて所帯じみたことを呟く。
そんな以上にサラリと空気を流し、はにこやかに尋ねる。
「三年前と変わらない人っていますか?」
「「コイツ。」」
「見事に答えが一致したな・・・」
即座にビシッと相手を指す2人に賞賛を送るが、はそのままの笑顔で「その他には?」と言っているが、背後には「きちんと質問に答えろよ☆」と書かれている気がしないでもない。
「フリックだね。」
「確かに、三年前と変わらず青いし。
他に言うなら、シーナか?全然進歩してない。」
「三年前からああなのか?シーナは・・・・・・」
無愛想ながら答えるルックと、シーナを挙げる。
はシーナのご両親と先の軍師に同情すると、溜息を漏らす。
ただ、フリックに対しては、特に反論は無いらしい。
はひとしきり納得する。
「そういえば、良くその2人は変わっていないって聞きますね・・・・・・」
「正しくは『成長してない』だよ。」
「ルック、それは言いすぎ・・・・・・」
「君も否定してないよね。」
「じゃぁ、逆に一番か変わったのは?」
何気ないの言葉に2人が微妙に固まった。
そして、目線を交わした訳でもないのだが、2人揃って、ぼそりと言う。
「「 」」
何故か、の表情が硬い。
何故か、ルックの顔色が悪い。
そんな2人の様子には不思議そうに小首をかしげる。
その日の午後、ブライトの世話をした帰る階段の途中で、上から降りてくるとに会った。
はぎこちない笑顔を浮かべ、はにこやか過ぎる笑顔。明らかに様子が違う二人を不思議に思いながらも、一緒に食堂へ向かう。
「どうかしたんですか?2人とも・・・・・・」
「いや、大したことじゃないんだけど、ねぇ君?」
「うん、大したことじゃないんだ。」
「・・・・・・そうですか?」
明らかに態度の可笑しい2人に、流石のフッチも気になったのか、訝しそうな顔をする。
たちはぎこちない笑いで誤魔化しつつ、話題を変える。
「そういえばさ、フッチって三年前の開放戦争にも参加していたんでしょ?」
「そうですけど・・・・・」
「戦闘の後で、何かあった?」
「は?」
脈絡の欠片も無い話題、さらには『何をしていたのか?』ではなく、『何があったか』という問に首をかしげる。
そのしぐさで、質問の可笑しさを感じたのか、わたわたとが慌てだす。
「いやっ、別に何かあったのかなって思っただけで、他意はないんだ!!!
べつに、あまりにも性格が変わったとか言う事とは関係してないしっ!!!」
「!!!」
見事なまでに墓穴を掘ったをが止めるが、既に遅く、フッチの目つきが変わっていた。
「お2人は、誰に何を聞いたんですか?」
「いや、べつに・・・・・」
「フッチ、目が据わってるよ・・・・・・・」
壮絶なほどににこやかな笑顔のまま、フッチは問いかける。
「誰に、何を聞いたんですか?」
「「とルックです。」」
即座に答えると、2人は矢継ぎ早に喋りだす。
「フッチは三年前、初対面のに失礼な台詞を浴びせて・・・・・」
「一人称は『俺』・・・・・・」
「テンプルトンと同じくらい小生意気で・・・・・・」
「性格が悪かったのに・・・・・って。」
「それで、きっと三年間の間にハンフリーが性格矯正学校に入れたんじゃないかとか・・・」
「記憶を操作して、別人に作り変えたかしたんじゃないかって・・・・・」
フッチはそこまで聞くと、溜息を漏す。
「そんな訳無いじゃないですか。」
「あはは・・・・・・そうだよねぇ?」
「そんな事あるわけないよね・・・・・・」
「そうですよ。
もちろん、御二人も、信じたわけじゃないでしょうね?」
「「もちろんです。」」
びしっと2人は敬礼をするように答えると、フッチは満足そうに微笑み、『ちょっと用事を思い出しました・・・』と席を外していった。
その姿が、完全に無くなってから暫くして、ポツリとが
「変わってるかもね。外面が。」
「・・・・・・良く口に出していえるな。」
は頷く事も出来なかったが、否定はしなかった。
その後、ルックが精神的理由で塔に戻っていたり、をバナーの村に迎えに行っても、置手紙があって逃走していたりと、ささやかな変化があったらしい。
□■□あとがき□■□
フッチが真っ黒になってしまった・・・・・・
彼はとりあえず、グレーゾーンだったのに・・・・・・
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