―――――――025:108―――――――






いつもと変わらない晴れた日の昼下がり、がポツリと呟いた。



「宿星って、108人なんだよね・・・・・」
「?」



目の前に座って本を読んでいたは不思議そうに顔を上げる。



「まぁ、確かに宿星は108人だけど、それがどうかしたのか?」



宿星は天魁星に始まり天地合わせて108星――つまり108人である。
その星は歴史の変わり目に現れ、108人すべて揃うと何かが起こる・・・と怪談話風に言い伝えられているが、実際に三年前の解放戦争で天魁星が現れ、知っている人も増えている。
かく言うも天魁星に選ばれ、現在必死こいて108星を全て集めようと頑張っていたりする。
だから尚更改めて『宿星が108人である』と感慨に耽る理由が分からない。



「いや、宿星が108人で歴史の変わり目に現れるってのは知ってるよ。
でも、ちょっと不思議なんだよねぇ・・・・・」
「不思議?」



も、読んでいた本を閉じると軽く頸をひねる。



「まぁ、確かに改めて考えてみると不思議だよな。
何で歴史の変わり目に現れるのか、とか。」
「いや、そんな小難しい事じゃないんだけどね。」
「難しくは無いと思うけど・・・・
じゃぁ、何が不思議なんだ?」



は『大した事じゃないんだけど。』と前置きをして、素朴な疑問を投げかける。



「何で108なの?」
「・・・・・・・・・・・」


はあまりに素朴な、それでいて答えようのない疑問に絶句する。
そう言われてみれば、確かに何故108なのだろう?



「109とかよりは偶数だから切れはまだ良いのかも知れないけど、だったら100とか110とかの方が切れが良くない?それとも、何かの倍数だっけ?」
「天地で別れるから、半分の54?・・・・・何も思いつかないけど・・・・・
確かに切りの悪い数字だよな。120とか150の方が切れがいいのに。」
「え?150は嫌だよ。」
「何で?」
「人集めが大変じゃん。」
「おい、こら。」
「駄目かぁ〜〜やっぱ108で考えないといけないのかな?」
「・・・・・・・・・」



何も無かったかのようにスルーするを睨むが、いつもの事なのでまったく意味が無い。
溜息をつくと、ふと根本的なことに気付いた。



「なぁ、・・・」
「なに?」
「・・・・・・・・・いや、何でもない。」



『そもそも、108に理由はあるのか?』とは突っ込みかけたが、取りあえずやめておく。
いきなり全否定しても仕方が無い。
そんなの様子に気付いた様子も無くは首を傾げたまま、ブツブツと呟いている。



「う〜ん・・・108、108・・・」
「いや、お経みたいに唱えても意味無いと思うんだけど・・・・?」



もはや思考を放棄したはまた本を開きながら、にツッコミを入れる。
が。



「ねぇ、今何ていった!?」
「うわっ!お前本は大事に扱えよ!!」



はいきなり本を強奪され睨むが、はやはりの言葉をスルーして詰め寄る。



「今、君何ていったの!?」
「はぁ?“意味がない”?」
「ありがちな台詞を言わせないでよ!
聞きたいのはその前、その言葉の前だよ!」



ガシッを腕をつかまれにじり寄って来るに、訳が分からず戸惑いながら思い出す。



「え〜と・・・“お経のように唱えても”?」
「そう!!それだよ!!」


はその答えに目を輝かせるが、は一体何がそれなのか分からない。



、何がそれなんだよ?」
「だから、108星の秘密さ!!」



(何時から秘密にまで発展したんだ?)

思考の飛躍に戸惑いながらも、の『お願い、ボクに聞いて!』視線に促されてお決まりの台詞を言う。



「で、その秘密って何だ?」



まってましたとばかり、は立ち上がると、ビシッとに指を突きつけ自信満々に言い切った。



「108は煩悩の数だったんだよ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」



終劇。










の性格が違うよ・・・・