突然連載! 
 時代小説家 久坂 裕の 
DV法斬りまくり
第一回】
DV本を読んでみたら……(その1)
18.07.05

 みなさん、こんにちは。DV冤罪被害者救済のジャンヌ・ダルクである野牧雅子さんのホームページに突然、登場した久坂裕(くさかゆう)です。本業は時代小説家。と言ってもまだ駆け出しです。今日までに上梓したのは室伏忠慶事件帳「井戸の首」「遠い月」(ともに廣済堂文庫)です。でも作家は作家です。嘘だと思ったら書店に駆け込み、私の作品を探してみてください。そして、購入してください。私の人となりがわかるはずです。
 この度、縁あってDV法に関するいろいろなことを書かせていただく栄誉に預かりました。その「縁」についてはおいおい明らかにしていく次第。
 で、記念すべき第一回のテーマは、女性向けのDV本を取り上げる事にしました。
「弁護士が説くDV解決マニュアル(日本DV防止・情報センター編 長谷川京子 佐藤功行 可児康則共著)

 実はこの本は、私がDV事件に関わるようになって、最初に購入したものです。タイトルからもわかるように、DVに関わる離婚についての弁護士達の筆になる解説書です。
帯には「改正DV防止法、改正人事訴訟法の活用を被害者の立場からわかりやすく解説」とあるから、いってみればDVに苦しむ人たちの、カシコイ離婚の仕方を綴った本なのですね。
 「いやー、久坂さんに言われて買ったけど、最初の二、三行読んだだけでいやになっちゃって」と野牧さん。彼女は本能で生きている人なので、理屈は必要ないのである。しかし、私は、たぶん野牧さんの家のどこかに埋没しているであろうこの本を、読破しました。いや、読破という言葉を使うのは適切ではないか。「大菩薩峠」や「ジャン・クリストフ」じゃないものな。本文で言えば百五十ページそこそこのこの本ですから。ちなみに価格は2000円。

恐るべき「根拠」のなさ

 この本、購入した書店の店員に聞いたところ、DV本の中では、なかなか売れ行きがよいそうである。と言っても、私の小説には及ばないが。ふふふ。(アマゾンランキング調べ)
そんなことは、まあ、どうでもよいことだが、この本の著者である長谷川京子、佐藤功行、可児康則の三氏は、DV離婚の案件を数多く取り扱っているらしい。
「改正DV法、改正人事訴訟法の活用を被害者の立場からわかりやすく解説」と帯にうたっているだけあって、たしかにわかりやすい。なるほど、これなら離婚できるわなあ、と思わせるに必要十分な内容であります。
 ところが、読み進んでいくうちに私は妙な違和感を覚えていったのであった。私、頭が悪いので、その違和感が何かを突き止めるまでに、100ページほど読み進めなければいけなかったのですが、その違和感の原因をとうとう突き止めました。


 『「婚姻関係を継続し難い重大な事由」(民法770号1項)があれば離婚できるとされています。具体的にどんな事由がこれに該当するかは、最終的には裁判官が「社会通念」によって判断することになりますが、DVがこの「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当することは明白です。また、最近では、すでに裁判沙汰になっているということ自体が、この事由に該当するものとされ、大抵の場合、裁判所が離婚を認めない、ということはありません』【第6章 離婚の手続き (1)離婚できるかどうかについて 「婚姻を継続し難い重大な事由p106より」】

 私は今は作家ですが、その前は編集者をしておりました。で、駆け出しの頃は先輩諸氏によくこう言われたものです。
「どんな本でもそれが活字である以上「脅威」であり「権力」となりうるのだ。このことを決して忘れてはいけない」
 つまり、どういうことかというとですね、多くの読者は「結論」を鵜呑みにしてしまう、だから「結論」を記述する場合は「客観的な事実や正しい論理」をまず提示しなければダメである、根拠なき結論を導き出してよい人はこの世に一人、それはバカボンのパパである、と、こういうことなのです。

 ところがこの文を読むと○○ダカラコウデアルという感じで、結論を導き出すための根拠がおっそろしく曖昧なんですね。

 そこで私、朱鷺書房に以下の内容の質問状をお送りしました。

 前略、私は御社発行の「弁護士が解くDV解決マニュアル」という本を購入した、名古屋の久坂裕という者です。
 このたび、本の内容において「わかりにくい」部分がありましたので、ご質問をさせていただくとともに、明確なご解答を得たく、ぶしつけながらお便りを差し上げた次第です。
 わかりにくい記述は以下の部分です。

 そこで質問なのですが、第一点としてこの文章で述べられているDVとは、DV防止法における解釈上のDVなのか、それとも一般的な概念としての、いわゆる家庭内暴力としてのDVなのかということです。

 前者であれば、私の解釈ではDVが本当にあったかどうかはわからない。DV防止法は「被害者」の保護を第一に考えて作られた法律ですので、実際には被害者の訴えだけで運用されます。つまり、DVの訴えを起こした人の証言は暴力をふるった側に対する精査がなされることなく機動します。
 その解釈がなされるには、「被害者」が訴えるDVにおいてその事実が本当にあったかどうかの審議がまずなされ、そののちDVの信憑性が確保されてから、はじめて「婚姻を継続し難い重大な事由」となるのではないでしょうか。
 もちろん、この場合しっかりとした「証拠」があれば話は別ですが、精神的暴力で訴えを起こし、行政上の措置(一時保護など)を受けたとしても、しっかりとした「証拠」がなければ、「婚姻を継続しがたい重大な事由」とはならないのではないでしょうか。
 巷では最寄りの機関、例えば婦人相談センターとか警察でDVの相談をしたことが、DVの証明となるという言い方がなされますが(女性向けDV問題サイトなどに多い)、しかし、裁判と言うことになると、そのDVについて「証拠」や「証言」「論理的な陳述」が必要になってくるのではないでしょうか。

 つまり、裁判となれば、離婚原因にDVがあげられる場合、まず最初にその事案についてDVがあったかなかったかが審議されなければいけない。特に「証拠」に乏しい精神的暴力、性的暴力についてはこのことは裁判をする上で必須だと思いますし、事実、私が知っている現在進行中のいわゆるDV裁判では、この点で原告と被告がやり合っています。つまり、裁判ではDVがあったかなかったかを丁々発止とやり合っているわけで、こうした現実に即して考えると「DVが云々」という記述は、読者に誤解を与えかねません。
 この記述では「被害者」の「訴え」はすべて真実によるものである、という考え方に基づいているのだと思いますが、DVの訴えが「虚偽」であってもDV防止法はその性格上機動してしまうという欠点を持っています。
 しかし、この本の記述はすべてにおいてそうなのですが、DV防止法がもつこの欠点には一切触れられておらず、そのため、読者はDVだったら離婚できるんだ、と誤解してしまいます。
 私の考えではDV防止法に裏打ちされた、しかし、証拠のない「DV被害」では「婚姻を継続しがたい重大な事由であることは明白」ではないと思いますし、法務局でも同様の見解を示しました。
 ちなみにこのことは、内閣府の男女共同参画室配偶者暴力対策室でも認めています。
 
 次にお伺いしたいのは『すでに裁判沙汰になっているということ自体が、この事由に該当されるものとされ、大抵の場合、裁判所が離婚を認めない、ということはありません』という記述です。
 まず、「すでに裁判沙汰になっていると言うこと自体が、この事由に該当されるものとされ」とありますが、どうして裁判になることが婚姻を継続しがたい重大な事由となるのでしょうか。この言い方では離婚係争は裁判になればすべて離婚が成立する、と解釈できます。しかし、私が家庭裁判所、および法務局に足を運んで調べたところ、そのようなことはない、ときっぱりと否定しました。
 「こういう言い方は裁判そのものの否定につながりますね」法務局で対応してくれた女性はそう言いました。私もそう思います。
 ただ、現実に即してみると、離婚という問題を裁判まで持ち込んだ場合には、その途中で「和解」という方法で離婚が成立するケースがほとんどであるとのこと。その意味においては、離婚係争が裁判にまでもつれた場合、結果として離婚という結末を迎えることが多いとのことでした。

  以上、なんだか重箱の隅をつつくようで心苦しかったのですが、読者に対して誤解を招くような記述は『解説書』にはあってはならないことだと思いましたので、ご質問させていただいた次第です。
上記の件二点、お答えいただければ幸いです。
※朱鷺書房に宛てた質問の手紙を一部編集し直し掲載しています

 本当はきちんと手紙の内容を整理するのが私の「仕事」なのですが、あえてほぼ原文に近いかたちで読者の皆様に提供したのは、DV冤罪に悩み、苦しむ人たちにDV法の本質を知っていただきたかったからであります。お許しあれ。
表紙 経歴 106ページ
佐藤氏回答 朱鷺書房挨拶 封筒

なぜか思い出してしまったヒトラー著「わが闘争」
 
 第6章の執筆者は佐藤功行氏。巻末のプロフィールでは、1996年弁護士登録となっており、著書に「DV防止法提言2000」「DV防止法活用ハンドブック」(共に共著で朱鷺書房発行の本である)を持つ。どうやら筆を持つのが得意な弁護士さんらしい。
  で、この佐藤氏、まじめなお方であった。というのも、私の質問にきちんと返事をくれたからである。まあ、著者としては当然の事ではあるのだが。

 佐藤氏は私の言い分をほぼ全面的に肯定してくれました。つまり、最初の質問である、DVが「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たることは明白、という部分については「離婚裁判の審理を通じて、DVの事実が認定されること」を「前提」として記述したのだそうであります。
このことを逆に考えれば、審理を通じてDVの事実が認定されなければ「婚姻を継続し難い重大な事由」はなくなるということ。現在、DV冤罪に苦しんでいる人には、ぜひ覚えておいてもらいたい事柄です。なんたって、DV事案に精通しているであろう佐藤功行氏がこう言っているんだから。
 佐藤氏はまたDVの事実が認定されるためには「証拠に基づく証明が必要」であり、このことを「前提」としている、とも述べています。まあ、当たり前といえば当たり前ですが、私が聞き及んだDV裁判では、被害者から明確な「証拠」の提出は一切ないままに裁判が進んで、あげく「離婚」と「子どもとの没交渉」「多額の慰謝料請求」という過酷な運命を背負わされた人がいます。佐藤氏のようなリベラル弁護士は、DV被害者の配偶者にとっては心強い味方になってくれるかも。

 ところでこの本、そっこらじゅうにこの「前提」が抜け落ちている。前提というのは「物事が成り立つために必要な条件」なのだから、解説書とうたっているからには、本来しっかりと書いておくべきものです。
特にひどいのが長谷川京子氏の筆になる「はじめに」「第1章」「第2章 1〜6および8〜9」「第5章3〜4」「第9章1〜4」。
  ほとんどすべての文言に「前提」というか結論を導き出すための「根拠」が抜け落ちているんですね。
 たとえばほら、

 『実際、DV加害者の半数以上が、子どもに直接の身体的暴力を振るっています』(p19)

 と記述してあるのですが、その調査報告が記載されていないのですね。だから私なんかは、あんたねー、どーしてこーゆーことが言えるのよ、なんて絡みたくなる。

 長谷川京子氏は弁護士だからDV事案もそれなりに手がけているはず。だったらひと言『私が取り扱ったDV事案では』とか『弁護士会の調査報告によると』と前置きすればいいのに、それすらない。
 長谷川氏の文章についてまじめに批評をすれば、根拠を提示せず、従って自分の責任を負うことも避け、活字の魔力でもって、ある事柄あるいは単なる自己の主張を、あたかも既成事実のように表現している、ということになります。
 うーん、これって何かに似ている。なんだったっけなー、幼稚園中退、高校中退、大学除籍の私はその答えを思い出すのに三日かかりました、三日ですよ。
 こうした論調は、かの「わが闘争」(私の場合はわが逃走になるんだけど)とそっくりではないかー。いうまでもなく、「わが闘争」の筆者はヒトラーですね。

「わが闘争」では様々な問題が論じられていますが、現在でも重要視されているのが、ダーウィニズムの世界観を曲解し、ユダヤ人なんかこの世にいらんという結論を導き出してしまったこと。ヒトラーの場合は、一応、カモフラージュとしての前提を持ち出して、結論を導き出したわけですが、長谷川京子氏はいきなり結論。
 たかがDV離婚の解説書に「わが闘争」を連想してしまう私も私だが、どちらの著書にも共通していえることは「思いこみが激しい」ということです。

 これが小説なんかだったらいいんです。思いこみが激しくても。所詮、妄想なんですから。でも解説書では絶対ダメ。国家試験の中でももっともムズカシイと言われる司法試験の合格者が、どうしてこのことに気がつかないのだろうと思います。

 それに長谷川京子氏の取り巻きの人たちね。どうして注意してあげなかったんでしょう。なかんずく編集者の責任は重いといえるでしょう。
 (以下次号)






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