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言葉世界

Chris' words


エッセイ集 「離家出走《完全本》」より〔流星〕



2枚のアルバムの初回特別版の付録として発表した2冊の散文集をひとつにまとめて、8月に市販された。タイトルは「離家出走《完全本》」
基本的には既発の40編のエッセイを編集し収録。そこに林燕[女尼]の序文が追加され表紙も一新。最後に「離家」と「出走」が収められている。
この〔流星〕の中に出てくるのは「しし座流星群」のこと。実際、2001年11月にはかなり大量の流星が見られたらしい。2年後の今年11月は規模の小さいものが見られるらしいけど、果たしてクリスは誰かと一緒に見ることができたのだろうか?


〔流星〕

2001年11月、トロントから飛行機でバンクーバーに向かった。隣には35〜6歳の西洋人女性がいた。彼女はとても親しみやすい顔をしていた。人と話をしていない時でも口には微笑みをたたえてるようだった。トイレと食事と睡眠以外は片時も小説を手放さなかった。

7日後、帰りの飛行機でまた彼女に会った。
僕らはとても偶然を感じた。でも考えてみると全く意外なことってわけじゃないとも思った。というのも、もし二人とも同じ旅行会社でチケットを買い、ある決められた期間の格安航空券を使っていたとしたら、同じ飛行機に乗って往復するのも、全く偶然のことではない。

今回、彼女は通路の左側の席に座っていた。
僕らはお互いに見覚えがあると感じていたけど、どこで会ったのか思い出せないでいた。あと30分もしたら着陸態勢に入るというところで、彼女が持つ小説を見て、猛然と思い出した。
僕は彼女に声をかけた。しばらく驚きの声をあげ、しばらく笑った後、お互いに過去数日の旅の報告をした。

元々、彼女はトロントの北の地区から来たのだった。トロントに着いて、空港に行き、飛行機に乗って、バンクーバーまで来たあと、またバスに乗り、フェリーに乗り、ビクトリア島のNanaimoまでやってきて、1年あまり親交のあるメル友に会った。

縁あって千里の出会い。
彼女のリラックスした話を聞いていると、道乗りも距離も全く問題ではなかったようだ。
彼女はこの1週間とても楽しく過ごしたそうだ。
又、もう一人の女性、人家の少ない海辺の小さな村に住んでいる女性も遠方から来た友だちに会い、楽しくないわけがあるだろうか?

彼女が言うには、彼女はそのメル友の家に泊まっていたのは2日足らずで、Nanaimoのあちこちを回っていた。そこは広くはないけど、空気は新鮮で、風景も美しかった。慢性的に常に霧雨が降っていたにも関わらず、島での生活はとても気持ちいいものだったそうだ。

一番素晴らしかったのは彼女の友だちと屋上で流星群を見たことに他ならない。しかもたくさんの願い事もしたそうだ。

彼女は僕に教えてくれた。これは何年かに一度しか見られない天体現象で、見逃したら、何年も何年も待ってやっと次のチャンスがやってくると。

僕は言った。見逃してしまったと。
誰も教えてくれなかったと。
新聞やテレビで関連のニュースを見たけど、気にとめていなかった。
忙しすぎて、ちゃんと覚えていなかった。
僕のところでは見えなかった。
言い訳だらけだ。

実のところ、わざと見逃したようなもんだ。
だって、1人で見たくないからね。

また今度。