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エッセイ集 「離家出走《完全本》」より〔出走〕
8月に発表されたエッセイ「離家出走《完全本》」より。 タイトルの「離家出走」を冠した2編のエッセイ〔離家〕と〔出走〕は、エッセイ集の最後に収録。 〔出走〕ではクリスが家を出る(香港を離れる)時の心情が書かれています。おそらくは長くて短い人生を一度振り返りやり直してみたかったのかもしれません。やり直した結果は?! I shall live each day as if it were my lastという言葉は別のエッセイの中でも使っています。クリスの人生のポリシーなのかもしれない。 |
〔出走〕 |
ある一定の長い日々、毎日のスケジュールがびっしりだった。
あの日までずっと、目が醒めると、他人が僕のことをどんな風に見ようと、どんな扱いをしようと、どんな要求をしようともはや構わなくなっていた。世界は一夜のうちに、とってもとっても広くなった。実際、分かったんだ。人はちっぽけだってことを。でも同じ空間で生活することに長い間慣れてしまったから、外に出た時は、生活が忽然と空っぽになってしまい、まるで新たに白紙をもらったみたいだったけど、ペンをとる勇気もなく、描き間違うことを恐れ、うまく描けないことを恐れた。人生は1回の書のコンテストでも絵のコンテストでもないけどね。じゃあ、一体内容はどんなものであるべきか? 言葉を覚えたばかりの小さな子供が描いた絵を見たことがある?ただ直線だったり、ただ曲線だったり、空は丸くなくてもいいし、地面は四角くなくてもいいんだ。他人の目には混沌と映るものには、その刹那の想い、感情から見たもの、色、形は気持ちのまま現れ、何の制限を受けてなく、自由に発揮されている。 どのぐらい生きられるのか誰も知ることはできない。 残りの日々が、多くてもいいし、少なくてもいい、どのみち人生一度。 これから、自分に約束しよう。I shall live each day as if it were my last. (毎日を最後と思って生きよう)、そして大事にしよう。 そうすれば、新しい一章、次の一章、ただ僕自身として生き、死ぬ時に後悔はない。
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