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言葉世界

Chris' words


エッセイ集 「離家出走《完全本》」より〔沒事〕



8月に発表されたエッセイ「離家出走《完全本》」より。
エッセイ集のエッセイを読破したわけではないけど、エッセイのほとんどが彼の考え方、経験したこと、思い出などノンフィクション的なことばかりが書かれている中、この〔沒事〕だけはちょっと文体が違う。ここに出て来る「イ尓」は一体誰なのだろうか。これも彼の思い出のひとつなのだろうか。恋愛論?それとも失恋でもした?


〔沒事〕

何階もの階段を駆け上がり、君を訪ねてきた。
それは君と喧嘩するためじゃない。
喧嘩しても意味はない。勝ち負けは問題の中心ではない。
君と理論を戦わすためでもない。
誰も悪くない。誰も全て正しいわけでもない。

実のところ
ただ君が、僕らは大丈夫と言う一言が聞きたかった。
ただ君が、僕らがもう一度やり直すことを君も望んでいると言うのを聞きたかった。
でも
いつも、いつも、僕1人だけ
一方的に願い、同じことの繰り返し。
それに毎回、すぐに、僕は今日という日をずっと遠くに押しやる。
ところ構わずあちこち引っくり返し、
ますます君に嫌がられる。

おそらく君は思ったことがあるだろう。
もし僕が気にしないなら
僕はこんな風に獰猛になったりするのだろうかと
まるで狂ったみたいになるのかと
こんなしどろもどろになったりするのだろうかと
君が十言の中で、少なくとも僕に一言か半言でも答えて欲しいと望むだろうかと
僕が押さえようのない不平不満を持ち、黙りこくっているのに、
暑い時も寒い時もただ君が来るのを待つ、
もしくは話題を探し、おしゃべりを始めるんだろうかと。
そのあとずっと話し、ずっと話し、ずっと話し......?

僕は今、本当にわかっている。2人が一緒にいることが決して簡単ではないことを。
でも
もし、当初僕らができたのなら
どうして今もう一度トライできないのか?
君は言う
僕らは終わったと、
あれは間違いだったと思っていると。
僕はそうは思わない。
僕はかつて自問した。
例えば、も
し僕が何事もなかったと思い、何も言わず、
君の好きな方法で一緒にい続けたなら、
それでずっと永遠に幸せなのだろうか?
じゃあ、君のいう「間違い」の定義は何なんだろう?
一生
もし僕が自分を持つことができず、
正直になる権利さえないとしたら、どんな意味があるというのか?
僕は怖い。だから僕は壊れた。
僕は自分に言う。
もし僕が受け入れることができたら、問題なかっただろう。
もし僕が強制しようとしたら、どちらにとっても不公平だっただろう。
思いもしなかった。
結果、こういう風になるなんて。
それとも
僕に強さが足りなかっただけなのか?

君は僕に、僕が良くなかったんじゃないかと疑わないでくれと言う。
僕ら2人の事だからと言う。
君は僕らが少なくとも最高の友だちになれると思っている。
お互いの幸せのため、
君は僕に諦めて欲しいと願っている。
二度と自分をさいなむのはやめて欲しいと。
こんな風に。
もう少し君は優しくできないの?

将来がどうなるのか、僕は敢えて言わない。
今、
君がそばにいる時でも、
生きていかなければならない。
まずは僕は自分を納得させなくてはいけない。
それは君を失うこと。
僕は元気だ。
僕は大丈夫。