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言葉世界

Chris' words


エッセイ集 「談甚麼情」より〔婆子〕



90年に発売された散文集「談甚麼情」より。〔婆子〕はとても切ない話し。短いながらほろっときます。タイトルの「婆子」は単に「おばあさん」という意味だと思いますが、辞書には「ばばあ」と書いてありました。(笑)
私もずっと大事にできるものがあるといいな。


〔婆子〕

 少し前、こんな話があった。

 婆子はたくさんの壊れたお菓子の缶やビニール袋を集めていた。隣近所はこそこそ噂していた。婆子のベッドの下にあるお菓子の缶には、絶対に家に伝わる宝が入っているに違いない。引き出しの中のビニール袋には、絶対に中身はお金が入っているに違いないと。

 騙子はこの話しを聞いた後、婆子の家に走って行き、騙くらかしてやろうと思っていた。

 婆子はドアを開け見ると、見知らぬ人がいたので、騙子に来意を聞いた。騙子はニセのお金の束を取り出して、商人のフリをし、婆子のアンティークなお菓子の缶とビニール袋を買い取りに来たと言った。婆子は騙されたようで、騙子を家に招き入れ、しかもお菓子の缶とビニール袋を全部出してきて、騙子に見せた。そして、婆子は全てのお菓子の缶とビニール袋を開けると、何と、中身は空っぽだった。見えるのは婆子の嬉しそうな顔、当時だんなと一緒にお菓子を食べた時のぬくもり、子供や孫たちと市場に行き、ビニール袋を下げて家に帰ってきた時の情景。話したり、笑ったり、泣いたりしている。元々、婆子の値段のつけられない宝物は、留めておくことができない断片、ぬぐい去ることができない思い出だった。これらの宝物は思い出すことができるだけで、売り出すことはできなかった。

 婆子は話し続け、昔の思い出に浸っていると、知らず知らずのうちに、太陽は山に沈み、騙子も帰るタイミングを失っていた。

 僕はこの話しを知った。だって騙子はかつて僕の家の門を叩いたことがあるから。

 在不久以前、有一個這樣的小故事。

 婆子收藏了很多破舊的餠罐、塑膠袋。鄰里竊竊私語、説婆子床下底的餠乾罐、一定是收藏了甚麼家傳之寶的、抽*□内的塑膠袋、一定是全都包裏著銀紙的。

 騙子聽了之後、便[足包]到婆子家、存心行騙。

 婆子開門、見是陌生人、便問騙子來意。騙子拿出一袋假金幣、佯装商人、説要收買婆子的骨董餠乾罐、塑膠袋。婆子似乎上當、招呼騙子入屋、並且把所有餠乾罐、塑膠袋都搬出來、竟 然、裡面全是空空如也的。只見那婆子一臉祥和、細數當年和老伴吃餠的温馨、和孩子、孫子上市場、挽著塑膠袋回家的情景、一邊説、一邊笑、一邊流涙。原來、婆子的無價寶、是一幕幕留不住的片段、一糸糸揮不去的回憶。這些珍藏、只能回味、卻不能出賣。

 婆子説著説著、沈醉於昔日的感情之中、不經不覺、太陽已經下山了、騙子也不知在甚麼時候溜走了。

 我知道這個小故事、因為、騙子亦曾經摸上我的門口。

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