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コンサートレポート

concert report


[コンサートレポートその5]

黄凱芹神話音樂劇<白蛇青蛇> 2005.9.1



<白蛇青蛇>はクリスがポケットマネー100万ドル(約1400万円)を投じて製作したオリジナルミュージカル。ベースは中国に昔から言い伝えられている神話<白蛇傳>。香港では幾度となく映画化、舞台化され、知らない人はいないほどで、日本でもアニメ化や映画化されているので知ってる人も多いと思います。
クリスは脚本、主演のみならず、音楽は全て書き下ろし、舞台コンセプト、背景画、衣装デザインまでこなした。

私は1公演しか見てないし、広東語の聞き取り能力に限度があるので、どこまで正しく伝えられるかわかりませんが、私の記憶力、手元にある資料、サントラCD、過去に映画化された作品、香港の友人の助けを駆使して何とかレポートします!多々勘違い、聞き間違いなどがある可能性がありますのでご了承下さい。コンサートでの写真撮影には寛容な香港も舞台劇では一切禁止でした。ということで写真は公式サイト、新聞、友人より借用しました。謝謝!
ちなみにあらすじの途中に私のつぶやきや解説、補足が斜体で時々入ります。
2005年9月1日ー9月4日 香港演芸藝學院歌劇院(APA Lyric Theatre)
プロデュース:黄凱芹
脚本/作詞/作曲/舞台コンセプト/背景画/衣装デザイン:黄凱芹
監督:關頌陽(ケン・クワン)
振付け:楊春江(ダニエル・ヨン)
キャスト
許仙:黄凱芹
白蛇(白素貞):田蕊女尼(クリスタル・ティン)
青蛇(小青):林女那(ラナ・ラム)
年獣/法海大師:李小明
船夫/姐夫:周家輝
その他キャスト:香港演藝學院舞踏科を中心とした卒業生や在学生。

[第一幕] 遊湖
<第一場> 峨眉山岩石與古樹深挙處
いきなりロック風なリズムで始まり、どうなることかと思いましたが、幕が上がり舞台の始まり。スクリーンの向こうに影だけ見える年獣が何やらすごい声で唸っている。どうやら誰かに龍珠を盗まれてしまったようです。その後、男女ダンサーが出てきてダンス。音楽はC-Plusによる
♪淡妝濃抹

<第二場> 杭州西湖
場面は変わって許仙と白蛇たちが出会う清明節の杭州の西湖。人間界に憧れた白蛇と青蛇の姉妹は何百年もの修練の後、人間の姿に変えて下界に下りてきた。白蛇は青蛇に前世での自分と許仙との出会いを話して聞かせ、二人は道行く人をじろじろ見ては許仙を探している。そこに若くてハンサムな書生許仙が通りかかる。
この時船と橋がぶつかってしまった!これは初日のみに起こったハプニングだそうです。
音楽はおそらく♪日月精華。許仙は船を下り橋のふもとで市場をひやかし、いろいろ勧められたあとりんごを買っていた。クリスはここでは台詞はなく、りんご、バナナ、パイナップル、花などを勧められ、適当に買い物をしていたよう。あのあたりの芝居はおそらくアドリブというか適当なんじゃないかな。
何とか許仙と知り合いたい白蛇たちは妖術を使って雨を降らす。慌てて乗ってきた船を止め乗り込む許仙。それを見て白蛇たちも相乗りをさせてくれとお願いをする。白蛇の美しさに魅了された許仙も船頭に「僕が払うから一緒に乗せてやってくれ!」と言い白蛇たちを乗せる。二人が出会った時の音楽は
♪縁ここでやっとクリスの台詞。見ている私の方がドキドキした。
白蛇に傘を差出し、エスコートする許仙(写真参照)。同じように許仙に心を奪われた青蛇は面白くない。船の中で自己紹介。「小姐、貴姓芳名?(お嬢さん、お名前は?)」「姓は白で名は素貞と申します。公子(若さま?若君?)は?」「私は姓は許で名は仙と申します。」。時代劇風な言い回しがなかなか面白かった。青蛇はお嬢様の白素貞のお付きの小青ということだった。
白素貞たちの家に着いて、帰り道に雨に降られてはいけないと彼女たちに傘を貸す許仙。名残惜しそうに二人ともなかなか傘から手を離さない。小青に「小姐!一緒に行きますよ」と促され、「公子、明日私どもの家に是非いらして下さい。傘をお返しします。場所は....」と所在地の説明。岸から離れていく船の中で白素貞たちの家の住所を忘れないように繰り返し呪文のようにつぶやく許仙。ここで許仙と白蛇によるデュエット♪湮雨。少しずつ離れて行きながらお互いを見つめながら歌う二人。
♪女他提著雨傘湮雨淡淡〜という歌い出しのバラードはとてもステキだった。

<第三場> 錢塘門、白府
♪織夢が流れる中、白蛇たちの使用人(仲間?)であるダンサーたちが踊りながらセットチェンジ。翌日白素貞たちの家を訪ねる許仙。白素貞は白蛇の精なので衣装はいつも白、薄い黄色、薄いピンクを基調とし、青蛇は緑か青系。第三場で素貞は薄いピンクの着物(一、二場と同じ?)に白のジョーゼットのようなガウンを羽織ってました(部屋着風?)。ガウンの背中に描かれた絵柄が浮世絵風で描かれていた女性も和服姿。青蛇のガウンの絵柄は中華風でした。全体的に白蛇は日本風で青蛇は中国風という感じでしょうか。三場ではクリスも衣装替え。男性なので根本的なデザインというか服の様式は変わっていないけど、柄や色などを変えてました。
白家で再会した白素貞と許仙は照れまくりながら会話。二人で杜甫の詩を詠みながらお互いにどんどん惹かれていく。それをふすまの影イメージ的なものです。ふすまは出てきません。でも屏風みたいのがあった。から見ていた小青は何とか邪魔をしようと、白素貞が奥にお茶を取りに行った隙に彼女になりすまし、許仙を誘惑。この時のクリスタルの演じ分けは素晴らしい!何も知らない許仙は何か様子がおかしいなあと思いつつ、誘惑に乗せられる。白素貞が戻ったあとお茶を飲みながら、話しの続き。このやり取りはとても面白かったらしく会場は沸いていた。特に小青が白素貞になりすまし誘惑した時の会話と本物の白素貞との会話がうまくかみ合ってしまうところは、もっと広東語がわかったら良かったのに〜と思った。話しの展開や流れは演技者の表情と観客の反応で充分理解できましたが。
あれよあれよという間に結婚が決まった許仙と白素貞。「こんなに早く結婚になっちゃっていいのかなあ」と戸惑いながら嬉しそうな許仙。傘を返そうとする白素貞に「もう結婚するんだから返したも同じこと」と言い、会場は爆笑。白蛇たちの使用人たちが出てきて爆竹がなり、♪一世一生が聞こえてきた。許仙と白素貞のデュエット。上から長い大きな赤い布が4枚下りてきて、先には赤い布の球がついている。これは結婚を表現したもので、許仙たちも左右から赤い布をたすきがけにして(胸の前でクロスしてる)、うきうきした感じで歌い続ける。幸せな二人や使用人が去ったあと、傷心の小青が♪仍是這樣認真を一人で歌う。とても感情がこもったいい歌だった。
その後年獣が恐ろしい姿を現し、「匂うぞ。匂うぞ。龍珠の匂いだ!」

<第四場> 保和堂
許仙と白素貞は結婚後「保和堂」という薬屋を開く。あまり商売は芳しくないよう。客は来てもただ妻にお礼に来るばかり。保和堂は貧しい人を助け、貧しい人からは治療費や薬代をもらわない。いまいち生活が面白くない許仙は外が賑やかなのを知り、姉の夫(許仙の姉は登場しない)に店番を任せ、市場に遊びに行った。許仙と姉の夫との会話は結構長く面白かったみたいだけど、ほとんど聞き取れなかった。♪織夢が何度となく使われてますが、外の賑やかな雰囲気を表現する時は<熱鬧版>かな。
あれ?第四場が短かすぎ!でもこれだけしか思い出せない。

<第五場> 呂洞賓廟
許仙がある廟にお参りに行くと茅山道士に化けた小青に惑わされる(写真参照)。妻と別れるように、護符を渡してこれで妻の本当の姿を見るようにと言う。ここで
♪開心的時候離開が流れ、小青と許仙がそれぞれの思いで歌う。何やらインド風の音楽が流れ、許仙は小青と小青(道士)の弟子たちに惑わされ続ける。この曲は♪情挑かな。私は結構この曲が好きです。疑問を持ちながらも話しを信じきれない(信じたくない?)許仙はもらった護符を投げ捨て家に帰ろうとする。道士は「端午の節句の時に雄黄酒を妻に飲ませれば本性を現し、白蛇になるだろう」と忠告。

[第二幕]驚變
<第一場>許仙、白素貞閏房
廟で道士の話しを聞いたあとは何となくよそよそしい許仙。そんな寂しい日々を送る白素貞は
♪若説這是愛を一人ひっそり歌い、許仙がプロポーズしてくれた時のことを思い出している。許仙が白素貞の思い出しのシーンとして出てきて何やら台詞を言っている。(思い出の言葉かな?)まるで白蛇の精のようなダンサーが出て来て、白素貞にまとわりつきながら踊っているシーンはとても妖艶だった。この時の白素貞は衣装替えしただけでなく髪型も変わっていた。独身から既婚に変わったからだろうか?小青も第二幕から髪型が変わった。
部屋に入ってきた許仙は「さあ、ドラゴンボートレースを見に行こう!」と妻を誘うが、彼女は気分が悪いから行かないという。「私に構わずあなた一人で行ってらして。でも点心を買ってくるのを忘れないでね!(笑)」。心配した許仙が白素貞を座らせ脈を計って見ると何でもなかった。「何だ!なんでもないじゃないか!僕を騙そうったってダメだよ。さあ、行こう」とまだ執拗に誘う。頑なに断る白素貞はもう一度許仙に脈を見せ、「私できたのよ」と言う。
脈を見せる直前に何やら白素貞は妖術を使ったように見えたのだけど。気のせいかな?このシーン、4日の昼公演でアドリブが出て、「子供の名前は文強にしよう」と言い出したクリス。「許文強」は有名はドラマ「上海灘」に出てくる主人公の名前。ドラマでは周潤發、映画では張國榮が演じた。会場は大ウケだったそうです。
妻の妊娠に喜ぶ許仙はドラゴンボートを見に行くのをやめ、雄黄酒でお祝いしようと言い出す。妊娠してるからと飲みたがらない白素貞。そんな時に許仙はふと廟で聞いた言葉がよぎった。
今日は端午節。
(BGMは廟で許仙を惑わせた時と同じ音楽がかかる)許仙は妻のことを疑い始める。夫に疑われるのを恐れた白素貞は雄黄酒を飲んでしまう。「娘子、君は今飲んだけど何でもない?」「ええ、何でもないわよ。」「そりゃあ良かった。じゃあもう1杯」自分は飲まずに妻に2杯めを勧める許仙。また白素貞は飲んでしまう。このあと白素貞は激痛が走り、ベッドで休むことに。「あ〜なんでこんなことに!僕が悪いんだ」帳を閉め、妻がしばらく休んでいる間に許仙は酔い醒ましを取りに行った。戻ってきて心配して様子を見ようと帳を開けた許仙が見たものは一匹の白蛇だった!♪驚變という音楽があるので、おそらくこの辺りの場面で使われていたと思います。サントラに収録されていないので確認しようもない。
あまりの出来事に驚死してしまった許仙。様子を見ていた小青が出てきて、許仙の名前を何度か呼ぶ。「許仙、許仙!ああ、愛する人の名前を呼んでみたかった!」横たわる許仙を抱きかかえ、起こしてみるが反応のない許仙。二人の仲を邪魔しようとしただけなのに、まさか愛する人を死なせる結果になるとは思わなかった小青は大いに後悔する。
小青が許仙を抱いたまま泣いていると白素貞が人間の姿に戻ってベッドから出てきた。自分の本来の姿を見て許仙が驚死してしまった事を知り号泣。でも深い愛と強い意志を持つ白素貞は「泣いてなんかいられない。泣いてる場合じゃないわ」と涙を拭い「何とか助けなきゃ!」と思い直す。自分がやったことに後悔し反省した小青は隠し持っていた東海龍王の龍珠を取り出し、白素貞に渡し、許仙に飲ませた。白素貞は許仙を生き返らせるための仙草を取りに行くので、小青にその間許仙のことをお願いして出て行った。
白素貞が去ったあと、
♪仍是這樣認真の音楽が流れ、一節を歌い、小青はまた許仙を抱き、嘆き悲しみ、そしてくちづけをする。本当にキスしてました!事前のインタビューでクリスは自分は死人だからキスされても一切反応しちゃいけないと言ってました。確かに全く動かなかったクリス。それにしても林女那は迫真の演技!

<第二場>崑崙山
許仙を生き返らせるための仙草を取るには番人の妖怪たちと戦わなくてはいけない。深く許仙を愛してる白素貞は何も恐れることなく妖怪たちに立ち向かい、何とか仙草を手に入れる。
この時クリスタルは大きな羽根のようなもの(ジュディ・オングの<魅せられて>状態、写真参照)を振り回して戦ってました。かなり重そうに見えたので大変だったと思います。白蛇かっこいいぞ!
台詞はなく、白素貞と妖怪たちの戦いの場面のみ。BMGはもちろん♪盗草。これがなかなかハードでかっこいい曲だった。戦いの場にふさわしい音楽でした。今までのクリスの雰囲気とはちょっと違いますが。で、せっかく苦労して手に入れた仙草ですが、それを許仙に食べさせるシーンは特にありませんでした。

<第三場>鎮江空間、保和堂、許仙、白素貞閏房
舞台が暗くなり、セットチェンジのあと何やら客席が明るくなって様子がおかしいと思ったら、後ろから法海大師が
♪放輕鬆を歌いながら出てきた。なかなかユニークで楽しいこの曲は残念ながらサントラには収録されてません。法海大師は客席の一番前まで歌いながらやってきて、ここで観客とちょっとしたやり取り。「俺が誰だか知ってるか?」「法海大師!」「いや、さっきみんなとは一度会ってるんだぞ。そう!年獣さ。法海大師に化けたんだよ」。観客とのやり取りは面白かったです。毎日アドリブじゃないかな。最前列に座っていた私は一度思いっきり目が合ってしまってどっきりしました。話しかけられたらどうしようって。実際話しかけられてる人が数人いましたから。
法海大師が去ったあと許仙がステージ脇から出てきて、歌いながら客席に下りてきた。
(私は最前列だったのでと〜っても嬉しかったけど、ドキドキ)。歌いながら客席の一番前を横切り、右側の階段からステージへ。すると白素貞も歌いながらステージに出てきた。曲は♪回心轉意。二人はステージを歩き回りながらデュエット。
生き返ったあとの許仙と白素貞はお互いに何事もなかったフリをし、今までの静かな暮らしを選んでいた。でもどこか気まずい感じの二人。許仙はステージ左の保和堂の店頭で独白し、白素貞はステージ右の寝室で休みながら独白。同じ家にいながら別々の二人。
♪回心轉意の曲調はおだやかだけど、二人の気持ちは?タイトル通り気持ちは戻ったのだろうか?
白素貞が部屋を出たあと、法海大師がやってきて許仙にいろいろと吹き込む。
(あまり台詞が聞き取れなかった!)最後に許仙に7月15日に金山寺に来るように告げる。確かこの時クリスは保和堂のセットに乗ったまま袖に引っ込んだんだけど、セットが動いた時にスムーズに動かなかったため、クリスは「おっと!」って感じに体が揺れてしまったので会場から失笑が.....。
♪小妖精が流れ、妖精たちと歌い踊る法海大師。♪小妖精もサントラには収録されてませんが、軽快でコミカルな楽しい曲です。

<第四場>鎮江、金山寺
白素貞と小青が川のほとりで許仙が戻るのを待ってるけど、戻って来ない。その時許仙は金山寺に向かっていた。許仙は
♪許願を歌い踊りながら(あの思い出の傘を持ち踊っていた)、自分がいけなかったのではないかと反省していた。法海大師が出てきて、妻が白蛇であることを聞かされた許仙はまた恐くなり、金山寺に留まることにした。でも昏迷してる間に自分を食べるのではく、逆に救ってくれた白蛇のことを思い、やっぱり帰ろうとした時にはすでに遅く、法海大師の手下たちに捕らわれてしまった。そこへ白素貞と小青が助けに来た。「僕は知らない。彼らは友だちなんかじゃないんだ。助けてくれ!」と許仙。
白素貞は法海大師に許仙を返してもらうようにお願いする。許仙の前で自分は白蛇であると告白する白素貞。この時手下から何とか逃げた許仙は前に進みでて、許仙、白素貞、小青の3人が台詞を言いつつ、
♪醉生夢死を合唱。バックには出会った時のシーンが回想シーンのように別の俳優によって再現されていた。
その後また捕らわれてしまった許仙。法海大師、白素貞、小青が戦う時がやってきた。東海龍王を味方につけ、水攻めにする白素貞たち。青い大きな布が出てきて、波と水を表現しながら、ダンサーたちが布を上げたり、下げたり。その下をくぐったり、上に乗り押さえつけようとする法海大師。
なかなか迫力とスピード感のある演出だった。音楽はアップテンポの♪算了0巴。歌の途中で許仙は妖怪たちに連れて行かれてしまう。「助けて!助けてくれ〜」と情けない許仙。白蛇の精である妻の存在が恐くて逃げたんだろうが!とツッコミたくなります。
何とか法海大師を取り押さえたところに東海龍王と南海龍王が登場。左に捕らわれた法海大師が控え、右に許、白、青の3人が控えている。龍珠の元の持ち主である龍王たちは盗んだ法海大師に扮した年獣を罰し、白素貞たちはおとがめなし。愛と人命救助のために行った行為だったからだと思います。出会った時の
♪縁が流れる。
年獣も捉えられ、小青は姉を裏切った許仙を責めるけど、心優しい白素貞は許す。♪一世一生が流れ、白素貞は許仙に手を引かれ幸せそう。小青も二人の幸せを願っている。ところがふと許仙が妻の手を放し、音楽も止まった。ステージが暗くなり劇終。結末は観客に委ねる形で終了。
もう一度オープニングの
♪淡妝濃抹が流れ、カーテンコール。当然クリス登場の時に盛大な声援と拍手。このカーテンコールの際、初日はお礼を言うのをすっかり忘れ、おじぎだけで引っ込んでしまったクリスたち。最前列で見ていた私はクリスの口が「多謝!」になっていたのを見逃しませんでした。2日目からは関係各位にお礼し、キャスト、スタッフを全員紹介したそうです。

<解説&補足>
私も原作を読んではいないので、どこがどう違うか正確にはわかりませんが、クリスは脚本を書くに当たって若干設定を変えています。まずは法海大師は原作ではちゃんとした和尚さんであり、妖怪でも獣でもありません。ではなぜ法海大師は二人の邪魔立てをするのかというと、和尚であるが故に白蛇や青蛇という妖怪の存在が許せない。また許仙という若者を妖怪から助けたいと思っているからです。決して悪い人ではありません。
途中小青が茅山道士に化けて許仙を惑わせますが、原作では茅山道士が出てきて「あなたの頭から妖気が出ている。」と小青と同じようなことを言い、護符を渡します。小青が化けたものではありません。ある映画では許仙は護符を持ち帰り、本当に妻が白蛇になるのか試そうとしますが、白素貞は何とかそれを乗り切り、ばれずに済んで夫の信頼を取り戻します。
小青があまりに貧乏な許仙にお金を渡すエピソードがあります。ある話しでは保和堂の商売がうまく行かずに渡すケース、ある話しでは結婚の支度金を渡すケース。どちらも小青が悪徳役人から盗んだものなので、おとがめなし。
また白素貞は許仙の子供を身ごもりますが、生まれたのは息子でのちに結婚もします。彼は孝行息子で頭もよく科挙の試験に合格します。
日本でアニメ化や映画化されたものでは許仙は「あなたが例え蛇の精でもあなたを愛します!」と宣言しハッピーエンドになります。
クリスは事前のインタビューで「悲劇的な部分を減らし、ハッピーエンドにする」と言っていたようですが、結末は観客に委ねる形を取ったようです。あんなに深く愛してくれる白素貞を許仙もしっかり受け止めてあげて欲しいです。許仙は学もなく、優柔不断で、貧乏で、猜疑心も強い男性なので、なんであんなのが好きなのかと思いましたが、白素貞にとっては許仙は大恩人なのです。許仙の前世で助けてもらった恩があるから、無償の愛を捧げているのです。

<感想>
見たあとすぐよりも時間が経つにつれ、じわじわと感動してる私。香港の友だちにも「理解できた?どうだった?退屈しなかった?」と心配してもらったけど、私は大丈夫です。充分に楽しみました。
舞台が初めてのクリスタル、主演だけでなく他の仕事もこなしながらやっていたクリス。二人は本来の意味でいえば主役でありながら舞台劇は素人。でも二人は本当に頑張っていた。クリスは何度か舞台の経験はありますが、全くの初めてだったクリスタルは新境地を開いたのではないでしょうか。舞台俳優である林女那と李小明はとても素晴らしかったと思います。私は初日の1公演しか見られませんでしたが、数公演見た友人に聞いたところ、やはり初日は出演者全員が緊張して、一番真剣に演じ(全くの脚本通り)、演技も若干硬かったらしいです。その緊張感というのは私にも伝わり、私自身も見ながら緊張してました。何の問題もなくスムーズに行きますようにと祈りながら見てました。あまり緊張はしてなかったと言うクリスも最後に関係各位にお礼を言うところで何も言わずに幕が下りてしまいました。終演後、「すっかり言うのを忘れた!」と言ってました。その後の4公演ではきちんとやったそうです。
衣装はとてもきれいだった。特に白蛇の衣装はクリス本人が言ってるように日本風(和服風)のものが多く、髪型も日本人っぽい感じでした。クリスは和服が好きなのだろうか?ダンサーにも和服風のものを着させてる場面がありました。タイ風の衣装も出てきたし、西洋風のものもあり、バラエティに富んでました。衣装デザインの分野でもこれから仕事をやっていけるのではないでしょうか。何でもできるクリスって天才!
公演初日前日ぎりぎりに発売されたサントラCD。ミュージカルの余韻に浸るだけにはもったいないほどの出来。ミュージカルを見なかった人が聞いても、充分にその場面場面が浮かんできそうです。