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香港資本の中国・広東省恵州市の
ニッカド電池工場で労働者のカドミウム中毒
適切な治療と補償を求めて労働者がストライキ


▲カドミウム中毒症状で入院した労働者たち
【解説】香港のメーカーで中国を中心に電池などを生産販売しているGold Peak Industries (Holdings)Limitedの中国広東省恵州にある二つの工場で労働者がカドミウム中毒になるという事件が発生した。経過は香港のNGO「全球化監察」(グローバルモニター)からの経過報告を参照していただきたい。

今回の事件の特徴は、正当な補償と治療を求めて闘っている中国労働者がメディアを通じて香港世論に訴えたこと、香港のNGOグループが迅速に連絡を取ったことで、その後のメディアの冷淡な対応を超えることが可能になったことだ。7月23日には香港の社会運動団体や宗教団体などの代表約40人が、GPグループの本社に抗議行動を行っている。またGPグループは中国、香港だけでなく、台湾でも生産販売をしていることから台湾のNGOグループもこの問題に関心を持ち始めている。

最新の情報(8月4日)では、恵州市の副市長とGP現地工場の最高責任者が記者会見を行い、「軽度の慢性中毒と診断された2名の労働者に対しては責任を持って対処」し、177名の中毒の疑いのある労働者に対しては今後も継続して検査や治療を行うことを約束した。恵州市はこれまでも多数の電子産業を誘致してきたことから、資本との良好な関係を重視する一方で、雇用に悪影響を与える深刻な事態をも回避したいという思惑から今回の措置に踏み切ったといえるだろう。

さまざまな妨害や弾圧にも屈せずに要求を貫き通した労働者たちの闘いと中国のグローバリゼーションに関心を持つ香港の社会運動の連携がもたらした一定の勝利である。しかし油断はできない。劣悪な安全衛生のもとで働く多数の労働者がいる。

なお、三洋が最近GPグループと共同で中国で二酸化マンガンリチウム一次電池の合弁企業を設立することを発表している。

【資料】
GP Batteries International Limitedと中国に二酸化マンガンリチウム一次電池の合弁会社を設立

(China Now!編集委員会)




事件の経過


全球化監察


2003年11月、中国の恵州にあるGP電池工場の加工部門(直接カドミウム粉末と接触する作業区域)の労働者が、一定期間にわたり体調の不調がみられた。広東省職業病予防治療医院を紹介され血液検査をうけたところ、血液中のカドミウム含有量が基準をオーバーしていることが明らかになり、また人体に対するカドミウムの被害を知ることになった。同じ加工部門の同僚たちもこの事実を知ることになり、すべての労働者に検査を受けさせるよう使用者側に求めた。その結果、30数名の労働者のうち20数名が血液中のカドミウムの含有量が基準を超えていたことが分かった。2003年11月から2004年3月までに、二回に分けて10数名ずつが同医院で治療を受けた。しかしこれら治療を受けた労働者は基本的に1−2週間入院したに過ぎず、職業病の診察結果も出ていない状況で退院を迫られた。一部の労働者は十数日間の入院で毒素を中和する注射すら受けなかった。病院の説明によると、国家基準では血液中のカドミウム含有量の基準超過では「カドミウム中毒による職業病」の根拠にはならず、尿中のカドミウム含有量が重要であり、入院していた労働者達は血液中の含有量は基準を超えていたが、尿中のカドミウム含有量は正常であることから、職業病患者として治療することはできない、とのことであった。

労働者達が現地の保健所と政府の労働部門を訪ねて問題を訴えた結果、保健所は工場への立ち入り検査を行い、工場は作業スペースの整理と改善を行った。この工場の3階の組立部門の500名の労働者はカドミウムなどの物質に直接接触することから、非常に不安がっていた。一部の労働者は自主的に広東省職業病予防治療医院で検査を行った結果、血液中のカドミウム含有量が基準を超えていた。かれらは検査結果を工場に持ち帰り、工場側に「誠意ある回答を求める」と迫ったが、工場側はさまざまな理由をつけて回答を固辞し、検査結果を疑いさえした。

5月25日、工場側は同医院に労働者の検査を委託したが、540名中121人しか血液中のカドミウム含有量が基準を超過していなかった。しかしこの540名の労働者の大部分が最近雇用された者であった。また以前自分で検査を受けて基準値を超えているという検査結果が出ていた労働者が今回は基準値を下回っていた。労働者達は今回の検査結果に疑問を持ち、多くの労働者が再度自費で検査を受けた結果(6月11日と16日)、やはり工場の委託で行った検査結果とは異なった。こういった事態が2−3回繰り返された。しかし工場側は自ら委託して行った広東省職業病予防治療医院と恵州市職業病医院の検査結果しか認めようとはしなかった。労働者が自費で行った検査結果は一切認めず、たとえ同じ二つの医院での検査結果でさえ認めようとはしなかった。労働者の多くが工場が検査結果に何らかの画策をしたのではないかと疑っている。

労働者達は香港の本社にFAXで状況を伝えたが、香港本社はFAXを恵州の工場に回しただけで、また恵州の工場もなんらそれに対して対応しなかった。工場は労働者に対して「諸君がわれわれを信用するのであれば話し合いもできるが、もし信用できないのであれば話すことは何もない」と語っている。しかし労働者達は「何度も検査をして、自費の検査結果と工場が委託して行った検査結果があまりにも違いすぎるのに、会社を信じることなどできますか?」と語っている。

労働者は会社に対して、尿と血液を一緒に検査するよう求めた。会社は血液検査で基準値以上の結果が出た121人については尿検査を行うが、労働者が自費で行った検査結果は認めないとしている。そして会社は次のように労働者に語っている。「カドミウムに接触をして癌を患うこともあれば、接触しなくても癌を患うこともある。われわれは今後何年も何十年も諸君たちが癌を患わないよう保証することはできない」。

この工場では去年からニカド電池の生産を減少しており、今年はすべての生産ラインを旧工場(恵州の恵州先進電池有限公司)に移転する予定であった。しかし旧工場の労働者達も今回の事件とカドミウムの被害を聞き及んでおり、勤務を拒否した。労働者がつぎつぎに辞めていき、在籍している労働者のうち、男性労働者は6月30日に、女性労働者は12月30日に労働契約がきれる(おそらく会社側は再契約を結ばないだろうと労働者は考えている)。会社側もプレッシャーを感じており、毎日のように労働者を採用しているが、この事件を聞いた労働者達は恐れてすぐに辞めていく。かつては採用試験があったがいまでは試験無しで就職できるようになった。

労働者たちの要求は単純だ。すなわち会社が真摯に誠実に検査を行い、ニッケルやカドミウムなどの化学物質が人体にどのような影響を及ぼすのかを包み隠さず明らかにし、すでに中毒あるいはその疑いのある労働者に対して妥当な治療をおこなえ、というものだ。

非常に多くの労働者、特に未婚や子どもを産んだことのない女性労働者が不安に感じている。ある22歳の女性労働者は、とても恐い、もし故郷の人々がこの事を知ったら自分の未来はどうなってしまうのか、と泣きながら話した。別の工場に恋人のいる労働者たちは、結婚に不安を抱く恋人たちから別れ話が持ち掛けられているという。

とはいえ、労働者達はいまだこの工場にとどまっている。なぜなら「賃金も高いし、福利厚生もいい(保険に加入している)」からで、この工場を辞めても待遇の良い仕事が見付かるとは限らないからだ。もちろんこの問題が解決するまでは辞めることはできない。一旦辞めてしまったら、もし今後何らかの問題が発生しても責任を問えなくなるかもしれないからだ。ある女性労働者は当初恐くて辞めたが、経済的プレッシャーが大きいことからまた工場に戻ってきた。もちろん全員がみなそうではないが、労災診断証明書を入手したらすぐに辞める、とある労働者は話している。

6月末、広東省職業病予防治療医院に入院していた労働者達は、会社が長期間にわたって問題の誠実な解決を拒絶したことから、広州(広東省の省庁所在地)のメディアに連絡して、事件を報道してもらい、解決を図ろうとしたが、メディアは一切それを無視した。資本の弾圧、政府の無関心、メディアの無視という状況のなかで、労働者達は自分たちが育った中国において頼れるものがなかった。このようなどうしようもない状況の中で、7月2日に香港のメディアに連絡をとり、翌日の東方日報の一面トップや他のメディアで報道された。プレッシャーを受けた香港のGP本社は7月5日に各紙に広告を掲載し、労働者の指摘に反論した。また恵州のGP工場の管理者たちも硬軟織り交ぜた手法をとった。法的な賃金補償と入院措置をとる一方で、香港メディアの取材を受けた4名の女性労働者に対して、再度取材を受けたら警察に通報して連行してもらう、と恫喝をかけた。4名の労働者は恐ろしくなってそのまま故郷へ逃げ帰ってしまった。しかし他の労働者達は動揺することなく、7月8日に資本側の主張に反論する公開書簡を発表した。しかし今回は香港のメディアがほとんど取り上げなかった。さらに恐ろしいことに、7月10日の広州日報に広東省職業病予防治療医院/広東中毒救急センターの陳嘉斌主任のインタビューが掲載され、「労働者達がカドミウム含有量の基準をオーバーしたのは、作業現場でマスクをちゃんと着用していなかったからです。・・・また出来高制賃金だったので、早く作業ができるように防護用の手袋を着用しなかった。だから手に付着したカドミウム粉末が、食事の前に手を洗うという習慣をつけていなければ、容易に体内に進入してしまうのです」と語った。これは使用者側の主張と同じである。

労働者達はこの記事を読んで憤った。そしてわれわれが労働者から聞いたところによると、会社側は警察を使って労働者を強制的に病院から退院させ、工場に連れ戻していたことが分かった。その一方で入院中の労働者には花や果物の差し入れをしている。しかしこのような手法は次のような事実を覆い隠すことはできない。現在も入院中の労働者は職業病であるという診断書を受け取っていないし、適切な治療を受けてもいない。さらに多くの労働者達は検査すら受けていない。7月12日には1000名の労働者が働く恵州の旧工場で、労働者がストライキを行い道路を封鎖した。

2004年7月15日



■GP電池恵州工場のカドミウム中毒事件に関する公開書簡

香港の十大ブランドの一つ、GP電池は、恵州の二つの工場の多数の労働者がカドミウム中毒を患っていると7月初めに報道されてから今まで、誠実に問題を解決しようとしてこなかった。われわれはこの工場が長期にわたって中国の「安全生産法」「職業病予防治療法」「労働法」などの法律に違反してきたことで今回ような多数の労働者の中毒を引き起こしたことを知った。工場側は安全衛生をおろそかにする一方、労働者に違法な残業を要求してきた。この二つの重なったことにより深刻な中毒が引き起こされた。長時間の残業によってカドミウムなどの有害な物質に接触する時間が増えたからだ。

この事件がメディアで報道されたのち、恵州のGP電池有限公司の董事長(最高経営者)の許永新は労働者に対して、従業員の治療と作業環境の改善を約束する書簡を書いた。これは、これまでの作業環境が劣悪であったことを認めたに等しい。しかし管理者はこの約束を誠実に履行しないだけでなく、不正常で時には人権を侵害する事態を引き起こしている。

1.工場側は重要な資料を広東省職業病予防治療医院に提出しなかったことから、数ヶ月間も中毒になった労働者に職業病(労災)診断証明書が発行できなかった。そうすることによって工場側は中毒ではなく含有量の基準オーバーである、と居直り続けることが可能になった。

2.工場側は労働者に対してメディアの取材を受ければ警察に通報して連行してもらうと恫喝した。数名の労働者は恐ろしくなって故郷に逃げ帰った。

3.工場側は長期にわたって恵州の二つの工場のすべての労働者の健康診断を引き延ばしたことで、労働者の抗議ストライキを引き起こした。

4.警察を使って入院中の労働者を無理矢理退院させて工場で働かせた。診断証明書をもらうまでは退院しないと主張していた女性労働者は7月9日に遺書を残して失踪したまま現在にいたるまで発見されていない。

われわれはGPグループに連絡をとり、状況の把握を求めたが、【誠実な回答は得られなかった。】香港でも有名な大企業であるGPグループが、このように労働安全衛生をないがしろにし、法律に違反し、人権に反する行為を行っていることに対し、われわれは深い憤りを禁じ得ない。われわれは以下の要求を求める。

1.すべての労働者を病院で検査させること。すべての中毒労働者に対して健康が回復するまでの一切の治療費用を負担すること。影響の考えられる労働者が出産した子どもに対する検査および治療の費用を負担すること。

2.労働者が診断証明書の発行や治療を求めることを妨害しないこと。カドミウム中毒の残った労働者に対して適切な賠償を行うこと。

3.真相を明らかにした労働者に対する報復措置を行わないこと。

4.「安全生産法」「職業病予防治療法」の違反を止め、早急に作業環境の改善を行うこと。労働者が民主的選挙で工場の安全健康委員会を選出し、作業環境が法律に合致しているかどうかを監督する権利があることを認めること。

5.労働法違反をやめること。超過勤務は労働法の枠内で行うこと。労働時間の削減にあたっては、当初の労働者の賃金水準を維持すること。

6.すでに離職したすべての労働者に対して検査費用および治療費の一切を負担すること連絡すること。

7.GPグループは電池生産に際して安全基準をクリアーする義務があることから、市民に対して事件の経過を公開し、市民の監督を受け入れる責任がある。

GPグループの責任者がわれわれの正当な要求を受け入れることを期待するが、もしそれが実現しない場合にはGP電池のボイコット運動の実施を検討しなければならない。

2004年7月20日

署名団体

香港職工会連盟(HKCTU)、街坊工友服務処、香港福利工作協会、飲食業従業員協会、香港医院契約臨時労働者組合、香港守衛ガードマン労働組合、環境衛生康楽文化人員協会、専門ハウスキーピング協会、健康介護従業員労働組合、貨物港湾内運転手労働組合、キリスト教工業委員会、基層大学、全球化監察、工業傷亡権益会、工友権益聯社、カトリック正義と平和委員会、プロテスタント学会、中文大学学生自治会、香港学生連合会、理工大学学生自治会、深水*コミュニティ協会、中国労工通信、先駆社、民権党、消費者の力、香港カトリック労働者委員会、城市大学学生自治会、新婦女協進会、香港女性労働者協会、中文大学基層関注組、キリスト教学生運動、全球聯陣(グローバルネットワーク)、紫藤、他個人賛同