50 第309高射中隊配属
 教育隊から309中隊に配属され…  官品・私物の移動を309中隊の陸士部屋3班に移動を済ませた夜。  お別れ会も終わって、軽く酔って居室に戻りました。  居室は免許取得で松山駐屯地に行ってる隊員のベットを除いて、どのベットも休んでる隊員が居ました。  

 とりあえずは「本多です宜しくお願いします。」と、挨拶してなかった隊員に丁寧に挨拶。
どの人も快い返答で挨拶してくれました。  しかし、たった一人だけ気持ち悪い笑い方で「や〜♪やっと来やがった俺の僕(しもべ)!」と言う隊員が居た。  名前は芝谷(仮名)。 階級は僕よりも一つ上の一等陸士。  今までこの部屋では一番下の隊員だった。

 「よう! これからお前がこの部屋の一番下っぱだから俺が今までやってきた事を全部申し送るからメモしながら全部覚えろよ!」

@ 起床と同時に部屋の明かりを点ける。
A 居室のポットにお湯を入れてきて、全員にコーヒーか紅茶か伺って作る。
B 新聞をホッチキスで留める。
C 煙缶(灰皿)を並べる。
D 食堂に並んで班長のパン(朝食)を奪取してくる。
E 皆が使ったカップを洗って、ポットのお湯を満タンにしておく。
F 朝礼集合前に
G 電気を消して朝礼に出る。
H 昼はカップを洗って熱い湯に入れ替えておく。
I 昼礼集合前に吸殻を全部捨てて煙缶を居室の外(定位置)に並べる。
J 電気を消して昼礼に出る。
K 終礼後は食事が済んだらカップを洗って、ポットのお湯を満タンにしておく。
L 班長の半長靴を磨く。
M 夜の掃除が終わったら、全員にコーヒーか紅茶か伺って作る。
N 消灯前に吸殻を全部捨てて煙缶を居室の外(定位置)に並べる。
O 消灯と同時に部屋の明かりを消す。

 概略こんな感じ。  早速、居室で休んでいる隊員にコーヒーか紅茶かを喫茶店のウエイトレスさんの如く聞いて回る。  「俺はコーヒーで砂糖無し」  「俺は紅茶で砂糖多め」  「俺は要らない」  「俺はアメリカン」  と…いちいちメモしないと覚えられないし、アメリカンって言われてもよく分からない。

 最初は芝谷一士が作り方を教えてくれた。  コーヒーはもちろんインスタントコーヒーで、紅茶はティーパック。  カップの裏底に名前が書いてあるので間違えないようにする事も教えてくれた。
 一生懸命作って配りました。  「おお♪ 芝谷が煎れた紅茶より美味いなぁ♪」と喜んでくれました。  紅茶のティーパックはスプーンでグイグイ押して濃いのを作って飲んでいた癖が役立ちました。


 消灯前に片付けて洗面所で洗って並べて格納します。  カップやインスタントコーヒーや紅茶・砂糖・フレッシュの格納してある棚は汚かった。  小さなゴキブリを時々発見したなぁ。


 なんだかんだやってるうちに消灯時間(午後9時)が近づいてきた。  結局自分の事はなにもできず終い。  酔ってた事すら忘れたまま、煙缶を片付けて消灯ラッパを合図に「電気消させていただきます!」と言って消灯。

 消灯なんだけど…  普通は静かに寝るはずなのに…  隣の居室から数人入って来て、僕のベットの近くでボソボソお喋りが始まる。
下の芝谷一士は寝つきがイイのか?慣れているのか?爆睡!
 このボソボソ声は凄く気になって眠れない。  消灯時間なのに!  この居室で一番偉い市川士長なんて自分のテレビの光が漏れないように細工してテレビを見てる。  いくら光が漏れないように細工したって光は漏れるよ!  ボソボソ声と不思議な光線で全然寝付けない。

 消灯時間を過ぎても廊下は足音が絶えないし…。  ボソボソ声に敏感になっていたら、ウォークマンのヘッドホーンから漏れる音まで耳が拾うようになっていた。  昼間と変わらない。  消灯ラッパが鳴り終わる頃には爆睡だった新隊員時代が嘘のようでした。


 午前0時くらいになって隣から来た隊員も帰り、テレビを見ていた市川士長も眠りにつき、ウォークマンも既に止まっている。
(T。T)やっと眠れる!  さぁ寝よう!  と思った時に直ぐ隣の居室(独身中年部屋)に二等陸曹が飲んで帰って来た。  バターンと扉を閉める音でビックリ。  バンガラガッシャーンとロッカーを開けて着替えているのだろうか? スッゲー騒がしい!

 しかしそれは直ぐに静かになったので、大した事ではないと思った。  
がっ!!
悪夢はそこから始まった。  なんとアダルトビデオの観賞タイムが始まったのであった!!  ボソボソ声とヘッドホーンから漏れる音で超敏感になった僕の聴覚。  喘ぎ声や変な音はダイレクトに耳に入る。  今までのボソボソ声もヘッドホーンから漏れる音も今思えば銀玉鉄砲。  この音はホークミサイルだ。  僕の鼓膜に誘導ミサイルの如くダイレクトに突き刺さる!!  時々聞こえる缶ビールを開けるプシュって音までよく聞こえる。  喘ぎ声はいろんなところを覚醒させる効果音。  結局午前2時過ぎまで喘ぎ声を聞きながら握ってました。


 第309中隊に配属された初日の朝は凄く眩しい朝だった事をハッキリと覚えています。 
by606