38 お盆休み |
後期教育期間のド真ん中ぐらいにお盆休みを迎えました。 発射機の整地撤去の訓練が一番ツライ時期だった事を覚えています。 班長に「お盆休みは何日くらいあるのですか?」と聞いたら… 「そんなもんあるワケねーだろう!」 という腰を抜かす返事がきた。 腰を抜かしつつ、驚きが速攻で怒りに変わったのは18歳の若さだったのかな? すでに高校時代、放課後はもちろん授業中も一緒に遊んで一緒に入隊した豊川駐屯地に残った友達からは一週間の休暇だと聞いていた。 だから怒りの度合いは計り知れると思います。 世間一般的に見ても盆と正月は一週間ぐらいの長期休暇。 GW(ゴールデンウィーク)は豊川駐屯地から3日の連休を得て帰宅していた僕。 丸ごと3日間、体を休められた事は凄く幸せだった。 ゆっくり風呂に入れただけでも幸せだった。 嗚呼…それなのに後期教育は盆休みがない。 日曜日を利用して帰宅する事は可能だけど、姫路駅から新幹線を使って家に帰っても1時間滞在するのが精一杯だ! 駐屯地の近所の隊員が羨ましかった。 しかも僕らの時代は制服&制帽での外出。 それが嫌だったので滅多に外出はしなかった。 いわゆる引きこもりってヤツですかね? 疲れもあったし、日曜日くらいしか自分の事ができなかったので洗濯や月曜日からの準備を午前中にして、午後からはベットでゴロゴロして過ごしていたのが現状。 「そんなもんあるワケねーだろ!」 と豪語していた班長から「夏季休暇は15日〜17日まで。」と言われた。 「ちっ! たった3日かよ!」 関西・近畿地方の隊員なら移動を含めて2日半は連休モードになっただろう。 しかし名古屋方面の僕らは移動を含めれば正味1日半。 だいたい駐屯地の前のバス停から姫路駅に出るまでに30分以上必要だし… 名古屋駅から自宅まで1時間くらい必要だし…。 さらに考えてみれば、一日フルに遊んだら終わりだよ。 15日は朝から皆輝いていました。 制服も綺麗でした。 あの頃の夏はスッゲー暑かったけど… エアコンも扇風機もない、ましてや日陰もない炎天下で訓練をしていた僕らは暑さには恐ろしいほど強くなっていた。 しかし…顔だけ真っ黒なんだなぁ。 僕は名古屋方面の隊員数名で姫路駅から新幹線に乗りました。 名古屋には驚く速さで到着して、名古屋からは一人で西尾線に乗り換えです。 (>。<)辛かった! たった一人で陸上自衛隊の制服着て名古屋で電車に乗るのは!! 西尾駅に到着したら、どうやって家まで行こうか悩んだ。 親に車で迎えに来てもらうのも過保護チックで嫌だと思った。 そんな時にふと思ったのが、高校時代にバイトしていたケンタッキーフライドチキン西尾店に寄ろう!という事。 西尾駅から歩いてケンタッキーに向かいました。 今思えば何故そんな行動をとったのか??全くわかりません。 歩いて10分ぐらいのケンタッキーに到着。 歩く事なんて何の苦労も感じなかった。 制服だったので店から入るのが恥ずかしかったので、従業員入り口から入ったら… 「知らない人が見たら警察かと思うだろうが! 店から入れ!」とスッゲー怒られた。 店長を驚かそうと思ったのに、逆に驚いた。 しかも班長よりも怖かったし… 自衛隊以外でも怒られるのも悲しい。 ケンタッキーのバイトを辞めて5ヶ月弱なのに、すでに知ってる友達は誰も居なかった。 店長には怒られるし… チキンフィレサンドを1個買って店内から家に電話して迎えに来てもらった。 家に帰って制服を脱いだけど、着るものがなくてジャージを買いに行きました。 さらに履くものすらなく… ビーチサンダルとスニーカーを買いに行きました。 不便だ!! 住み慣れていた自宅のほうが不便だ!! 駐屯地内なら階段下りれば自販機もある。 歩いて1分ぐらいで喫茶店もある。 まるで最初のランボーみたい。 その日は直ぐに夜になった。 暇だ! 寂しい! あれほど鬱陶しく思えた男集団が今夜は懐かしい。 寝るまで喋ったりしていたのに話し相手が居ない。 寂しさと有り余る体力で自主トレしたくてもネタがない。 あれほど山積みされていたエロ本も…わざわざ本屋さんまで買いに行くのも馬鹿らしい。 それに買う勇気すらない。 気楽に自主トレできるのは素晴らしい事だったけど…どれだけやっても眠れなかった自衛官の悲しい定め。 翌朝は同じ高校から一緒に入隊した隊員と遊びました。 彼は高校卒業と同時に免許を取得していたので車を持っていました。 その頃は全然羨ましくなかった。 車なんて無くて当たり前だったし、車の話題なんて駐屯地内では皆無。 だいたい車の話をしたのは、それから3年近く後の大型免許取得の頃。 彼の助手席に乗ってドライブを楽しんだ盆休み♪ (>。<)悲し過ぎる! 普通なら彼女を助手席に乗せてドライブじゃねーのか? せめてドライバーが女性なら…。 なんとなく過ぎたフルに遊べる盆休み中日だった。 そして再び眠れぬ夜が… (T。T)やるせない。 17日は朝から既に帰隊モードです。 早い! あれほどいろんな事がしかった3連休だったのに… 『彼』とドライブしただけで終わった。 思い出の欠片すら無く、後悔の念を背負って両親と妹達と昼飯を食べて西尾駅から電車に乗りました。 もちろん制服&制帽です。 恥ずかしいよりも虚しさが大きくてうつむき加減。 豊川の休暇はまだ明日もあるみたい。 僕らよりも3日も早く休暇になって、まだ明日も休みだなんて! それでも給料は同じ。 それが自衛隊。 姫路駅のバス停で数人一緒になりました。 これまで以上に話が盛り上がったのは言うまでも無くお互い様。 きっと彼らも同じ境遇で3日間を過ごしたのでしょう。 夕方頃に青野ヶ原駐屯地に戻りました。 非常階段を上がって居室に向かう途中で半長靴を磨いてる奴。 廊下で戦闘服にアイロンかけてる奴。 エロ本持ってトイレから帰ってくる奴。 現実に戻って嫌だったけど… スッゲー落ち着けた自分が嬉しくもあり、悲しくも感じた人生初の夏季休暇でした。 by606 |