30 高射特科の使命 |
受け入れるしかない。 こんな所で『楽』を求めてしまった僕が間違っていた。 だけど… 同じ給料で全然違う重さの仕事内容は、僕が自衛隊をさっさと辞めたくなった理由だったし… 辞めた理由の一番だった。 実際にこれから3年9ヶ月を此処で過ごす事になったのだけど、『仕事を頑張ってやっても、怠けていても給料は同じ!』という事が本当に嫌だった。 たまたまなのか? 僕みたいに高射特科を希望して来たかは未だ知らない事だけど、この青野ヶ原駐屯地の後期教育に集まった隊員の殆どが『まさか!』と思ったに違いない。 とりあえず此処に集まった16名の隊員は同じ苦労をして同じ給料を貰う事になる。 それがせめてもの救いだったのかも! 後期教育初期は座学(勉強)が多かった。 ただ… 起床から学習室に入るまでに儀式が多過ぎてフラフラ(>。<) 儀式@ 起床点呼と同時にベットメイキング。 儀式A 徹底した掃除。 儀式B 朝礼前に駆け足行進。 儀式C 全員で大声をだす号令調整。 儀式D 朝礼直前に服装検査。 (@〜Cまでやれば服装は乱れて当然なのに腕立て伏せ) そして部屋に戻れば新隊員名物の台風が居室に上陸してる始末。 座学どころじゃない! これが仕事なのか? 最初に教えられ… 暗唱させられたのが高射特科の使命だった。 『高射特科の使命! 中低空の敵機を…なんたらかんたら…一撃必墜の…なんたらかんたら』 今となっては覚えていないけど、毎朝デカイ声で言わされた。 洗脳されてる旧陸軍そのもの。 レンジャー部隊じゃないっつーの! 寝言で言うほどだった。 座学はミサイル発射機の性能やら諸元が書かれたぶ厚い本をメインに進んだ。 青い表紙のド真ん中には大きく『機密事項』という赤いハンコが押してありました。 さらに毎回配られるコピー用紙は不要になると焼き捨てなければならず、この場合には『焼却』というハンコが押してあります。 だいたい高卒でやって来た僕らに国家機密だとか言われたってピンときません。 そんな事を僕らに教える方が悪いわ! それに一般の人に話したって理解してもらえないばかりか、アホかと思われるのがオチ。 確かに射程距離やら詳しい事が書いてあって、若干「これは大事だな。」と思えたけど… そんな事ぐらい赤の国はとっくに情報を得ているはず。 泰平国家日本の間抜けさを露呈してるハンコだね♪ 座学で一通りホーク部隊の説明を受けたら実際の機材(レーダーやら発射機)を見に訓練場まで移動しました。 訓練場に入る際には手続きが必要で驚いた。 手続きをしないと訓練場には入れない為… 豊川駐屯地みたいに何処からでも訓練場に入れません。 入り口は1つだけでした。 ちゃんと警衛の人が立っていて、新隊員の一人が名前を書いて『他15名』『許可書番号』などを書いて、その許可証を胸に安全ピンで留めて入ります。 めちゃめちゃ面倒臭いけど… 手続きが済むまでの10分間ぐらいはダラっとできました。 ゆっくり行進して「このレーダーは敵機を発見する物」 「このレーダーは目標を捕捉追随する物」 「このシェルターは部隊の中枢」 「これが発電機」 いちいち立ち止まって詳しく説明してくれた。 レーダーの中には高周波を発射する物もあり… レーダーの向いてる方向に長時間立っていると子種が無くなると言われたので、レーダーが向いてなくても股間を両手で隠す隊員もいました。 「そしてこれがお前らが学ぶ発射機だ!」と指差された。 なんの変哲もない無格好な塊り。 これを装甲車に牽引されてる形から発射できる形にして… 発射できる形から装甲車に牽引できる形にするのが後期教育だと教えらました。 それまで僕らは「いったいこの3ヶ月間なにやるんだろう?」と思っていたので、少しだけ腰が落ち着きました。 更に… 『簡単な事』だとも思った。 3ヶ月間同じ事の繰り返しで給料が貰えるなんて素晴らしい! まるで小学校の学芸会みたいなものだと僕は喜びました。 だって勉強しなくて済んだし…自分の台詞のときだけ頑張ればイイ事だもん。 ちょっとばかり明日が見えてきました。 訓練場から出ようとした時に戦車みたいな車がミサイルを3発積んで移動してました。 w(@。@)w かっこいい! 初めて実物を見たホークミサイル。 いつかこんなカッコイイ仕事ができるようになるんだ!! 一丁やってみよう。 頑張ってみようと思えるようになりました。 その頃から見た目重視の性格だったのね♪ 訓練場を出る時も手続きをします。 これから毎日朝晩やらなければなりません。 教育期間が終わって中隊に配属されれば個人の許可証が貰えます。 そうすれば警衛所の前を敬礼するだけで通過できる仕組み。 まるで社会見学みたいな一日でした。 さぁ! 明日からは発射機の『整地撤去』の訓練! 頑張るぞ o(^-^)o by606 |