入隊するまでの事
 あれよあれよという間に進路が決定。 わずか数日のどんでん返し! 『お先真っ暗』 自衛隊に行くのだったら別に勉強なんかして脳を鍛えなくても体だけ鍛えておけば良かったんじゃないかな? もっと遊んで鍛えておけば良かったとさえ思いましたね。

 その頃はケンタッキー・フライドチキン西尾店でバイトしてたので、店長に高校を卒業してからの進路を話したら「ほう!そりゃ凄いじゃん! 自衛隊出たら此処に就職すればイイよ!」と励ましてくれた。 できれば自衛隊に行かないで、ケンタッキー・フライドチキンで働きたいぐらいだよ。 女の子もいっぱい居るし… 忙しいながらも空調設備が整っていて楽しく働けるのに。 もっと早く相談していれば此処に就職できたのかな? でも自衛隊を出なきゃダメだったんだろうなぁ!

 自衛隊に入るにも試験はあります。 確か… 国語・数学・理科・社会だった。 20年以上も昔の事だけど、国語の試験で一番最初の問題はしっかりと覚えている。 
 問1 『でんわ』を漢字で書け。
という問題でした。  まぁこの話は後ほど。

 試験は航空学生・陸曹候補学生・普通の自衛隊の3回も受けなければならなかった。 
航空学生と陸曹候補学生の試験は平日に岡崎市の試験会場まで、自衛隊の車が家まで迎えに来てくれて受けに行きました。 もちろん学校は就職試験扱いで欠席にはなりません。 間隔をおいて2回受けに行きました。 

 陸曹候補学生の試験は全然分からなかったです。 それでも適当に…勘でマスを埋める事はできました。 なんたって自衛隊のエリートコースだもんね。 そんな意味も分からず試験を受けてました。 学校休めるし♪

 航空学生の問題は4択問題でしたが… さっぱり分かりません。 『飛行機の計器がこーなったら視界がどう変わるか?』 『現在の緯度経度からどの方向に進むと絵の状態になるか?』など… 1つとして分かった問題はありませんでした。 大勢が受験していたけど… 他の奴らは解けるのか?? たった数秒で寝ました。

 もちろんどちらも合格なんかするワケがありません。 なので普通の自衛隊の試験を受けに豊川駐屯地まで連れて行ってもらいましたよ。 時代はバブル全盛。 どこの企業も人手が足りないぐらいの好景気。 そんな中で自衛隊の試験を受けに集まった奴らはガラの悪い奴らばっかり! 僕の通っていた高校も結構ガラが悪い奴が多かったけど… 世の中には半端じゃなく柄の悪い高校生がこんなにも存在するのかと驚きましたわ。
 航空学生と陸曹候補生の試験会場には全く居なかったのに… ますます『お先真っ暗』です。 

 言われた通りに席につき、国語の問題用紙が前から順番に送られてくる。 皆、嫌々後ろに送っている。 僕にも前の席から送られてきた。 鋭い眼で睨まれながら… 「なんで試験会場で挑発されないかんのかな?」と、メチャメチャ複雑な思い。 受かったら、こんな奴らと寝食を共にせないかんのかぁ? 不合格ならアホ扱いされるわ、進路に悩まないといかんわで…どちらに転んでも地獄やん!

 「はい。 じゃあ制限時間40分です。 名前を書いて… 始め!」 という号令で名前を書いて問1から始めました。 『でんわ』を漢字で書きなさい。 おいおい…小学生の何年生レベルの問題だよ? 問2も似たり寄ったり。 始まって2〜3分で、あまりの簡単さに泣けてきてしまった。 そして何気に前を見ると、既に半分以上の奴らがダウンしてる。 「え〜! 諦めちゃってるの??」と… 僕が航空学生と陸曹候補学生の試験の時にダウンしてた姿が目の前に広がっている。

 別に自分が頭良いとは思わなかったけど… この世界では普通なのかと少し嬉しかったりもした。

 試験は数学・理科・社会と続きました。 社会は難しかったと思った。 午前中で試験は終わり、帰路についたけど… なんだか久しぶりに頭を使った気分で爽やかな気持ちでした。

 結果は『合格通知』という形で、学校で受け取りました。  家に帰って「あのさぁ… 自衛隊に合格したみたいだよ。」と力なく親に報告しましたが、特にお祝いとかもなく…その日は静かに終わった覚えがあります。
 とても『晴れの門出』という雰囲気じゃないもんね(T。T)  親も… 僕も…。

by606