157 自衛隊から戻って… 其の壱

 春休み真っ只中のシャバに戻り…
 ここ暫くマイペースで過ごしていた僕は、このままマイペースで生き続けたいという無気力さ。  給料が貰えるプチニート状態だったと思う。  だって退職前の1ヶ月間は、『働いたら負け!』みたいな日々だったもん。

 ところが家業はイキナリの繁忙期!  両親は既に午前4時くらいから起きて働いていた。  僕は午前6時の起床ラッパが鳴らなかったので「今日は日曜日?」ってな感じでダラダラと布団の中。
 寝心地はいいけど慣れない布団から出て現実を知る。  

 「今日は何やるの?」

 それがシャバで最初に思った事だった。  今までは午前6時の起床ラッパでとりあえず起きて、とりあえず点呼整列。  とりあえずベッドを整頓して簡単に掃除。  朝飯が済んだらトイレ&洗面。  それから朝礼まで二度寝だったから…  何をやったらいいのか全く分からないお馬鹿さん状態。


 母親が作った朝飯を家族5人で食べる。  不思議な空間だった。  通常なら当たり前の光景だろうけど…  妙に一人浮いてる感じ。  上の妹は仕事に、下の妹は高校に普段のペースで出勤登校。  残った両親は工場に行き、僕はとりあえずお手伝いを始めた。  まるで男バージョンの家事手伝い。  先行きに不安を感じた。  強烈に感じたなぁ。


 仕事は言われた事を手伝いながら少しずつ学んだ。
 自衛隊を退職する寸前に崩壊したバブル経済。  経済状態なんて無縁な自衛隊だったので、何がどう崩壊したのか知る由もない。  ただただ目の前にある山と積まれた仕事をこなすだけ。  体力はあった!  全く疲れなかった!  でも、同じ場所に一日中立ち続ける事にだけ『苦』を感じましたね。  慣れない部分は滅法弱い。


 一番慣れなかった部分は…  午後5時以降も働く事!!  これは今でもリアルに覚えている。
 今までは午後5時ジャストに降りる国旗に敬礼をして「お疲れさん!」で一日が終わっていた。  それが午後5時を過ぎても仕事が終わらない。  午後5時を1分でも過ぎようものなら速攻で怒りに変わる。  午後6時になっても7時になっても終わる気配がない時はアホらしくなって勝手に仕事をヤメて車で走りに行っちゃったほど。

 さらに土曜の午後も仕事の時(自衛隊での土曜は半日&隔週で休みだった)は洗車したくて気が狂いそうだったし…

 日曜日も仕事の時は、朝から車に乗って遊びに行きたい気持ちも重なって泣けてきたし…

 祝日も日曜日同様でイライラウズウズしながら仕事をしていた。


 そして、退職してすぐにやってきたゴールデンウィーク。  自衛隊に居た頃なら5連休以上の休みがもらえたのに…  1日も休みが無い上に日曜日も仕事。  この時初めて「自衛隊のほうが良かった。」と思ったよ。
 良いのか悪いのか…  自衛隊から戻っても『友達』が全然いなかったから泣く泣く仕事ができた。  もし友達がいたら…  確実に連休を楽しんでいたに違いない。


 ゴールデンウィークは僕にとってグレーウィーク。  それは自衛隊生活がゴールデンであり、今の生活全てがグレーに感じる日々に置き換える事もできた。
by606