 １５ 初めての外出 其の弐 |
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ゲームセンターが一番落ち着いたのかも知れない（Ｔ。Ｔ）
何をするにも帽子が邪魔で… やたらと脱いではいたけれど、これも大事な『官品』なので紛失及び盗難にでも遭えば弁償して済む問題ではない。 本当に邪魔だった！ もっと邪魔だったのが革靴。 ブカブカで硬くて重い、生まれて初めて履いた黒くてダサイ革靴。 歩きにくいったらありゃしません！ 歩き疲れるし…。 全体的に違和感あったんだわっ！ まだ半長靴の方が動きやすかった。 だからゲームセンターが一番落ち着いたのですね（＾-＾） 薄暗くて… 座っていられるし… 人目も気にならない。 結構長いこと居座った。 まだ１ゲームが100円の時代。 給料入ったので千円札を両替してゲーム機の上に100円玉を積んで遊ぶ辺りは、学生時代と一線を描く行動でした。 制帽は真後ろに被って集中して遊びました。 そろそろ晩飯食って帰らなければなりません。 『晩飯』… 駐屯地の食堂ならタダで気楽に好きなだけ食べれるのに、シャバでは『何を食べるか』というところから考えなければなりません。 一人単独行動なら入り易い所で済ませれるのだけど、１０人で行動すれば１０の頭（考え方）があります。 １０の好き嫌いがあります。 個人的には焼肉が食べたかった！ それは今でもハッキリ覚えています。 しかし話はまとまらず… 結局、目の前にあった喫茶店でカレーライスやパスタを食べた。 マナーも何もなかった。 帽子を脱げば坊主頭に帽子の跡が丸くクッキリ残る。 少林寺の修行僧みたいで情けなかった。 高校卒業したばかりの未成年でありながらタバコは堂々と吸う。 幼さが残る１８歳。 坊主頭に剃り込み合戦で悪の雰囲気はあれど…未成年。 警察が来れば何やらの注意はされるだろうけど… タバコを吸う隊員は慣れっこ。 悪びれる様子なんて微塵もなかった。 『外出』は僕にとって、まるで異次元の世界でした。 閉ざされた環境から開かれた環境へ一時的に開放された人間。 どちらが僕にとって安息の地なのか？ たぶんどちらも安息の地ではない。 どちらも珍しい場所。 慣れない場所。 ただ… 自衛隊の方が何をするにも楽だったのかも知れない。 自由こそ２４時間のうち、寝てる時間を除けば２時間にも満たないだろうけど、衣食住保証されてる駐屯地内の方が好みだと思った。 駐屯地から出たら自由だらけだったけど… それは空っぽの自由だと思い知らされた気がする。 もし… この外出が単独だったら、きっと豊川稲荷駅から豊橋駅に着いた途端に戻っていたと思う。 たった数週間の自衛隊生活で、自由の使い方を忘れた自分に気がついた。 そんな隊員も僕以外に少しは存在したのではなかっただろうか。 戻らなければいけない時間に隊員の性格は二分した。 『さっさと帰って明日からの準備をしたい隊員』 『戻りたくない隊員』 後者が９０％ぐらいだったのでは？ 「また明日から６時起きかよ！」と愚痴りながら１０％の『さっさと帰って明日からの準備をしたい隊員』に引っ張られるようにして豊橋駅から電車に乗りました。 帰りの電車内は嘘みたいな静けさ。 明日からの生活が憂鬱なのはよく分かる。 それに慣れない靴で一日歩き回った疲れも濃い。 １５ラウンド戦い終えたボクサーみたいでした。 豊川稲荷駅から駐屯地までは普通以上に遠く感じた。 制服着た自衛官が疲れきった顔してゾロゾロ集団で歩いている。 同い年ぐらいの人間がカッコイイ車に彼女を乗せて追い越し…擦れ違う。 「こんな所に入らなければ…」と思いながらも駐屯地の灯りを目指す。 『自由』という物の意味を少しだけ学んだ一日でした。 正門で並んで敬礼。 身分証明書を呈示、再敬礼。 ここから先はダラダラ歩けない。 一列縦隊で前進。 警衛所にてまたまた敬礼。 一番偉い人に帰隊の報告をしてキビキビと居室まで進みました。 部屋に着いたら疲労度Ｄです。 早く革靴を脱ぎたかったけど、班長の所まで帰隊の報告に行かなければなりません。 もう疲れきってます。 キチンと報告して着替えて生き返りました。 さらに遠い風呂場まで、遭遇する隊員に「ご苦労様でした！ご苦労様でした！」と敬礼しながら歩いて行く新隊員の悲しい定め。 風呂から出て掃除までの数分… テレビのニュースで『新人自衛官の初外出』というネタをやってました。 どうやら守山駐屯地の新隊員が僕らと同じように初外出だったみたいです。 インタビューされてる自衛官のアホな事と言ったら…悲しいくらいです。 僕らも同類？ 守山駐屯地の隊員のほとんどが名古屋・栄に行ったらしく… そのハチャメチャぶりは見事なほどでした。 制服のズボンを捲くり上げて、セントラルパークの噴水に入ったり… ネクタイをダラダラにして敬礼しまくったりで… 後日かなり酷く叱られたそうです。 無理もないわな（＾-＾） ｂｙ６０６ |