146 陸曹候補生への道 其の六 |
と… ここまでは全く気がつかなかった事が1つ。 『駐屯地に親を呼ぶ奴なんかいねーぞ!』 もしその光景を逆に僕が見たのなら、「この親は過保護かぃ!」と思わず言っちゃうはず。 ヤバイ! 親が過保護なら子供は甘えん坊将軍。 中隊長室まで行くのが嫌だなぁ〜って思ったけど、ココまで来て「やっぱ帰れや。」なんて言えないし。 とりあえず中隊が1階で良かったです。 もし3階だったら全中隊に『僕ちんは甘えん坊でちゅう』と言いながら歩くようなもの。 不幸中の幸いでした。 少しでも『仕方なしに…』という雰囲気を醸し出すように、両親祖父母の3mぐらいの前の位置で引率。 さっさと中隊長室に入れました。 中隊長… バリバリに制服着てるし(>。<)@ 日曜日なのだから私服でいいじゃん! 軍人かよ! …軍人だわな。 中隊長室の応接間で世間話・昨日の話をしながら場を和ませます。 僕的には早くこの時間が終わればいいのになぁ!と思っていただけなので愛想の無い愛想笑い(それを無愛想という)の繰り返し。 話なんか聞いてなかったし。 「先日、息子さんが陸曹候補生に合格されましてね…」 (>。<)ついに本題突入だ。 「はい。 昨夜その話を初めて聞きましてた… まぁ自分の人生ですから自分で決めさせましたので、私どもはこれまでお世話になったお礼かたがた今後のお願いをさせてもらいに来ました。」と親父が言い終わったら全員が僕に注目。 嗚呼、ついに自分の番がきちゃったよ。 「いろいろ考えてみたのですが… 元々家業を継ぐつもりで自衛隊に修行に来たようなもの。 やっぱり家の仕事を継ぐ事にしました。」 あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ言っちゃったよ! それは「自衛隊辞めます!」と中隊長に直訴したも同然! 通常、部屋の班長 ⇒ 人事陸曹 ⇒ 訓練幹部 ⇒ 副中隊長 ⇒ 中隊長という順番を経て退職という運びになるのに、陸曹候補生になるだろうと思われた隊員が、直接中隊長に退職の意思を告げてしまった。 せっかくの日曜日にビシッ!と制服を着て僕の「これからも宜しくお願いします!」という言葉を待っていただろう中隊長の凹み具合と言ったら… 実際、この後正門の前で両親祖父母が乗るタクシーを見送ってから中隊に戻ったら中隊長の姿は無かったし… 明日は嵐だと覚悟した快晴の日曜日。 本多士長 陸曹候補生合格を捨て、二任期満了退職を決意。 成せば成る、成さねばならぬホトトギス by606 |