134 ホークミサイル実弾実射訓練 其の九 |
コンクリートブロックだけで造られたような小屋には二段ベッドがズラーっと置かれていました。 何もかもスケールが違う! トイレ・洗面所は意外に小さく… 一週間ぐらいこの小屋で生活をするので洗濯機もあります。 この洗濯機がまた大きい! 一度に4人分くらいの洗濯物が洗えるぐらいの容量。 1989年という時代には珍しい一層式全自動洗濯機。 それが2つも置いてあった。 爆撃機のような嵐が去った後は、戦闘機のようなハエの攻撃。 どこから湧いて現れるのか分からなかったけど、小さなハエが蚊の如く体にまとわりつくからイライラした。 殺虫剤も無ければ蚊帳もない! 仕方ないからシーツに包まって対処した。 雨が止んだので外に出てみると、あんなに激しく雨が降ったのに水溜り1つできていない。 いかに乾燥しているのが分かる。 暑い地域なのに蒸し暑さもない。 むしろ涼しいぐらいだった。 「なんちゅ〜過しやすい国なんだろう♪」 それがエルパソの第一印象。 そのうちに戦闘服や半長靴などを入れたスーツケースを積んだトラックが到着。 米兵2人が手際よく降ろして、さっさと帰って行った。 この米兵2人の今日の仕事はコレで終わりなのかな? どこの国もよく似た仕事内容だなぁ。 自分のスーツケースをベッドの横まで運んで中身を出そうと開いたら… 「臭っ!」 開けた途端に妙な臭いがした。 なんだかヤバイ臭い。 「なんだぁこの臭いは!?」と周囲の隊員も気がつく。 なんとヘアムースの蓋が外れて、満タンに入っていたムースが全部出て空っぽになっていた。 既に乾いていたけど、スーツケースの中は全滅。 これから直ぐに着なければならない戦闘服は部分的にたくさんのシミができている。 広げてみたら水玉模様だ! しかも香水を振り撒いたほど臭い! 仕方なく水玉模様の戦闘服を着て式典に参加。 見方によっては汗にも見える。 真夏のエルパソだけど空気が乾いてて汗なんて誰もかいてないのに… どちらにしても無ざまな姿にかわりなかった。 式典は小屋の前に日章旗を掲げて終了。 今日の仕事はやっぱりこれで終わり。 誰もがのんびり過してる時に戦闘服を洗う僕。 しかし全自動洗濯機の使い方など分からない。 スイッチ類は見た事がない記号と英語だし… 適当にスイッチを押したら適当に洗い始めたので良しとした。 ムース攻撃を受けていたのは戦闘服だけじゃなかったので、洗えるモノは全部洗ったし、スーツケースの内側も洗って外に干した。 英会話の本とか日記帳とかは使い物にならなくなってしまったので破棄。 困ったもんだ。 なんとか洗えた戦闘服。 速攻で乾いたけど水玉模様は抜けなかった。 油汚れは水では抜けない事ぐらいの知識はあったので、PXのクリーニング屋さんを探しに出た。 がっ! 大勢の米兵の威圧感にPXに入れない! スッゲー怖い! 「えきゅすきゅ〜ずみー!」と勇気を振り絞って優しそうな米兵に声をかけてみた。 「What is it? Who are you? I do what here? Return to the house early!」 早口で何を言ってるのかさっぱり分からない。 しかも優しそうな米兵だったのに忙しかったのか急にキレた顔になった。 PXの前で戦闘服を抱えて一人立ちすくむ僕。 米兵から見たらクソガキにしか見えないだろうなぁ。 もう諦めて帰ろうかと思ったら、二人の女性が話しかけてきてくれました。 男性兵士より緊張するっつーの! でも優しい問いかけに安心して「コレに油が付いたので、ドライクリーニングをしたい。」と、なんて言って伝えたのか覚えていないけど、知ってるだけの単語を並べた英語で説明した。 分かってくれたのか… 僕の手から戦闘服を取って、また難しい英語を喋りながら二人で大笑いしながらPXに消えて行きました。 それから何分待っても二人は帰って来ない。 勘違いして捨てられちゃったのかな? 明後日のASP本番に間に合うのかな? つか… 戦闘服が無かったら本番もなにもねーぞ!! もう帰りたくなった。 by606 |