104 大型免許取得 其の参

 昨日までの雰囲気とは全く違う気持ちで消灯を迎え…  翌朝は新隊員教育隊と同じような起床を迎えた。
 どれぐらいぶりだろう?  1年半ぶり?  起床ラッパと同時に戦闘服を着て半長靴を履いて外に並んだのは!  やっぱり何処の部隊にも動作の鈍い隊員は居るもので…  当直班長の機嫌を損ねます。


 今日は入所式。  せっかく着た戦闘服を脱いで制服に着替えさせられました。  通称:着せ替え人形。  いちいち面倒なのが自衛隊。


 掃除、トイレ・洗面、朝飯を済ませたら休む暇もなく朝礼場所に集合です。  中隊生活だったら朝礼までの30分ぐらいは2度寝できたのになぁ。  たった2日で憂鬱になったよ。


 入所式は30分ぐらい、起立!着席!敬礼!直れ!のリハーサルをした後に始まりました。  いちいち面倒なのが自衛隊。

 そんな入所式はもちろん形式そのものでして…  偉い人の訓示を聞いただけで終わった。  わざわざ制服着なくてもいいのではないだろうか?  ジャージにスリッパでも聞けるぞ!
 訓示を述べた偉い人の今日午前の仕事は、きっとこれで終わりだろう。  マンガでも読んで昼飯まで寛いで終わるのだろう。


 僕たちは居室の戻って再び戦闘服に着替えてヘルメットを被って朝礼・終礼場所に整列し、教習車の置いてあるモータープール(駐車場)まで駆け足行進。  歩いて移動したって3分と変わらないのに…  3歩以上は駆け足の精神か?
 
 初めて見た教習車。  当時、演習などで使っていた角ばった装甲車とは違って丸みを帯びた顔。  色こそ自衛隊のOD(オリーブドライ)色だけど、一見どこかの工事車両。  幌は張ってない。  イマイチ不恰好でモチベーションの上がらないな教習車でした。


 各班ごとに教習車の説明を班長から受けました。  実際、車に乗せてもらう事は数知れずあったけど、運転するのは初めてなのでアクセルペダルやブレーキペダル…何もかもが新鮮。   ハンドルなんて乗用車の倍くらい大きい。
 通常、大型免許は普通免許を取得して3年以上が経過してないと取得できなかったのが当時の道路交通法。  自衛隊では酒・タバコの他にも、いきなり大型免許が取得できるという治外法権ぶり。  良いのか悪いのか??  いきなり大型車に乗る事になる。

 モータープールで最初の教習が始まった。  それは乗り降りの儀式。
 乗る時は前後の安全確認。  指差し確認で「前方よしっ! 後方よしっ!」と大声で喚起。  最初は恥ずかしかった。  だってそんなの確認しなくても前からも後ろからも上からだって下からだって何も来ないよ。  せいぜい隣の教習車に開けたドアが当たらないか確認すればいいだけの事。  アホらしかったけど、これも仕事の内だと思って実行。  でもコレって公道では大事な事なんだよね♪


 そんな儀式を済ませて運転席に座る。  『座る』と言うよりも『登る』と言ったほうが正解かな?  立った姿勢で自分の頭ぐらいの位置にシートがある高さ。  もの凄くドキドキした。  親父の車の運転席に座ってハンドルを回したり、ウインカーやライトを弄って遊んだ頃を思い出したよ。  あの頃のワクワクじゃなくてドキドキしたのは、正直『怖い』という気持ちを覚えたからです。
 「こんなデッケー車は運転できん!」  そう思った。  
 「きっと何処かにぶつける!」  そうとも思った。

 「前方よし! 後方よし!」と発声してドアを開けて降りた。


 午前中は教習車の説明と乗り降りの方法を学んで終了。  午後からは6台の教習車で教習所に行って実技。  実際に教習所の外周を一人一人運転させられるみたい。  走らせ方なんて何も知らんぞ!
 

 昼飯を食べてから40分ぐらいある休憩時間のうちに、普通免許を持っている隊員に発進の方法を教えてもらった。  
 「半クラで繋いでゆっくりアクセル踏めば発進できるよ。」
 「チェンジはクラッチ切ってから1速から2速に入れて、またクラッチを繋げる。」
 「その繰り返しだよ。」と…  まるで宇宙人と話しをしてるみたいで、全然分からなかった。


 午後は各班ごと教習車の前に整列して集合となります。  これから毎日、実技のたびに教習車の前に集合。  雨の日は合羽を着ての集合です。
 教習車の荷台に6人乗って、班長の運転で正門を通過して教習所に入りました。  6台の教習車が縦に並んで停車。  1号車から順番に発進から停車までを学びます。


 初めての実技教習。  大型車というだけでも怖かったのに、この時から各班長の本当の恐ろしい姿を見る事になった。
厳しい予科練自動車教習が始まった瞬間だっ!!
by606