6/11(日) 石転び沢〜梶川尾根

てすとしてみる

直前まで行き先を決めかねていた。前夜はあまり寝付けなかった。そんな条件の中歩行時間の長くなるところはどうかと思ったが、なぜか気持ちは天狗平に向かっていた。当初、石転びを往復し、梅花皮小屋に上がった時点で余力があるようなら、烏帽子岳まで足をのばしてみようかと考えていた。


2:39家を出る。どこへもよらず 4:10 天狗平[92.0km.1時間半]。車が多い。遠方のナンバーもかなりある。自転車で上の砂防ダムへ向かう。いったん出発するが、湯沢の橋を渡った所でサングラスを忘れたのに気づきもどる。4:50 しきりなおして出発。

どこか明るさの足りないような空の下、上の砂防ダムまでペダルを回す。5:08[2.3km] 上の砂防ダム。自転車をロックして階段を上がる。右足のひらがちくちくするので脱いでみたら小さい木のとげみたいなのが靴下にささっていた。長袖シャツ一枚で歩いてきたが、寒くなり半袖を重ね着する。道が判然としなくなる。少し右にそれていた。すぐ本来の道に復帰。5:48 うまい水。すぐにヒコエムの平。

                エンゴサク                 サンカヨウ
少し雪の上を歩き6:08 慰霊碑。6:18 雪の上にのる。

6:55 入り門内沢との出合いから少し上流の草付きが露出している所で休む。すると「あれ?波多野さん?」声をかけてきたのは去年の秋2回お会いしている福島のKさんだった。「ホームページ見ているのであまりひさしぶりという感じはしませんね。」と言われる。ふたりで休んでいると、手に棒きれ、足下は長靴、体操ズボンに半袖、眼鏡をかけた男の人がやってきた。「ヒロタンですか?」と尋ねる。「そうです。」と返ってきた。初めてお会いした。思っていたよりもかわいらしさを持っているなという印象を受けた。20分ほど歓談し、12本爪アイゼンを着け再び歩き始める。

              まだこのころは振り返り写真を撮る余裕もあった 8:52 
中の島の大分下あたりから大きな恐怖感に飲み込まれた。降りてくるひとりが目の前で滑落しはじめた。その人の連れが先に歩いていたので、滑り落ちてくるコース上に移動して体を張って制止させるべく身構えていた。しかし滑った人が自力で止まることができた。その人とすれ違いざまに話すと、昨夜のアルコールが抜け切れていないらしい。そんな滑落シーンを目の当たりにしたこともあって益々怖くなってしまい足が出なくなった。足先を開き気味にしたり、キックステップで直登したりしたが、置いた足が後ろにずずっと下がることが数回あった。2〜3歩進んでは立ち止まりそこに固まってしまっていた。福島のKさんが、ここまでくれば足跡あるからがんばって、と励ましてくれた。体重を斜面に預けるような気持ちで、ピッケルを突き刺し、靴のエッジを効かせるように一歩づつ進んだ。なんとか前の人のステップに乗ることが出来た。あとは休みながら上を目指した。少し傾斜が緩くなり梅花皮小屋も見えてきた。そこからは精神的な不安から解放されたためか、肉体的疲労感をどっと感じる登りとなった。小屋のすぐ下でアイゼンを外す。10:10 梅花皮小屋着。

大日岳は稜線が雲の中、小屋のまわりは数種類のお花畑となっていた。風が強かったので、小屋の中でKさんと休むことにする。凍らせて持ってきたビールはちゃんと溶けているだろうか。プシュッと開ける。うん、シャーベット状態ではなく、ちゃんとビールだ。気温が上がらなかったけど、長時間にわたる緊張感をしいられたおかげで、のどはからからだったので非常においしく飲めた。どん平衛ミニを喰うべく、箸を探す。入れたはずなのに見つからない。Kさんの使い終わるのを待ってそれを使うことにする。待っている間にホットコーヒーを御馳走してもらう。箸を貸してもらい、家で詰めてきた弁当とみそ汁がわりのどん平衛ミニを食べる。胃が暖まる落ち着く。後続の登山者がぽつぽつと小屋に入ってくる。じゅうぶんに休んだので下ることにする。

上の砂防ダムに自転車を置いてきたこともあり、怖いけど石転びを降りることにする。丸森尾根を降りるKさんと小屋を出た所で分かれる。アイゼンを着け降り始める。少し行くと前が見えないくらいがくんと急になるところがある。その手前まで行って、あ、やっぱこんなに急じゃ下れないやと判断し小屋まで登り返す。

        テレマーカーも登ってきました
11:42 梅花皮小屋発。少し雪の上を歩いて、本日の最高峰、北股岳着 12:05。

                      12:21
             12:22
                        12:23
                  なにスミレ?
北股からの下りも落ち着くと平坦な道となる。片方づつ目を閉じ、ゆっくりと深い呼吸をこころがけ、寝不足解消につとめる。12:47 門内岳。1:10 扇の地紙、梅花皮小屋より3.7km.1時間半。梶川尾根にするか丸森尾根にするか迷う。結局、道の様子の判る梶川尾根に進む。1:37 梶川峰。少し下ったところで足をなげだして休む。筋を延ばす。夕食の時間には帰宅したいので休憩も早々にきりあげて下界を目指す。樺の木を見下ろす雪の斜面はかかとを落としながら慎重に下る。最後はネマガリダケをつかみながら樺の木へ。2:00 三本カンバ。2:10 自分にはその雪の斜面が怖く見えたのでアイゼンを着ける。通過してアイゼンを外す。踏み跡に導かれ五郎清水へと引き込まれる。五郎清水を見たことのない人はそれと気づかずに下り続けるかもしれない。要注意箇所である。

                2:53 滝見場の標柱
湯沢峰の登り返しの始まるところで道を見失う。地図とコンパスで方向を定めて藪に突っ込もうとするが2〜3歩で即撤退。いったんもどって下りきって赤布などがないか目を皿のようにして探すうちに道を見つけてひと安心3:30 。

3:33 湯沢峰の標柱。梅花皮小屋より8.1km 3時間50分。しばらくはわりと平坦に進む。途中エネルギーを補給する。700m付近で飯豊山荘が見えてからの下りが一番堪える。慎重に慎重に下り。沢の音がだんだん大きくなり、がれた石の転がる道を通過し、ロープにすがって一枚岩をクリアして、林道を見えて、ぽんと林道に降り立つ 4:26 梅花皮小屋より9.9km 。ザックをデポして空身で上の砂防ダムで待っている自転車のもとへ向かう。いくつかのパーティーとスライドする。

                      4:31 温身平のブナ林
4:52 上の砂防ダム着。自転車での快適オフロードダウンヒルも3分ほどで終了。ザックをピックアップして5:03 駐車地点着。総歩行距離18.6km。自転車を積んだりしている時に、ブヨ10匹ほどを車中に招き入れてしまう。フロントガラスでじたばたしているのを指で圧殺。しかし一匹にくるぶしの横をやられる。帰路、眠気に襲われることもなく7時前に無事帰宅。

石転びを登ったのは今回で2回目。前回は5月下旬だったと思う。雪が柔らかかったのでそれほどの怖さは感じなかった。しかしこのコース、今回よりも恐ろしくなることだってあるのだろう。自分にとっては今まで経験した中で最も怖かった。下りの梶川尾根も怖い所があったが、いい経験をさせてもらったと思う。

6/13 記

玄関にもどる