拝啓 ベッカム氏。
心ある、ささやかなライブ・レポをありがとう。
そうかあ、とうとう観たかあ…。
そんなに近かったんだ、PIT INN。
君に貰ったMDから今、「浅川マキ/都会に雨が降る頃」を聴いている。
港町。今夜は、呑もうか…。思いっきりね。久しぶりじゃないか。
この酒場。あの若い男、グラス片手にこっち来たぜ。あの女も来そうだぜ。
やっかいな会話になっちゃったりして…。
ブルース、歌ったよな?ボビー・ブラウン、ジョン・リー・フッカーだよなあ?
ローリング・ストーンズ、サティスファクション。
ルー・リードは相変わらずだよなあ…?いいよぉ。
港に佇み、出船、入り船、なにも変わらない。
俺はずっと、海を見ていた。
闇に包まれた港町。とある酒場の紫煙。
朴訥と語られる、酔っぱらいの独り言のような、詩(うた)。
新宿は、今もまだ、浅川マキの歌の揺りかごに揺られているんだね。
そう言えば。「ヨコハマメリー」は良かったかい?
それじゃ。また会う日まで。
〜歌舞伎役者のように顔を白く塗り、貴族のようなドレスに身を包んだ老婆が、
ひっそりと横浜の街角に立っていた。本名も年齢すらも明かさず、
戦後50年間、娼婦としての生き方を貫いたひとりの女。
かつて絶世の美人娼婦として名を馳せた、その人の気品ある立ち振る舞いは、
いつしか横浜の街の風景の一部ともなっていた。“ハマのメリーさん”人々は彼女をそう呼んだ。
[2006/07/19 02:24:47]