むっちへ。
さっき、メール見ました。
ビートルズとストーンズを演ってたんだって?
ちゃんと降りたい駅で降りれた?
でなきゃ、ホントに「涙の乗車券」になっちゃうもんな。
ピストルズやってたら、ウヶるけどね。
努力つったら、むっち、君の事を思い浮かべます。
専門ん時、俺やヒロが無邪気に素人絵で票を貰ったりしてた頃、
むっちは予備校的思考を捨てようともがいていたよね。
卒業制作で、むっちが最優秀賞を勝ち取ったのは
自他共に認めるに相応しいものだったと俺は思ってる。
そして俺はあの時、自分のCDを独力で作れた事を今も誇りに思ってるし、
今思えば、あの時に全てが始まったんだ。
自分の中で何かをぶっ壊した。
凄く気持ちはハイだったし、清々しかったね。
ダサ〜イ、クリエイタ−雑誌の取材なんかで、「物質的な文明がですねー。」
とか、言ってもまるっきし無駄だったわけだけど。
それでも、なんだか凄く何かに燃えていたような気がする。
何かを成し遂げた確かな手応えがあった。
誰の為でもないからね。自分の為にやっているわけだから。
だから俺は誰に何を言われようとも。
どれだけの時間がかかってしまおうとも。
必ず。新しい作品を君に届けます。
まだまだこれからだゼ。
友部正人/地下鉄の音楽
おかまいなしの音楽は プラットホームで生まれた
おかまいなしの音楽は 不機嫌な人の前で口笛を吹く
おかまいなしの音楽は どこでも無断でついてくる
だからおかまいなしの音楽は おかまいもされずに好かれてる
おかまいなしの暗闇に おかまいなしの人たちは住んでいる
おかまいなしの音楽を 奏でるために生きている
おかまいなしの音楽は 目には見えない踊り子たちだ
音楽を聞いた人たちは その姿を頭の中で想像する
おかまいなしというわけにもいかない人たちは
おかまいなしというわけにもいかない歌を口ずさむ
だけどおかまいなしというわけにもいかない歌は
どうしても愚痴みたいに聞こえてしまう
おかまいなしというわけにもいかない人たちも
だからおかまいなしの歌を口ずさむ
おかまいなしの人たちは忙しい
楽器を休ませる暇もない
おかまいなしの音楽を 僕も地下鉄の中で口ずさむ
すると十駅は五駅になって 五駅はマイナス一駅になる
そのままもう少し乗っていれば良かったなと 一日のうちのはみ出た部分に
音楽がいつまでも残っていて その人にいつまでも話し続ける
東京の空の下、多摩川は流れる
だけどニューヨークの地下には音楽が流れている
忙しく行き交う人たちが
ポケットの小銭を探して足を止める時
音楽はタクシーに乗り込むみたいに その人の心の中にもぐり込む
そして行き先を告げる間もなく走り出す
その人の束の間の乗客になる
[2004/05/01 22:20:10]