今夜は友部正人さんのライヴを観ました。
奇跡的に最前列の席が空いていたので、おじさんたちに混じり込んで
まるで防波堤のテトラポッドのように、
波打つ彼の音楽を全身に浴び、すっかりやられてしまいました。
素晴らしいの一言。僕なんかに言えるのはそれぐらい。
思えばこんなに成熟した音楽を、僕は今まで観た事がなかったのかもしれない。
今日、友部さんは少し風邪ぎみだったそうで、歌詞が途中で分からなくなって
始めからやり直したり、曲の合間に鼻をかんだりしていました。
「鼻水が出て来て、自分で自分の曲に感動してしてると思われたらいやだから。
でも、決して同情を誘っているわけじゃない。カッコ悪いなと思って下さい。」
そう言いながら、ずっと真正面を見つめ歌う友部さんはやはり、
ディランの姿を思い浮かべずにはいられず。とても温かみのある歌を歌っているのに、
何処か凄く醒めているような眼差しに、僕はずっと惹きつけられてしまいました。
この同じ夜に、ニューヨークでは彼の「愛について」という歌を有名にした、
矢野顕子さんがパブで27ドルのライヴをしているそうで、
彼の地でハイロウズは7ドル、自分は6ドルだったと笑って話していました。
ライヴの後、その場で買った著書とCDにサインを貰って、握手もしてしまいました。
「みやたさん…。お宮の宮に田んぼの田?」…緊張しました。
帰りの電車でその本を見ていたら、友部さんがあのランブリン・ジャック・エリオット
とノラ・ガスリー(ウディ・ガスリーの娘さん!)と一緒にいる写真が!
俺はこんな人と握手してしまったのか〜!!
(思えば、彼は僕と同じぐらいの歳の頃ジャック・エリオットと共演して、
終了後単身、渡米しているんですよね。)
彼はポエトリー・リーディングも盛んに行っていて、
NYのお正月ポエトリー・マラソン(※)に誘われた事もあるそうです。
(※アレン・ギンズバーグが創始し、現在、パティ・スミス、ジム・キャロル、
レニー・ケイ、リチャード・ヘル!という錚々たる顔ぶれが常連。)
そんなわけで…。やれやれ。
今日はもうなんだか気持ちがいっぱいです…。
しかしながら、モチベーションが刺激されたのは紛れもない事実。
観て良かった!
友部正人/何も思いつかないときの歌
戸棚の扉があいている 中から本がはみだしている
ドビュッシーのレコードがまわってる 君は台所で逆立ちしている
クランベリー・ジャムが煮えている 甘酸っぱい匂いがするだろう
ぼくは水を飲みながら 何も思いつかないときの歌を歌ってる
大きな絵がかかっている 小さなタイトルがついている
金曜日の夜の美術館 今夜はハロウィンのパレードだ
一番大きな絵のタイトルは 「何かを思いつくのを待っている」
ぼくも何かを思いつくのを待ちながら 何も思いつかないときの歌を歌ってる
頭の中にちらかっているのは どれもぼくのはき古した靴
インスピレーションのドアにかかっているのは 雨でちぢんだフランス帽子
愛の刑に服するために ウォークイン・クロゼットからやって来た
あれからぼくはもう何年も 何も思いつかないときの歌を歌ってる
アイルランド民謡を聞きながら 女はオパールをみがいてる
アイルランド民謡を聞きながら 男は小鳥に餌をやる
台所と出口を行き来するだけの自転車は 歴史の雨にぬれたことがない
あれから世界はもう何年も 何も思いつかないときの歌を歌ってる
[2004/06/07 00:43:34]