■レース関係者のモラル - 2

今回は前回に続いて、パドックの中での一幕を例に考えて行きましょう。

レース関係者に限らず、日本人の気質なのでしょうか、何故か業界人というものは自らが何か”特権階級”めいた存在であるという様な勘違いをしている方が多い様な気がします。
レーサーや関係者と言えども普通の人間、限度を越えた見栄自意識過剰は引いてしまいます。
もちろん、現在の地位を獲得するまでの努力や技術の積み重ねに対しての自信は有って然るべきでしょう。でも、度を越すと・・・。

さて、ここから例を挙げて話して行きましょう。

レースウィーク中、いつものようにパドックでは各エントラント達がそれぞれのピットで準備を進めていました。独特の緊張感が漂っています。
参加者はそれぞれに割り当てられたパスを所持し、各エントランスを通り認められたエリアに入場して行きます。
そしてココで、問題の光景が展開されることになります。

そこそこ年齢のいった謎の中年の男性が、パドックへのエントランス目指してづかづかと一直線に歩いて行きました。
そして・・・
オフィシャル:「パスチェックをお願いします。」
中年男性:「あぁ、俺はAの親だ。」
オフィシャル:「しかしパスを見せてもらわないと・・・」
中年男性:「何だって!?俺はあのAだぞ!?通せ!!」
オフィシャル:「それは出来ません・・・」
中年男性:「警備監督者は誰だ!!後で言っといてやる!!」
オフィシャル:「私ですが。」
中年男性:「!?・・・。」
オフィシャル:「何と言われても構いませんが、入場を認める訳には行きません。」

コレは困りましたね。
言葉こそ適当に脚色して名前は伏せていますが、コレは実際に有った事実を述べています。
レースというものは、主催者によりオーガナイズされており、この管理体制を崩す様な行動は慎まなければなりません。
有名人になると急に友人や親戚が増えるといったような事と似た様な現象とでもいいましょうか。
主催者がイベントを遂行する上で、親とか知人とか、そんなことは全く関係有りません。たとえそれがイベントの主催関係者統括団体の会長であっても例外ではありません。ソレを言ってしまえば、入場パスその物の存在意義がなくなってしまいますし、レースイベント自体が成り立たなくなってしまいます。
主催者はスポンサーやプロモーターを募り、採算を考えてイベントを運営しています。そこには純粋なビジネスが存在しています。
・・・である以上は、キチンとルールを守らなければならないのです。
たとえるなら、日本という社会で、法律を無視した行動は警察などにより取り締まられ、その違反によって法的措置をとることになります。
ここで置き換えるなら、【社会=レース業界】【日本=イベント】【法律=規約】【取り締まり=オフィシャルによる管理】【法的措置=入場などの制限】となるでしょうか。
そしてビジネスである以上、合理的に効率や利益を追求し、次へと繋げなければなりませんし、その中で社会貢献が重要になってきます。
上記の様な事を認めてしまっては、レースイベントその物の根幹を揺るがす様な事になりかねません。
個人の”エゴ”によりモータースポーツの未来が潰されてしまうかもしれないのです。
少々言葉が過激かも知れませんが、実際の日本社会と照らし合わせてみれば、決して言い過ぎではないことがご理解頂けると思います。
現在の日本のモータースポーツは、そこに利権がありビジネスが存在するから継続しているに過ぎない様にも見えます。

どの様な世界でも、表も有れば裏も有ります。ですが、必要以上の過剰表現は百害あって一利なしです。
しかし、この様な事実がまかり通っている事を認識して頂きたいと思います。
日本では未だにレーサーという存在に対して、暴走族と似た様な存在だと思っている方が多いです。
実際”走り屋”と称して公道を走り回っていた人間が、暴走族の延長線上でレーサーをしている輩が多々存在しています。
同じ車好きを否定はしませんが、”郷に入っては郷に従え”です。 レースという世界は全くの別物です。
貴族のスポーツとして、紳士の国で発祥したモータースポーツ。紳士としてのなり振る舞いやモラル。だからソレを真似ろと言う訳では有りませんが、日本的に言うなら礼儀や常識でしょうか・・・そして一番大切なのが、”人間性”です。それを無くして次は無いでしょう。
それに反している人間が多いから、文化として認められていないというのも一つの原因なのではないのでしょうか?

先ずは自分から・・・そこから始めてみましょう。


余談ですが、皆さんも考えてみて下さい。
とあるイベントの際、FIA(国際自動車連盟)の会長が訪れました。
そしてその会長はパスも持たずに関係者用のエントランスを通過しようとしました。
そこで警備担当者はその会長に対し、あろうことか入場を拒否してしまいました。
案の定、後に会長の側近がその警備担当者の元へ訪れて来ました・・・。

さて、この後どうなったと思いますか??
それでは今回はこの辺で・・・。



2005年10月1日 (土曜日)

 






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