19池田侯爵家(旧鳥取藩主)
因州池田侯爵家御蔵品入札 大正8年6月2日 東京美術倶楽部
旧鳥取藩主池田家は、岡山池田家の分家。豊臣秀吉、徳川家康に仕えた池田輝政と徳川家康の娘督姫の間に生まれた忠雄の系統が藩主を務めたため、外様大名でありながら、江戸幕府から、松平姓、葵紋を許され、親藩に準じる待遇を受けた。
この入札の世話人も高橋箒庵である。入札時の当主池田仲博は、水戸出身の徳川慶喜の5男。その縁から、水戸徳川家の入札直後の大正7年10月25日、水戸家の家令手塚任を介して、箒庵に池田家道具調査の依頼が寄せられ、以後、精力的に入札の準備にあたった。また、箒庵は、『東都茶会記』大正8年5月26日付「名物絵巻物」で、この入札の中で特に注目された飛騨守惟久筆「後三年合戦絵巻」(現、東京国立博物館)、狩野元信及びその工房の作品と推定されている「酒顛童子絵巻」(現、サントリー美術館)などを紹介している。
ただ、この売立で、最高額で落札されたのは、男爵松平斉光(旧津山藩主松平家の分家)の出品による尾形光琳筆「八橋図屏風」(現、メトロポリタン美術館)である。箒庵は、大正7年4月18日の松平男爵家入札の世話人を務めた縁で、この出品を取り持ったようである。
池田家出品の中では、尾形光琳筆「太公望図」(現、京都国立博物館)、「酒顛童子絵巻」などが高額で落札され、総売上額は1,050,000円に及んだ。
なお、「後三年合戦絵巻」は、池田家、箒庵等の判断で親引にされた。