29徳川伯爵家(田安徳川家)

徳川家御所蔵品入札 大正12年4月9日 東京美術倶楽部
徳川田安家御蔵品入札 昭和13年4月18日 東京美術倶楽部

 田安徳川家は、江戸時代の徳川家御三卿の一家で、明治・大証・昭和前期の当主は、大正天皇の侍従長を務めた徳川達孝である。
 田安徳川家は、上記の2度にわたって、入札会を開いている。いずれも、同家の財政問題の解決を意図したものと想像される。特に、金融恐慌の余波を受けた十五銀行(華族の資産を出資金として、明治10年に開業した銀行。俗に「華族銀行」と称された)の破綻後、達孝は自らの邸宅を処分し、実兄の徳川宗家当主徳川家達の許に身を寄せる等の苦境にあった。昭和13年の入札会は、その経済的苦境に対応するものであった。
 大正12年の売立では、茶器を中心とした出品で総売上額約263,000円、昭和13年の売立では、書画を中心とした出品で総売上額約124,000円という結果であった。