66島徳蔵

86(島徳蔵) 昭和9年11月29日 大阪美術倶楽部

 島徳蔵は、大阪北浜の株式相場師で、戦前における金融成金の典型として知られた人物である。大正5年から15年まで大阪株式取引所の理事長を努め、大阪金融界の最有力者として活躍したが、昭和2年から乗り出した阪神電鉄の買収劇に失敗したことなどをきっかけに没落していった。
 株式取引の利益を以て、大正から・昭和初期の入札会で、多くの美術作品の収集を行ない、豊富なコレクションを形成したが、没落の過程の中で、そのコレクションを手放したのが、この売立である。なお、売立目録には、昭和8年に取り付け騒ぎを起こし破綻した愛国貯金銀行整理に、島より提供された私財処分が目的とした入札会である旨記されているが、同行の破綻の背後には、同行の経営権を支配した島が、不正融資などの犯罪行為があり、これにより島は、刑事訴追されている。
 出品された作品では、佐竹侯爵家、上野与吉旧蔵の雪村「風涛図」(現、野村美術館)が60,000円、直翁「六祖挟担図」(現、大東急記念文庫)が28,900円、「源重之像(佐竹本三十六歌仙)」(現、個人蔵)が21,900円など、各分野にわたって高額で落札された作品が多かった。