5伊達伯爵家(旧仙台藩主)

仙台伊達家御蔵品入札 大正5年5月16日 美術倶楽部
第二回仙台伊達家御蔵品入札 大正5年7月5日 美術倶楽部

 伊達政宗以来の家系を誇る旧仙台藩主。江戸時代の大大名家であるとともに、歴代藩主の中には、4代伊達綱村をはじめ、茶道に精通したものも存在したため、旧大名家の中でも、多くの美術作品・文化財を所有していたことで知られる。
 伊達家の家臣の家に生まれ、明治後は第2代日本銀行総裁、東京府知事などを歴任し、実業家としても活躍した富田鐡之助が、伊達家に売立を建言し、世話人として大日本麦酒の社長を務めた三井系財界人で、数寄者として知られた馬越恭平を推したことで、この売立は、実現した。
 仙台伊達家という旧大大名の所蔵品の入札会というだけではなく、第1回入札に際しては、売立目録12,000冊を刷り、1冊1枚の下見入場券を付し、入場券を持たないものは下見会場への入場を許さなかったことなどが話題を呼んだ。
 第1回の出品作品の中では、「岩城文琳茶入」(現、藤田美術館)が56,000円、狩野正信筆「周茂叔愛蓮図」(現、九州国立博物館)が28,889円などで落札され、総落札額は1,000,000円を超えた。第2回の出品作品では、「福原茄子茶入」が57,000円、伝狩野元信筆「伯牙弾琴図」(現、バーク・コレクション)が29,000円で落札され、2回合わせて約1,500,000円の売り上げを記録した。
 この2回の入札は、旧大大名家が、自らの家名を明らかにした上で実施された最初のもので、これが大成功を収めたことが、翌年の秋元子爵家、赤星家、佐竹侯爵家の入札(いわゆる「入札三尊」)につながった点で注目される。