10佐竹侯爵家(旧秋田藩主)
佐竹侯爵家御蔵器入札 大正6年11月5日 東京美術倶楽部
佐竹侯爵家は、旧秋田藩主。大正6年「入札三尊」の最後を飾るこの入札は、佐竹家の財産整理の一環として、同家家令大縄久雄が、佐竹家の同意のもと企画し、益田鈍翁、高橋箒庵を世話人として開催された。箒庵は『東都茶会記』大正6年10月26日付「信実三十六歌仙」で、この入札の目玉であった、いわゆる佐竹本「三十六歌仙絵巻」を紹介している
この作品については、最初400,000円の止値(最低落札価格)を佐竹家では希望していたが、世話人等の相談の結果、350,000円に引き下げ、それでも単独で落札するものがなく、札元全員の連合で、353,000円で落札した。翌年、この作品は、当時船成金として威勢をふるっていた山本唯三郎が買い取ったが、第一次大戦終了後の不況のため、間もなく山本も手放さざるを得ず、大正8年には、益田鈍翁の主導のもと、絵巻を切断して分譲され、各歌仙軸装とされたことはよく知られている。
また、雪村「風涛図」は、大阪北浜で相場師として活躍した上野与吉が落札したが、上野はこの入札で、名物「山桜大海」茶入もあわせて落札している。