32松平子爵家(旧西条藩主)

旧伊予西条藩主子爵松平家御蔵器入札 大正13年6月9日 京都美術倶楽部

 旧西条藩主松平家は、初代藩主松平頼純が紀伊徳川家初代の徳川頼宜の3男にあたる紀伊家の分家である。2代藩主頼致は、紀伊家の徳川吉宗が、8代将軍となったため、紀伊家を相続し、徳川宗直と名乗った。その後も、5代藩主が紀州家を相続し、徳川治定となるなど、紀伊家との交流が盛んであった。
 牧谿「漁村夕照図」(現、根津美術館)が出品されているにもかかわらず、これが親引になったためか、また京都で開催された入札のためか、当時大きな注目を集めることはなかった。
 これは、大正12年9月1日に、関東大震災が発生し、関東方面での入札会の開催ができなくなったこと、大震災後の混乱した経済、世相の中で、入札会による美術品等の購入に対する意欲が、従来のコレクター間で減退したことが影響したことによるものと思われる。