28武藤山治

武藤山治氏御所蔵品入札 大正12年1月21日 大阪美術倶楽部

 武藤山治は、岐阜県出身の財界人、政治家。慶応義塾を経て三井銀行入社。その後鐘淵紡績において、社長として経営の実権を握り、同社を、日本を代表する紡績会社として育て上げた。福利厚生を重視した経営者として、日本の労働者の待遇改善の先駆者としても知られている。
 三井系財界人の多くと同様、武藤も美術作品のコレクションに意欲を示したが、その主たる関心は、近世の日本絵画にあり、特に与謝蕪村のコレクターとして知られている。
 武藤は、大正12年4月、政界浄化と政治改革を目指して実業同志会を結成、翌年の衆議院総選挙で当選した。この入札の目録の冒頭には、「今回小生の多年致蒐集候先の書画古器物類を入札に附し其売上金の全部を小生の目下従事致居候国民覚醒運動に投ずることに致候間(以下略)」という武藤の挨拶文があり、新党結成のための政治資金獲得のために開催された入札会であることが分かる。
 蕪村を中心とした近世絵画を中心とした出品で、約350,000円の総売上額となった。