41村井吉兵衛

村井家書画什器入札 昭和2年9月26日 東京美術倶楽部

 村井吉兵衛は、京都出身の実業家。明治時代にタバコの製造、販売で財をなし「タバコ王」と称されたが、明治37年、日露戦争の戦費調達のため、「煙草専売法」が施行され、タバコ事業が国営化されると、その保証金を、村井銀行を中核とした各種事業に投資し、いわゆる村井財閥を形成した。京都東山に所在し、近代京都を代表する建築物である長楽館は、村井吉兵衛の京都別邸として建てられたものである。
 この入札は、昭和2年3月に発生した金融恐慌により村井銀行が倒産したため、その清算処理の一環として実施されたものである。吉兵衛もこの前年に没しており、村井財閥は、これを機に、一気にその財界での地位を失うこととなった。
 入札では、相阿弥「四季山水図屏風」(現、メトロポリタン美術館)が30,000円で落札され、総落札額は、300,000円余となった。