15徳川侯爵家(水戸徳川家)

徳川侯爵家御蔵品入札 大正7年10月21日 東京美術倶楽部
徳川侯爵家蔵品伽藍洞蔵品入札 大正15年11月8日 東京美術倶楽部

 大正7年の水戸徳川家の入札は、徳川御三家の入札会の劈頭を飾るもので、茶道関係を中心とした出品作も大いに注目された。この入札の世話人も、やはり高橋箒庵。ただ、水戸藩士の家系に生まれた箒庵にとっては、旧主家の入札会であり、その成功に尽力した。『東都茶会記』大正7年6月6日付「水戸殿御所持」では、調査作品を紹介、同年10月16日付「天下の名香」では、出品作品の香木などを紹介している。
 水戸家の売立の理由は、先述のとおり、小石川の邸宅の整理と家政安定のための基金設立であることを箒庵は指摘している。
 「圜悟克勤墨蹟」の142,000円、「井戸茶碗 銘老僧」の91,000円、「曜変天目茶碗」(現、藤田美術館)の53,800円などが高額落札品で、総売上約1,180,000円を記録した。
 大正15年の入札会は、水戸徳川家、伽藍洞の合同で開催されているが、この伽藍洞は、高橋箒庵の号の一つである。大正7年の入札の際、売却されなかった作品に、高橋箒庵の蔵品を交えて実施されたものである。 
 ただ、出品作品の中で注目を集めたのは箒庵の作品であった。水戸家伝来品の中で売立に供された優品は、大正7年の入札に集中していたと思われる。