56小西新右衛門
某家所蔵品入札目録 昭和8年1月24日 大阪美術倶楽部
小西新右衛門家は、摂津伊丹の銘酒「白雪」で知られる江戸時代以来の大造酒家である。明治以降は、酒造業を中心に、銀行、鉄道など、北摂地域の近代化のための諸産業にも投資し、昭和8年の入札時の当主、12代新右衛門は、日本投資貯蓄銀行の頭取を務めていた。また、この12代新右衛門は、茶人としてもその名を知られた。
金融恐慌後の不況の長期化の中で、小西家は、酒造・販売業の合理化、組織化を進めた。そして、昭和8年1月には西宮と魚崎の酒造部門を継承する小西灘酒造株式会社、同5月には伊丹の酒造部門を継承する小西酒造株式会社を設立している。入札会は、これらの事業資金獲得の方法として企図されたものと思われる。
この売立における高額落札品には、茶器類が多かったが、絵画では、伊藤若冲筆「菜蟲譜」(現、佐野市立吉澤記念美術館)が5,600円のほか、明兆筆「大道一以像」(現、奈良国立博物館)、如拙筆「王羲之書扇図」(現、京都国立博物館)など良質な作品が出品されている。総落札額は530,000円を超えた。