71岸上善五郎

北摂岸上家並某家蔵品大入札会展覧 昭和11年2月10日 大阪美術倶楽部

 岸上家は、江戸時代後期以来、摂津池田において酒造業で栄えた旧家である。明治以降、北摂地域の銀行や鉄道等の設立に関わり、北摂地域を代表する財界人に数えられた。また、文化面では、稲束司馬太郎・猛らが設立した池田史談会の出版事業に出資するなど、同地域の文化振興にも重要な役割を果たした。
 この売立では、与謝蕪村、田能村竹田等の文人画、円山応挙、呉春、森狙仙ら写生派の作品を中心に、江戸時代各派の絵画作品が多数出品され、総売上約700,000円に達した。
 なお、この売立には、大正7年の水戸徳川家の売立に出品され、その後、大阪北浜の相場師石井捨七が入手した「水戸文琳茶入」なども出品されるなど、大正から昭和初期に行なわれた他の入札会に出品された作品も多く含まれ、これらのうち、どれだけの作品が岸上家の所蔵品であったかについては、判別しがたい。