50勝田銀次郎

神戸勝田家所蔵品目録 昭和4年2月5日 大阪美術倶楽部

 勝田銀次郎は、内田信也、山下亀三郎とならんで、大正期の成金時代に、船成金三人男の一人として知られた人物。貿易業を発展させた勝田汽船を設立し、神戸を拠点に、第一次大戦時の船舶需要に、古船買収、船舶の借り上げなどで応え、巨大な富を築いた。この富の一部を、大正6年のいわゆる「入札三尊」の機会などに美術品等の購入に費やし、大正前半期の大入札会時代における最大の買い手の1人となった。
 しかし、第一次大戦終了後の戦後不況の中、拡大しすぎた事業は危機を迎え、さらに金融恐慌が襲いかかったため、事業整理の一環として、蒐集品の売立を実施したものである。勝田はのちに、神戸市長となった。
 勝田は、特に赤星家の入札で多くの名品を入手していたが、この売立では、それらの赤星家旧蔵品が多数出品され、伝狩野元信筆「雲龍図」が61,800円、「青磁桔梗香合」が59,100円、「普賢十羅刹女像」(現、奈良国立博物館)が17,960円などで落札された。総落札額は、750,000円を超えた。