42神戸挙一
神戸鹿峰翁遺愛品展覧図録 昭和2年10月24日 東京美術倶楽部
神戸挙一は、甲州出身の財界人。同じ甲州出身の財界人若尾逸平に認められ、東京電灯の社長を務め、電力会社としての同社の基礎を築いた。
その一方、文人書画のコレクターとして知られており、頼山陽、田能村竹田らの秀作を数多く収蔵していた。中でも、竹田の「亦復一楽帖」(現、寧楽美術館)は、その作品の質とともに、大正・昭和初期におけるたびたびの移動を通じて、世評をさらった。
この入札は、前年に没した神戸の遺品整理として行なわれたものであるが、折からの金融不況の中で、同家の家政を救済する意味合いがあったのかもしれない。なお、図録が、文人書画を主体とする出品であることに配慮して、唐本仕立てであることについて、渡辺虹衣『骨董太平記』は、数ある売立目録の中でも「異彩を放った」ものとしている。
「亦復一楽帖」が139,000円で落札されるなど、総売上は1,005,000円を超え、文人書画主体の入札会としては大きな成功を収めた。