11稲葉子爵家(旧淀藩主)

稲葉子爵家平岡家御蔵品入札 大正7年3月18日 東京美術倶楽部

 稲葉子爵家は、旧淀藩主。稲葉正成と春日局の間に生まれた稲葉正勝をはじめ、江戸時代には、5人の老中を輩出した譜代大名の名門である。
 稲葉子爵家の売立は、前々年、前年の伊達伯爵家、「入札三尊」などの盛会の流れを引くものといえる。この入札でも、高橋箒庵が世話人を務めた。箒庵は『東都茶会記』大正7年3月1日付「曜変天目」で、この入札の中で特に注目された「曜変天目茶碗」(現、静嘉堂文庫美術館)と、その入札を紹介している。
 「曜変天目茶碗」については、公式の下見会に先立つ2月23日には、藤田平太郎、岩原謙三、団琢磨、根津嘉一郎、加藤正義、三井八郎次郎らに、箒庵の自宅で内見が催された(『万象録』)。「曜変天目茶碗」は167,000円で、横浜の生糸貿易商小野家が落札、その後、同家より、三菱の岩崎家に譲渡された。