30早川千吉郎
早川家御所蔵品入札 大正12年5月14日 東京美術倶楽部
早川千吉郎は、石川県出身。東京帝国大学卒業後、大蔵省、日本銀行を経て、三井銀行に入社。三井財閥の枢要の地位を占めたのち、大正10年、南満州鉄道(満鉄)社長となるが、その翌年没した。
早川の所蔵品の多くは、日本絵画であった。多くの三井系財界人のように、数寄者として茶器の蒐集に努め、茶会等の交流に参加するということには、積極的ではなかったが、高橋箒庵の茶会記等によると、このような数寄者の交流の機会にも、時折、参加している。
売立は、早川の没後、その遺品整理として行なわれた。最高落札額は、雪舟筆「山水図」(現、個人蔵)の145,900円であったが、それに次いで、伊藤若冲「雪中遊禽図」(現、個人蔵)が76,000円で落札されたのが目を引く。戦前における若冲の評価は、作品によっては必ずしも低いものでなかったことが判る事例として注目される。総落札額は1,400,000円に達した。