76原田二郎

もくろく(原田積善会) 昭和18年5月25日 原田積善会(東京美術会館出張)

 原田二郎は、明治・大正期、鴻池家の番頭役を務め、鴻池銀行の近代化に貢献した財界人である。子のなかった原田は、大正5年、家財を投じて原田積善会を設立、昭和5年に没するまで、社会福祉事業に専心した。
 この売立は、原田が積善会に寄付したコレクションを売り立てたもので、出品作品の中に鴻池家伝来の注記のあるものが多いのは、同家から原田にたびたび美術作品等の譲渡が行われていたことを示している。
 太平洋戦争開戦後の売立で、戦時中の売立に対する世評は決して芳しいものではないと思われる時期、しかも売買の際の物品税が落札額の6割という悪条件下であるにも拘らず、「達磨図」(現、和泉市久保惣記念美術館)など出品作品の優秀さ、社会事業への貢献のための売立という目的のためか、この時期としては、高額な落札が相次いだ。
 戦前の大売立時代の最後を飾る売立といえる。