61蜂須賀侯爵家(旧徳島藩主)

侯爵蜂須賀家御蔵品入札 昭和8年10月23日 東京美術倶楽部

 旧阿波徳島藩主である蜂須賀侯爵家は、江戸時代以来、多数の美術品を収蔵していた大名家である。明治以降、「源氏物語絵巻」(現、五島美術館)、「紫式部日記絵巻」(現、個人蔵)など、多くの作品が個別に売却され、すでに同家から流出していたが、この入札会によって、これまで同家に伝わっていた主要な美術作品等が流出することとなった。
 入札会当時の当主は、この入札の年、前年に亡くなった父蜂須賀正韶の跡を継ぎ侯爵を襲ったばかりの正氏であった。蜂須賀家が北海道で経営する雨竜農場において長年続いた小作争議等による借財や、正氏の様々な「道楽」による借財等が重なって、この売立に繋がったと、小田部雄次氏は指摘している(『家宝の行方』)。正氏は、鳥類学者としてその名を残す一方、派手な女性関係や、飛行機操縦などの趣味で、巨額な借財を作り、また戦時中には、闇取引に関わる経済犯とされたこともあり、昭和20年7月には、爵位を返上した。
 売立では、「紫式部日記絵巻」(現、個人蔵)が239,000円、「西行物語絵巻」(現、徳川美術館)が139,500円、伝本阿弥光悦作「子日蒔絵棚」(現、東京国立博物館)が58,000円、「豊国祭礼図」屏風(現、徳川美術館)が36,900円などで落札され、総売上額は1,160,000円近くに及んだ。