51松平伯爵家(旧福井藩主)

旧越前福井藩主松平侯爵家御蔵品入札目録 昭和4年2月12日 東京美術倶楽部

 旧福井藩主松平家は、江戸時代の親藩大名の中でも御三家に次ぐ家格を誇る。幕末期には開明派大名として、幕府政事総裁職に就き、維新直後には、民部卿、大蔵卿に就いた松平慶永(春嶽)を輩出した家である。同家の売立も、金融恐慌に端を発する十五銀行の破綻で、保有資産の回復を図ろうということが目的であったかも知れない。
 住吉具慶筆「徒然草画帖」(現、東京国立博物館)など、今日の日本美術史的な価値観からすると、注目すべき作品も存在した売立であったが、総売上額は300,000円余に過ぎなかった。金融恐慌後の不況の深刻化による買い手側の減少に加え、間近に控えた明治・大正期の大コレクター藤田家の入札などに資金を投入したいという思惑を有する買い手も多かったことが影響したのではなかろうか。