46毘沙門堂
山科毘沙門堂什器入札目録 昭和3年9月10日 京都美術倶楽部
京都山科に所在する毘沙門堂は、天台宗の門跡寺院であり、江戸時代の門跡の中には、茶道の嗜みが深いものもいたことで、仏教美術、茶器などの優れたコレクションを有していた。
しかし、明治以降、財政状況の悪化をきたしたようで、すでに、伝来の美術品等の一部は内々で売却されていた。この売立もそのような寺院経済の状況の中で企図されたものと思われる。
この売立で最も注目されたのが、弘法大師「金剛般若波羅経解題」である。当時の数寄者中の大立者で、弘法大師を敬愛して大師会を始めた益田鈍翁が、この作品の購入を熱望した。入札の結果、その願いが叶って、鈍翁は、33,900円でこれを落札することができた。入手後の鈍翁は、これに上質の表装を加え、昭和3年12月7日、小田原の自邸においてに披露の茶会を行なったという(『近世道具移動史』、『昭和茶道記』昭和3年12月7日付「大師礼讃」)。