中つ国とセーター・その1


中つ国に平和が訪れ、エルフ達が西へ渡り始めた頃、いずれ来るであろう別れに際して、レゴラスはギムリに「生涯の友情」を誓う贈り物をしました。


「ギムリ・・これを私たちの友情の証だと思って大切にしてほしい・・」
レゴラスはそう言って、月夜の晩にそのセーターをギムリに手渡しました。

それはヒスラインと同じ材料を駆使した糸で、レゴラスが一目、一目、愛情を込めて編んだセーターで、
ギムリのたくましい体にぴったりフィットし、どんな動きにもムダのない、美しいシルエットをかもし出していました。


ギムリ
「おお!なんて繊細な作りなんだ!わたしにぴったりだ!」

袖を通し、感激するギムリ。
すると、月夜に照らされたセーターの胸の部分に半欠けハートの形が現れるではありませんか!

「イシルディン!?レゴラス・・こっ・・この浮き上がるマークはひょっとして・・」


「ギムリ・・ほら!」

驚くギムリにやさしい笑顔でそう言うと、上着を脱いだレゴラスは、色は違うものの、同じように月の光を浴びて浮かび上がる
イシルディンを編みこんだ半欠けハート模様つきのセーターを着ていました。

ギムリ
「このしるしを合わせると・・合わせると・・・・レゴラス・・!?」

レゴラス
「その先は言わないでくれ・・ギムリ。マークを合わせるとこう・・・なるのさ・・」





夜は二人の周りで、静かに、すぎてゆきました。
月の光に照らされて浮かび上がったハートは、その夜、離れることはありませんでした・・
((→o←)ゞあっちゃ〜!)

一目見てもペアとはわからないセーター・・。
それは、レゴラスからの愛の証でもありました・・
(←おい!「友情」じゃなかったのか??・・笑)
そして、その後ギムリはこの贈り物を片時も手放さなかったと言うことです。


中つ国とセーター・その2


フロド
「ほら!サム、見てくれよ。似合うかい?」

サム
「フロドのだんな・・ミスリルより似合ってます。特にその模様・・イカシてますゼ!」

フロドは、ホビット庄のイメージを見立てた、深い、そして淡い緑に彩られた、アラゴルンの顔が編みこまれた(注釈:アラン模様という?)
そのセーターがとてもお気に入りでした。

「・・サム、お前にそう言ってもらえてうれしいよ・・」
フロドは満足げにアラゴルンの顔(アラン模様?)をなでなでするのでありました(笑)

「フロドのだんな?だんな??」

サムは一心不乱にアラゴルン模様をなでるフロドを、いぶかしげに見つめ、悲しそうにつぶやくのでした。

「・・だんな・・なにも言わなくてもあっしにはすべてお見通しですだ。ダンナはこのあっしより、アラゴルンがいいって言うんですね・・?
フロドのだんな・・アラゴルンにはもう、決ったお人がいらっしゃるだよ・・。」


中つ国とセーター・その3


ロスロリアンの森の近くで、二人のホビットの会話を耳にしたハルディアは驚いた目つきで、そちらの方に目をやりました。
「アラゴルン模様・・?」

二人に気付かれないようにそちらを見入ると、うっとりした目つきで胸をさするホビットが着てるセーターにはなんと、アラゴルンの顔が
編み込まれてるではありませんか!
「ア・・アラゴルン模様!」

そして、もう片方のホビットの言葉が、ハルディアの胸に深く突き刺さりました。

「アラゴルンにはもう、決ったお人がいらっしゃるだよ・・。」

・・・・・
レゴラスが、密かにヒスラインを使って密かにギムリにセーターを編んだという噂は、ロスロリアンにも届いていました。
月の光で浮かび上がる愛のしるしに、二人の仲がよりいっそう深まったという話を耳にした時、ハルディアは決心しました。
「わたしも、あの方におそろいのセーターをプレゼントしよう・・」
ハルディアは、野伏の馳夫時代から密かにアラゴルンに想いを寄せていました。

そして、一人、タラン(フレト)にこもり、レゴラスにも負けないようなセーターを完成させました。

セーターは小さく折りたたみ、マルローンの葉で包み、一見しただけでは「レンバス」にしか見えないように工夫して、
エルロンドの使いでガラドリエルの元へ来た彼に、「帰りの行糧に」と手渡したのでした。

その後、その彼からは何の連絡もないまま日々はすぎてゆきました。
そんな時、目にしたホビットのセーターに、痛く動揺したハルディア・・
「あの者も、あの方に想いを寄せているのか!?」

そしてサムの言葉・・
「アラゴルンにはもう、決ったお人がいらっしゃるだよ・・。」

打ちのめされ、崩れそうになる自分をを必死で押さえ、ハルディアはおろそいで作ったセーターを着込んで倦み疲れる日々を送っていました。

・・・・・
オークどもがウルク=ハイと手を組んで暴れ出し、ヘルム峡谷へ押し寄せているという情報が入ったのはちょうどそんな時でした。
ロスロリアンからも応援部隊が借り出されることになり、ハルディアはエルフ軍を率いてヘルムへ向うことになりました。

エルフの角笛とともに城内に進入したハルディアは、アラゴルンの思いがけない出迎えにひどく驚き、うろたえました。
「Mae govannen, Haldir!」(Welcome, Haldir!)

両手を広げ、歓迎するアラゴルンの、その鎧の下に見え隠れするのはなんと、ハルディアのセーターではありませんか!
アラゴルンは、ハルディアをその手で抱くと、耳元でやさしく「メルロン」とつぶやきました。



実は、ハルディアが彼に贈ったセーターにはエルフの木の模様の脇に小さくエルフ語でこう編み込まれていました。
「ゴンドールの城主、アラゴルン、唱えよ、友、そして愛せ・・・」

「メルロン・・そして・・愛・・そなたを愛・・」
呆然としていたハルディアは、我に返ると、そう繰り返すアラゴルンの言葉をさえぎるかのように、彼の肩を抱き返したのでした。
至福の笑顔を讃えながら・・・




中つ国とセーター・その4


西方へ向う船に乗るはずだった娘が戻ってきた。
この地に留まるという彼女の未来には「死の悲しみ」しか見えないから・・
必死で仲間のいる国に送り出そうとした父親の思いも虚しく、娘アルウェンは戻ってきた・・。

日に日にエルダールの力を失い、弱る娘・・。
本を持つ力も失い、思わず足元へ落としてしまうアルウェン・・
その、冷たい手を握りしめ、悲しみに浸る父、エルロンド・・

「アルウェン・・父への愛はもうなくなったのか??」

「いいえ・・お父様・・でも・・」

涙でその先が続かないアルウェンの、その冷たくなった手に、エルロンドはそっとそれをハメました。

「これはわたしが丹精込めて作ったものだ・・。
これ以上、この手が冷たくならないように・・」


「お父様・・!こっ、これは・・・( ̄〇 ̄;)」

「あぁ・・初めてだったんで、編み目の足りないところは端っこで適当にごまかしてあるが・・
わたしの力作だ・・(v^-゜)」

それは、エルロンドの「愛」のこもった手袋でした。

「・・お父様・・『編み目』が足りないと言うより・・『指の数』が足りないような気がするんですが・・もしかしてボケた・・?(〃゚д゚;A 」

・・しかし、父の、悲しげな瞳を前に、その言葉を口にできないアルウェン・・

4本指の手袋を、巧妙に小指を折り曲げ、さりげなく装うアルウェンは、
「エルフ(オヤジ)の時代は終わったな・・・・」
と、心から感じたのでありました(笑)


中つ国とセーター・その5


ウルモは水の王である。
彼は独り身である。

彼は全アルダを片時も忘れることなく、陸を歩くことを好まず、はらから(同胞)たちのやり方に倣って(ならって)
肉体を着用することは、滅多にありませんでした。

<新版・シルマリルの物語より>


・・「海の王」・・彼、ウルモはエルフたちにそう呼ばれていました。
そして、陸地に打ち寄せる山のような大波とともに現われる彼に、エルフたちは強い恐怖を感じていました。

あるとき、滅多にその姿を見せなかった「海の王」がしばしばその姿を見せるようになりました。
彼は、姿を現すときはきまって上半身しか見せなかったのですが、それでもエルフたちはそのたびに、そこはかとない恐ろしさを感じていました。

しかし、賢いエルフたちは「海の王」の幾多の出現に「これは何か尊い理由があるのかもしれない・・」と感じるようになりました。

実はウルモはその特性を駆使して中つ国の水路を行き来しつつ、ウルムーリという角笛を奏で、
知らぬうちにエルフ達に「海への憧れ」を抱かせるよう、洗脳していたのでした。
なのでエルフたちは「海の王」に恐怖を感じていたのですが、ウルモの姿を見ると「尊い光」に導かれたくなるような気持ちになりました。

この角笛に深く魅了された一人の勇敢なテレリの若者は、「海の王」に会ってみたくなりました。
恐怖の中にもウルモの角笛の旋律に侵されて海の虜になったテレリの若者は、同族の反対を押し切って、浜で「海の王」が現われるのを待っていました。


ざっぱ〜〜〜ん!!


大きな波とともにテレリの若者の前に姿を現した「海の王」・・
恐怖に捕らわれた若エルフは思わず盾を構え、剣を抜いて身構えました。

そんな彼を黙って見下ろす「海の王」・・
あまりの恐ろしさに微動だにできなくなった彼を見たウルモは、やさしく微笑んで言いました。

「何か隠すものない?」



テレリの若者は一瞬戸惑い、そして答えました。

「か・・隠すものですか?」

「そうだ・・何か隠すものを貸してくれ・・このままでは海から出れないのだよ・・」

「・・??・・それではこの盾はいかがでしょう?」
意味が分からないまま、盾を差し出すテレリのエルフ・・



「・・そんなものでは小さすぎる・・。もっと大きいものでなければ隠しきれぬのだ・・」

「では、わたしのマントはいかがでしょう?これは我一族が編み出した特殊な方法で織った、軽くて肌触りがよく、
どんな形にもやさしくフィットする優れものでございます・・この盾よりは幅もたっぷりあります・・」

ウルモは、身の回りにある丈の長い海草を集め、それをつないで1本の綱を作り、若エルフの差し出したマントを腰の一部にあてがうと、
その上から海草の綱をクルリと巻きつけました。

「これで立てる・・・・・」

そう言うと、ウルモは再び

ざっぱ〜〜〜ん!!

と、大波とともに立ち上がり、初めてその全身をエルフの前に晒したでした。

「うむ・・なかなかの肌触りだ。つっぱらぬし、どんな動きにもついてきそうだ・・・
しかしもう少し大きくないとアレだな・・・・
はみ○ンに・・・・・ごにょごにょ・・




・・・・・( ̄〇 ̄;)
テレリの若エルフはその
は○チンの、あまりの荘厳さに、しばし放心状態になったということです。


ウルモはその後、陸を歩く時はいつもこの格好をしたそうな。
はらから(同胞)たちのやり方に倣って(ならって)肉体を着用することは滅多にない彼は、服の着用にも無頓着でした。

そんなウルモに男たちは羨望の眼差しを向けましたが、女たちは彼を見るとなぜか顔を赤らめて逃げてゆくのでした。


ウルモは水の王である。
しかし彼は独り身である。

立派でありすぎるがゆえに独り身である・・・・らしい。

( ̄◇ ̄)ゞ


<ウルモの画像は「新版シルマリルの物語」より>


つづく・・・かもしれない(笑)

☆この物語(・・?)はKaliさまのBlogの手作り編に感化されて作りました。
(一部、投稿ネタに加筆してあります)


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