■千鶴ちゃんと愉快な狼たち・2■

 
「斎藤君はどうだね」
「斎藤さん・・・は、お優しいです。いつもさりげなく気遣ってくださいます」
意外だ。土方を尊敬しているらしい斎藤。いつも無表情にちかい顔つきで、何を考えているのかさっぱりわからぬ男である。
ただ、思い込みは激しいようで土方の実家の薬を信じすぎている。
真面目な男だ。たぶん、誰よりも千鶴の身に起こったことに関して興味がないのだろうとずっと近藤は思っていた。
どうも違ったようだ。先ほどの会話でも斎藤の名前が挙がっている。それほど千鶴にとって斎藤は身近な存在なのだろう。
近藤は、小さく唸った。
「どう優しいのかね?」
「たとえば、あったらいいなぁ。と、いうようなものを斎藤さんはくださるんです。不要ならば、捨てろ。なんておっしゃいますけど」
なるほど。意外にマメな男である。考えてみれば、斎藤は部下の面倒をみるのが上手い。生来、マメな性質なのかもしれぬ。


「平助は」
「平助君は、一緒にいて気が楽です」
(平助よ、異性として意識されておらんぞ)
千鶴を女の子として気に入っているようにしか見えない藤堂を気の毒に思った。
「平助君は、いつも面白いお話を持ってきてくれたり、私を元気づけようと色々話しかけてくださるんです」
「そうかそうか。では、原田君は」
「原田さんは・・・お優しくて、つい甘えたくなってしまいます。ほっ。と、するんです。でもすごく大人の男性なんだなって思って・・・その、たまに・・・な、なんでもないです!」
赤くなる。近藤は、心配になった。
流石色男。意識的なのか、無意識なのか。娘の心を騒がせているようである。だが、千鶴がほっとするということからわかるように原田は、原田なりに己の立場をわかっているようではあった。そうでなければ、千鶴が安心できるはずがない。この娘はまだまだ子どもなのだから。


「永倉君はどうだね?」
「永倉さんは、一緒にいてとても楽しいです。年の離れた兄がいたら、こうなのかなと思います。すごくかわいがってくださるんです」
たまに頭を撫でる手が力加減を間違って痛いですけど、とても嬉しいんです。と、千鶴は笑った。
ガサツなのは、予想通りではあったが永倉も意外だった。近藤の中で永倉が一番、千鶴にとって怖い人だと思っていたのだ。
なにせ、どこまでも果てしなくわかりやすいほどに彼は男だったからである。
「永倉君は兄のようか・・・で、では総司は」
一番の懸案に近藤は勇気をもって飛び込んだ。
「沖田さんは・・・かまってくださいます。普段はからかわれてばかりですけど、本当は・・・面倒見の・・・よい・・・方なのではないかと」
歯切れが悪い。やっぱりな・・・と、近藤はため息をついた。
「雪村君。いいんだ、わかっているよ。総司は君をからかってばかりなのだろう。斬るとか頻繁に言ってはいないかね? すまない、あれは図体ばかりで中身はまだまだ子どもなんだ。悪気はないんだ」
たぶん。
近藤が見る限り、逆に奇跡が起きたとしか思えないほど沖田は千鶴を気に入っている。だが、あれはなかなかに難しい子であることも近藤は承知していた。気にいった子を構い倒して最終的に嫌われるなんてことにならなければいいが。
これは、一度。自分がしっかりと女子には優しくと諭さねばなるまい。



「だ、大丈夫です!」
近藤が、思わず渋い顔になったせいだろう。千鶴は慌てて沖田さんはいい人だってわかってますと、コクコク頷いた。
「すまないな、雪村君。総司はああいう子でな・・・。日頃から女子には優しくするものだと言ってきかせているのだが、困ったものだ。ところで、雪村君。トシについてはどんな印象をもっているのかね?」
「えっと、土方さんのことですよね?」
千鶴は考え込んだ。
(君にとっては、トシは厳しい人なのだろうな)
出会いが出会いだし、ここに住まうようになって表面上、千鶴への譲歩は一切ない。千鶴に贈った品は実用品だったし、彼女を心配するそぶりすらない。その裏で、浪士が闊歩する京の町に千鶴を連れだすのは危険すぎると心配のあまり外出の許可を出せずにいる。見張りをつけているのも、最近ではすっかり意味がかわって、女人故の別の心配ごとのためだということ。近藤の前では千鶴に関しては本音がダダ漏れなのである。
ただ、千鶴の前にはその様子を一切見せない。損な性分だ、そう思う。

「土方さんは、意志の強い方ですよね。でも・・・、お優しいですよ」
「!!」
近藤は、びっくりした。
土方のことを千鶴がそんな風に思っているとは思わなかった。しかも、千鶴の顔が一番柔らかくなったのだ。
近藤の様子に気付かない千鶴は続ける。
「自分にも他人にも厳し方なのだな。と、いうことはなんとなくわかります。でも、たぶん」
お優しいからこそです。



そういう千鶴に近藤は賛同の意味をこめて何度もうんうん。と、頷いた。
「だから、私は恵まれているのだと思っています」
と、言う千鶴をいい子だ!! と、抱きしめたくなる。
近藤は、笑顔がそのまま張り付いてしまうのではないかというほどの満面の笑みのままゆっくりと立ち上がり、千鶴の不思議そうな顔に笑顔で一つ頷いて、勢いよく千鶴の部屋の障子を開け放った。
「をわぁっ」
「いっで!! 新八、てめぇ押すな」
「そんなこと言ったってよ、総司が押してくるんだよ!」
「嫌だな。僕は、男を押し倒す趣味はないけど?」
「総司。何故そこで俺をみる。俺もそんな趣味はない」
「んー。そうだね、でも男装の少女ならやぶさかでもないんじゃないかなと思って。だってさりげなく贈り物しちゃってるんでしょう。それってすっごく抜け駆けだよねぇ」
「総司・・・」
「わっ、一君。刀抜かないでよ!」



雪崩のように部屋に倒れこんできたのは、先ほど話題にあがった幹部たちである。土方以外の全員がここにいる。
千鶴の目が驚きで丸くなった。
全員が一斉に千鶴から目をそらす。ただし、沖田はにっこりと笑顔を向けていたのが例外ではあったが。
その様子に近藤が声を出して笑った。
千鶴は、話を聞かれたのが恥ずかしかったからか顔を赤くしている。その千鶴に近藤は笑顔を向けた。
「諸君、雪村君の中では斎藤君が二番。トシが一番のようだ。まぁ、頑張りたまえ。雪村君、邪魔が入ってしまったが今日は本当に楽しかった。また一緒に菓子を食べてくれるかね」
「はい!」
笑顔で頷く千鶴をニコニコと見つめながら、近藤は千鶴の手にあった湯呑を取り上げた。
恐縮する千鶴に気にすることはない。と、告げて近藤は部屋を出てゆく。そうして、きっちりと全員を千鶴の部屋から追い出して障子を閉めた。

「さて、総司。何か言うべきことはないかね?」
こっそりと逃げ出そうとしていた沖田を近藤は、笑顔で捕まえた。










うちの幹部の皆さんは、こうですよ的なことを書いてみました。
ありえんほど長くなったので二つにわけております。
斎藤さんは、もう本当にさりげなく優しくてでもって天然で信念が揺るがないっぽいけど結構いろいろ悩んじゃっている人で。
左之さんは、大人。もう素敵。私の中ではこれ以外の説明いらない。みたいな人で。
平助は、千鶴とはかわいらしい関係が好みです。実際ゲームはかわいらしかった!
新八は、千鶴ちゃんとはなんていうかかわいがりまくりだといいなぁ。
土方さんは、恋愛要素は分岐までなさそうですが千鶴大事だと思うんですよ。優しいとも思いますし!!
本文に出てこないけど、風間様はいろいろと面白い人です。しかも、実は優しいですよね。ゲームでこれが一番驚いた。

ゲームで、井上さんのお話も私は好きなのですが、近藤さんとの最初の頃のこのやりとりがすっごく好きなんです。
千鶴の部屋にやってくる近藤さん。近藤さんは、千鶴をものすごいかわいがると思います。
井上さんと千鶴みたいな娘が・・・という話はよくしていると勝手に信じて。
長いだけが取り柄みたいなお話でしたがここまでよんでくださってありがとうございました!