「俺ばっかり好きでズルいです」
「ほぅ?」
そう言って、リヴァイがニヤリとした瞬間。エレンは今の発言が完全に余計だったことを悟った。
KISS KISS KISS
「お前だけが好きなのが、ズルい?」
リヴァイは、一気に距離をつめてきてエレンの頬に手をあてた。それだけでドキリとする。いつだって、リヴァイが近づいてくると心臓が騒ぐというのに、そのままリヴァイは顔を近づけてきて、瞳を覗き込んできた。リヴァイの髪の毛が額に当たる。まっすぐに彼を見ると、リヴァイがいつもの表情のまま、彼もまたエレンをまっすぐみつめたまま。
「そりゃどうだろうな?」
と、言って、エレンの前髪を引っ張りキスを一つした。
「髪は思慕」
小さく言って、リヴァイはエレンを再び覗き込んできた。何が始まったのか。いつもならば、ただドキドキしてもっとリヴァイとキスをしたい。押し倒したいなんて思うのだが、いつもとまるで様子が違うリヴァイにエレンは戸惑うばかりだ。そんなエレンがまるで理解できてない様子がおかしいのか、リヴァイが少し目を細めた。
そんな顔もかっこいいなとエレンが思っていると、リヴァイはエレンの前髪をそっと分けてやり、額を露にして唇を寄せてきた。チュ。と、音をたててまた離れる。
「額は祝福。まぁ、友情は関係ねぇな?」
「あの、兵長?」
何を。と、言いかけるがリヴァイは黙れと言わんばかりに、エレンの唇に指を当てた。ふに。と、唇に触れた指を舐めたくなって、口を少しだけ開くが、それがわかっていたのかリヴァイが意地悪にも指をすっと離してしまう。
「瞼は憧れ」
リヴァイの薄い唇が近づいてきたから、反射的に目を閉じると、瞼に口づけをされる。離れていく気配に目を開けば。
(うわっ)
至近距離にリヴァイがいた。リヴァイの表情はいつもとあまり変わらないが、やや機嫌がいいのか瞳は柔らかい。やっぱり、かっこいいなぁと思ってしまいエレンは顔を赤くした。
「エレン……」
リヴァイは、エレンの耳元に顔を寄せて、エレンの好きな声で自分の名を口にする。
「エレン」
低く甘い声でそっと再び名前を呼ばれて、エレンの心臓がドクン。と、跳ねた。そんなエレンの胸にリヴァイはそっと手を置いた。
「エレン」
またも甘く囁かれたそれに続けて、チュ。と、耳朶にリヴァイの唇が触れる。
「耳は、誘惑。意味はわかるな?」
リヴァイの落ち着いた声にゾクリとする。駄目だ、これ。なんだ、これ。エレンは、リヴァイにやめてもらいたくて声をあげた。このままじゃ、心臓がもたない。何かわからないけれど、兵長の色気が酷過ぎる。心停止するんじゃないかのか。と、エレンは焦った。
「へ、兵長!」
だが、リヴァイはふっ。と、笑っただけでエレンの主張を無視した。そのままエレンの鼻に自分の鼻を擦り合わせてくる。そして、頬に、キス。
「頬は、満足感そして―――」
「んぅ」
唇に唇が重なり合う。軽く触れるだけのキスだったが、触れ合った箇所が甘く痺れるような気がするのは、エレンがやはりリヴァイが好きだからだろうか。もっとしたくて、体を寄せようとするのに、ニヤリ。と、笑ったリヴァイがエレンの肩をがっちり掴んで近づけさせない。人類最強の男の力にエレンが対抗できるはずもなく、酷い。と、ぷくっと膨れてリヴァイをみると、リヴァイは満足そうな顔をした。
「唇は愛情だ。なんだその顔は。俺の愛情はいらねぇってか?」
ハッ。と、リヴァイが笑った。
「あ、愛って。ちょっとアンタ」
何を言っちゃってるんだと顔を赤らめていると、リヴァイが突然エレンの足を掴むとその爪先に顔を寄せてきた。そして、エレンの爪先に舌を突き出し、ぴちゃり。と、舐めてくる。
「っ」
普段ならどんなに風呂に入った直後でも絶対にしないだろうに。びっくりして、目を丸くしてリヴァイを見るとリヴァイは、じっとエレンを見上げたまま爪先にキス。それから、エレンの足の甲にも口づけをして、そのまま口でエレンの肌に触れたまま滑らすように上へと這わしていって、脛、腿とキスを続けていく。
「爪先は、崇拝。甲は隷属、脛は服従。そして、腿は支配」
「アッ、ちょ……兵長。内側はダァっ」
これ以上は駄目というか。こんなことをリヴァイにされたら、その気にならないわけはなく、すでに中心を膨らましてしまっているエレンは、そのそばにリヴァイの顔があるのが恥ずかしくなってきた。いいだけ、彼のなかにそれを突っ込んでいるのにも関らず。
(何で、こんなことに)
主に、襲われるのはいつもリヴァイのほうなのにどうしてこうなった。だが、リヴァイはやめてはくれない。
「じゃぁ、腰はなんだと思う? エレンよ」
「うぁっ」
腰の辺りに顔を埋めるようにしてリヴァイが吸いついてくる。そうしつつ、エレンの背中を撫であげて、そのまま背中、腹とキスをする。
「腰は、束縛。背中は確認、腹は回帰。じゃぁ、ここは?」
「ッッ」
胸の突起を含まれてそのまま強く吸い上げられた。そうして、その横あたりを同じようにキツク吸われる。
ドクンっ。と、下半身に更に熱が集まって来る感覚にエレンはもう逃げたくなって身じろぎをする。しかし、リヴァイは、がっちりとエレンを掴んで逃がしてはくれなかった。
(俺は、兵長の何に火をつけたんだろうか)
リヴァイにあちこち吸われて気持ちよくないはずはなく、歓迎ですらあるが、いつもは好き好きとエレンがリヴァイに吸いつきまくって、突きあげて擦って出してだから勝手が違う。半分呆然としたままリヴァイの好きにされていると、リヴァイがエレンの胸の上から顔をあげた。
「胸は所有。当り前だな、お前は俺のものだ。そうだろう?」
「!」
この人は。この人は本当に! エレンはやっぱりこのままリヴァイと繋がりたくなるが、エレンに自由は与えられそうにない。とても楽しそうなリヴァイは、そのままエレンの腕を持ち上げて、二の腕、手首、甲、掌、指先と、丁寧に愛しそうにふわりふわりと口づけてゆく。
「恋慕、欲望、敬愛、懇願、賞賛……」
「もう、兵長っ。いい加減にっ……うわっ」
しましょうよ。とは、言えなかった。リヴァイが突然エレンの喉元に噛みついたからだ。そして、噛みついた部分に舌をあて、ねっとりと舐めあげてきた。そのまま首筋に顔を埋め、そこを吸い上げる。ピリっとした痛みを感じて、息を詰まらせると、リヴァイが僅かに笑った気配がした。
「首は執着なんだとよ。じゃぁ、ここは」
「ッッ!!」
リヴァイが、エレンの喉元に口づけを落とす。そうして、そのまま唇と肌を合わせたまま顎を上り、唇まで戻ってきた。
くちゅり。と、舌をねじ込まれて濃厚なキスを交わす。それから、ゆっくりとリヴァイは離れていって、身を起こした。
彼は、エレンの上に跨るようにしてエレンを見下ろす。そのままエレンの頬に手を伸ばし、エレンの頬を撫でた。
「喉は、欲求。これで全部だ。エレンよ、お前は何を望む?」
目を細めて言うリヴァイの意図に気づいてしまった。
もう、何だよ。と、エレンは思った。何この人、すごい恥ずかしいことを平気でしてくれるんだと思った。普段は、不器用で優しいこの人はかなりの恥ずかしがり屋でもあるから、こんなこと絶対にしないのに。ああ、もう。
(要するに、全部ってことじゃねぇか)
全部、好きってことじゃないか。
勝てない。
悔しい。
「俺は――、」
エレンは頬に宛てられたリヴァイの手を取り、その手首に唇を寄せる。リップ音を立ててそこに口づけて、見上げた。
「貴方が、欲しいです。貴方と繋がりたい」
「悪くねぇな」
そういって、リヴァイが笑った。
終
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