※小十郎と幸村が壊れています。かなりどうしようもないので笑って許せる方のみご覧ください。



■怪人と虎和子■




政宗はその日。必死の思いで城を逃げ出した。冬の日に、奥州から抜け出すことは容易ではない。だが、今の政宗には不可能はなかった。
(冗談じゃねぇ!)
あんな帽子…赤色の目だし帽を被るぐらいなら一人で本田忠勝に挑んで来い丸腰で。と、言われたほうがはるかにマシである。
その場合、政宗の命は確実に無いだろうが、あの帽子を被るよりはマシなのだ。
死んでもいやだった。
あんなCOOLではない、帽子。被ったというだけでなにか大事なものが自分の中から消失する気がする。
ゆえに、彼は逃走を謀った。
目指すは、同盟国甲斐の国だ。
だが、ここでも問題が。
(虎のオッサンは、気に入って被る可能性がないわけではない。うっかり小十郎に説き伏せられる可能性大だ。まかり間違ってすすめられた時、俺は窮地に陥る。虎のオッサンのところは却下だ。本音を言うと、元親の奴のところが一番だが、どう考えても瀬戸内までは辿り着けねぇ。となると、真田のところか。少々心配な気もするが、他に選択肢はなさそうだ)
そう決めて上田までやってきた。
ほぼありえない速さである。冬の天候も雪もなにかもすべてが政宗のあの帽子を被りたくない心が打ち勝った。





帽子は常識を超えるのである。








「つ、ついたぜ・・・・!Hey、猿!少しの間泊まらせてもらうぜ。できれば雪解けまでな!」
「え?! ちょっと待ってよ。春までって竜の旦那。奥州の政はどうすんのさ」
「Ha、小十郎が何とかするだろ。俺は絶対に帰らえねぇ!」
くわっ。と、見開いた目は血走っていた。佐助がそれをみて心持腰が引ける。その顔は引き攣っている。
「な、なんか必死に見えるんですけど」
「あぁ。わかるか?テメェに俺のこの気持ちがよ」
ガシッ。と、佐助の肩を掴んだ。普段は片手で日本刀を自由自在に操る握力の持ち主だ。尋常な強さではない。佐助が悲鳴をあげた。
「わ、わかったってば。ちょっとマジで痛いんですけど!! あ、旦那!! いいところに!!」
「む。佐助・・・政宗殿であるか?」
「Yes。久しいな、真田幸村」
「お久しぶりにござりまする。いかがされた?」
政宗は、ぽい。と、佐助を放り投げた。真実放り投げたので、佐助はぎゃっ。と、叫んで塀に激突しそうなところを寸前で回避する。
忍が政宗を非難する。が、政宗はそれを無視をした。
今は、ここに居座ることが大事。


「聞いてくれ真田幸村。今、奥州では・・・・」
「政宗様!! 見つけましたぞ!!」
「Shit!」



政宗の言葉は途中でさえぎられた。その声はまぎれもなく片倉小十郎。だが、政宗は振り返れなかった。
振り返らなかったのではなく、できなかった。
(ぜってぇ、あの帽子被ってやがる!)
妙な確信があった。政宗は凍りついたままそっと周囲の様子を窺った。
正面にいる幸村には、政宗の背後にいるはずの小十郎がよく見えているはずである。その幸村はというと。
固まっていた。
はじめは目を細めて、変なものが見えた的反応を示し。
次に、その目がだんだんと大きくなっていって、驚いている様子で。
最後は口がぽかんと開いたあと。
彼は信じられない言葉を発した。


「た・・・・・た・・・・・蛸怪人!!!」



「Ha?」
「ぶっ」
「?!」


蛸怪人。素敵な名前に政宗は唖然とした。背後の小十郎が息をのんだ気配がする。ショックを受けたらしい。壁際のあたりから、笑い声が聞こえた。
視線だけ向けると佐助が撃沈とばかりに悶えている。
政宗は、幸村にあれは小十郎だ。と、説明をするか迷った。
なんせ政宗の目の前の男は、真剣そのものだったからだ。

「・・・・蛸怪人。蛸ということは、焼いたら美味いのであろうかっ。いざ、参らん! 蛸狩りぃぃぃぃぃぃぃぃ!! このような珍しき物。お館様にぜひともご賞味いただかねばっ。佐助、手伝え。政宗殿もご助力いただければ幸い」
(喰うのかよ!)
政宗はつっこんだ。こんな首から下は明らかな人間を蛸だと思い、さらに食う気なのがすごすぎる。
(まぁいい。蛸怪人ってことにしとけば、小十郎に追い掛け回されねぇで済むか)
政宗はニヤリとして、振り返った。
「O.K.手伝ってやるよ」
「いざ!!」


これにあわてたのは蛸怪人こと小十郎だ。
「ま、待て。真田!! 俺だ。片倉だ!」
あわてて言うと、幸村は不思議そうに首をかしげた。それから真っ青になる。


「む。その声は、確かに片倉殿のお声。さては・・・・片倉殿を貴様食ったな?! 肉食なのか?!」

「いや、だからな・・・」


小十郎は、幸村の勘違いを正そうとすぽ。と、帽子を脱いで見せた。そこには、見慣れたヤクザ面の片倉小十郎が。
(ちっ、脱ぎやがった)
これでだめかと思ったが、真田幸村はやはり真田幸村であった。
「片倉殿の首が生えたでござるよっ! なんと面妖な」

真顔である。
真剣である。


小十郎が額に手を当てて溜息をついた。政宗はあまりの面白展開に声を出して笑い出す。
佐助は、その場にうずくまってプルプル震えている。死ぬとか言っている。


「片倉殿をお救いせねばっ」
「いや、あのな・・・?」
「蛸怪じぃぃぃぃぃぃぃん!!!! 覚悟!」
「おいっ! 政宗様、笑ってないで止めてくださいっ」
「Ahー,俺の知り合いに蛸怪人はいねぇ」
「政宗様っ。やはり反抗期なんですかっ」



その後。幸村が勘違いに気づき、地面にめり込む勢いで土下座をするまでこの収拾のつかない現場はどこまでもひどい有様となっていったのであった。












ど、どうしようもないほどにギャグです。
皆壊れていて申し訳ないです(滝汗)どうか流してやってください。

(H21.4.12.)