熱いは涼しい





「……ふう」
胡坐をかいてだらしなく文机に片肘をついたまま、政宗は虚ろな目で、横に積み上げられている紙の山を見た。
少しも減っちゃいない。
この事実に愕然としながら、この気温でこれをこなせというほうが無理だな。と、自己弁護をする。
まったく、本当に、どうしたらよいかわからなくはるほど



暑い!!



背中は汗でベッタリであったし、着物合わせはとうの昔に緩めまくって、上半身がほぼ露出してしまっている。
なのにちっとも涼しくないから、最終手段とばかりに髪紐で短い髪の毛をまとめ上げ、うしろで一つに結い、着物の裾を限界までまくりあげてみたけれど事態は一向に改善されなかった。
「OH, MY GOD!」
どうすればいいのか。アレか。今から川へ駆けて行って飛び込んだらいいのか。政宗は冷たい水を思い浮かべて、腰を浮かせかけたところで止まる。
そっと、室外の様子を窺う。
「………」
却下だ。それまでの道が過酷過ぎる。まずこの格好のまま出てゆくのが不可能であるから、着替えると思うだけで汗が噴き出てきそうである。
川に着く前に俺は屍と化す。
駄目だ…暑い。
政宗は、ばったりと仰向けに寝転んだ。投げ出していた団扇を拾い上げ、パタパタと扇いでみるが生温い風が当たるだけでちっとも涼は取れそうにもない。
「Ah〜、あぢィ」
こういう日は、日陰に逃げ込んで倒れているのが一番だ。日の本の北に位置する奥州の夏でもこうなのだから、京の夏はさぞかし地獄であろう。天下統一の暁には夏場は京にいないことを考えねばなるまい…などと、ぼんやりと思う。それにしても、暑い。どうにかして涼しくなりたい。政宗の頭の中では、ありとあらゆる涼しいものが浮かんでは消える。


(Blizzard来ねぇかな)

今ならもろ手をあげて歓迎したい。来い、今すぐ来い。アンタが英雄になれるのは今しかない。
真夏に暴風雪があったら異常気象なわけだが、こんなことを考えるほどに政宗は参っていた。







「失礼いたします」


落ち着いた低い声に政宗はだらしなく寝転んだまま、視線だけを自分の頭の方へ向けた。すると、頭上から政宗を覗き込む小十郎と目があった。
政宗のだらしのない格好にたちまち小十郎は渋面を作った。いまから一人殺ってきます。と、いうような顔つきは本当に凶悪そのものであったが、今の政宗にはそんなことよりも小十郎のきっちりと着込んだ着物のほうが問題であった。
「……暑苦しい」
「…?!」
一言で絶句してしまった小十郎から目を離し政宗は視線を小十郎の後ろに向けた。
先ほどからもう一人いる気配は感じている。
小十郎の背後に赤い色がちらりと見えた。
これはこれは。
涼しいような暑いようなむしろ熱い人間が来ているようだ。政宗は、起き上って衝撃から立ち直り切れていない小十郎を下がらせて口を開く。

「Hey,真田幸村。アンタは布が少ねぇから涼しげだな」
「ま、政宗殿…貴殿。ものすごいお姿であるぞ…」

驚きに目を見張りながら幸村が言う。ああ、そうだろう。政宗は自分で思った。ものすごい暑いんだ。億劫そうに首を振ると、幸村の眉間に皺が寄った。
「政宗殿、暑い暑いと思うから暑いのでござる。この暑さにもめげない熱き心を持てはおのずと涼しくなりまするぞ」
某のように。と、胸を張るが、生憎武田家の生き方を実践しようとはまったく思わない。だが、幸村の言うことは一理ある。


一般に、暑いときに熱いものを食すると涼しくなるという。
同じように、暑いときにがっつり汗をかくような運動をすれば、涼しくなる…はずだ!!


…熱い運動!


政宗の目が鋭く光ったので、幸村がビクリとする。そうだ、そうれがいい。政宗は髪紐を解いて、ゆっくりと顔を幸村のほうへ向けた。
助言してくれたってことは、協力も惜しまないということだな。
そうだ、そうに違いない。
ニヤリとすると、幸村がまた一歩下がる。政宗はゆっくりと手を伸ばす。
「そうだな、アンタの言うとおりだアンタと熱い汗を共に流して、涼しくなろうかと思う」
「おお、そうでござるか! それがしてっきり」
言いかけて、口をつぐむ。赤くなっているあたりが、ものすごくかわいい。
「てっきり?  俺に押し倒されるとでも?」
「う、ちがっ」
「大正解」
にっこりと笑って、政宗は幸村をその場に引き倒した。












「う・・・・アッアッ!!」
心地の良い声が響く。真昼の明るい部屋に二人分の弾んだ息と、熱が発散されて室内の温度は高い。
互いの肌は、じっとりと汗ばんでいて肌を撫でれば湿った皮膚が指に吸いつく。
政宗の硬い指が、幸村の肌に食いこんで、その感触にゾクリとする。
既に二人とも裸であった。幸村を組み敷いた政宗は彼に跨るようにして、覆いかぶさっていた。彼は顔を幸村の肌に埋めて、執拗に愛撫を繰り返している。彼が頭を動かすたびに、湿った肌に髪毛が吸いついて、彼との距離がいつも以上に近いような気がして落ち着かない。いや、こんなことをしている最中に落ち着くもなにもないのだが。
「そこは、駄目!」
「…わかった」
「だからぁ…アッンッッ」
乳首に舌を這わせ、そこをチロチロと舐めながら、もう片方の乳首を親指と人差し指で挟んで抓る。そうされると、ジン。と、体が痺れて力が抜けてしまう。
だから、駄目だといったのに。わかったといいながらもしつこくいじくり回す政宗に抗議しようと彼の髪を掴むが政宗は笑うばかりで一向にやめてくれてはくれない。
「乳首、大きくなったな・・・ほら見ろ」
「ひっ!」
グイ。と、引っ張られて悲鳴を上げた。涙目のまま下を見れば、伸びるはずのない乳首を引っ張った政宗が、その先端に舌先を伸ばし、ツン。と、つついてから白い歯で噛む瞬間だった。
コリ。と、いう音が聴こえた瞬間なんとも言えない甘い痺れに、幸村は鼻から抜けるような声を漏らしてしまう。
「痛いのが気持ちいのか?」
「違…ヒアァン!・・・・痛っ…アッ!」
政宗が今度は、乳首を噛んで歯でそれを擦りながら、もう片方を引っ掻いて思い切り押しつぶした。それが痛いのに、気持ちよくて。
否定したいのに、政宗がするちょっと痛い攻めに、幸村は痛みとは違った悲鳴を上げる。
(それがし、おかしいでござる)
こんな乳首を痛めつけられて、感じるなんて。だが、政宗が乳首をこねくり回し、乳輪を舐めまわし、突起の先端を噛むと、体の奥から熱がじわじわと噴き出して、体の中心を反応せているのだ。
もっと噛んで。なんて思ってしまう自分が本当に淫らで幸村は、ぎゅ。と、目を瞑った。
そんな幸村に政宗が小さく笑う。
その気配も肌をくすぐって、幸村は短い声をあげた。



「アンタの乳首。もうこんなに赤い。乳首だけじゃぁ、かわいそうだな。アンタの肌も…赤く染めてやる」
そう呟いて、政宗は指で幸村の肌を舐めまわすように弄りながら、肌に唇を寄せきつく吸い上げる。時折歯を立てながら肌を吸われて、幸村は逃げようと体を引く。
政宗は腰をがっしりと掴んで離さず、幸村の両乳首の下、二の腕、わき腹、臍の上、胸部の中心部などまんべんなく赤い華を散らしてゆく。
ちゅうちゅうと卑猥な音が室内に響くのに、辺りはまだ昼間で。それがやけに気になって、幸村は首を激しく左右に振った。
「どうした?」
「あ、明るくて・・・・」
「なるほど」
政宗は唇を幸村の肌を滑らすようにして上へ上へとのぼって来て、喉仏に一度口づけをしてから幸村と顔を合わす。
幸村の汗ばんだ前髪を、指で払いながら額と額をくっつけてきた。
「俺はアンタの艶姿がはっきりと見えて最高だけど?」
「…!! …!!」
至近距離で言われ、絶句する。そんな幸村に目を細めながら、唇を塞いでくる。くちゅくちゅと濃厚な口づけを交わしながら、政宗の手は幸村の背後の蕾を探り当てる。
クニクニと入口をほぐしたあと、ぬぷ。と、入ってきた。
「!」
違和感は最初だけ。何度も開かれたそこは、すぐにその味を思い出し、飲み込むようにそれを含んでゆく。
「ヒッアッ・・・アッ・・・んぅ」
「指じゃ足りねぇようだな?」
「違っ…アッ……。――!!」
指を引き抜かれて、もっと質量のある熱い塊が入り込んでくる。ぬぷ。と、はいってきたそれの熱さに幸村は声をのむ。
内壁を擦りながら、奥へ進むそれを悦ぶように幸村の内側はそれをぐんぐん飲み込んでゆく。
「幸村」
「アッんっ…ハッ」
奥まで収まった政宗が息を吐く。そうして、幸村を抱えなおして体を引いた。
「ああっ!! あっ、あ、あっ!」
ぐちゅ。ぬぷ。と、抜き挿しされる度に排泄感に似た感覚と圧迫感のような感覚に幸村はただ悶えるだけであった。
もう、何が何だかわからくなってゆく。体に熱が溜って行って、それが幸村自身を膨らませていった。そこは既に潤み始めていて、少しの刺激で弾けてしまいそうだった。
「幸村、アンタの汗もなにもかもいいな」
政宗が幸村を激しく揺さぶりながら、頬を舐めてニヤリとする。

「何言って…アッアッアツ――――――ッッッ!!!!!」


幸村が言い返そうとしたときだった、ぐい。と、抱えなおされていきなり際奥を突かれた。
頭が真っ白になる。
体が震えた。


勢いよく幸村の中心から、精が飛び散る。
それと同じくするように政宗もまた幸村の中で絶頂に達した。







夕刻になり、少しだけ下がった気温が汗ばんだ肌に心地がよい。
畳の上に直接寝転んだまま、政宗は傍らで屍と化している幸村の背中に手を伸ばした。
しっとりと濡れた肌にまだ味わいたいといたずらな動きをすれば、幸村が視線だけでやめろと睨む。その目元が赤くなっていて、どうにもこうにも抱きたいと思い政宗は体を起こした。
「じゅうぶん動いたではないか!」
「…最近、夜も寝苦しくてな。運動すりゃ、ぐっすり眠れるだろ?」
「!!!!!!!!」
絶句した幸村を捕まえて、政宗はにっこりと笑って、唇を塞いだ。














サイトでは久し振りの年齢制限SSです。同人誌ではほとんどR指定だから久し振りでもありませんが(笑)
現在拙宅ブログでは連載を二本やってますが、ブログだとR指定まずいんじゃねぇの?と、内容を自粛した(計画の時点で)のでなにか書きたいなぁと。
だって夏だよ、夏。
夏と言えば、エロ。エロといえば夏です。(間違った認識)

戦国時代は、江戸時代よりも当然前なの奥州のある東北地方が今現在よりもずっと涼しいはずなのですが夏は、夏ですから。
北海道民にとっての酷く暑いが、本州の人にしたらそうでもないよ。っていうのと同じです。
今回政宗を夏弱いと設定しましたが、筆頭。なんとなく猫のイメージも(同人的イメージ)あるので夏は苦手なんじゃないかと。
海だ!浜辺だ!幸村の褌だ!みたいなことは言いそうだけど。
海水浴が始まったのがもっと後の話のはずですが、幸村の褌にためなら時代の最先端をゆきそうですよね、筆頭。
きっとビーチパラソルの下から出ないんだと思うけど(笑)
しかし、筆頭は露出が少ないので海辺で上半身裸とか萌えますね! 私がハァハァします。

今回のお話で、キスマーク付けられた幸村がどんな風に帰宅するのか考えると、心が躍ります。
必死で隠したいのに、無理だよ。みたいな。

とにかく楽しかったです。
ここまで読んでくださってありがとうございました!


サイト掲載20107.25. 青山怜


ブラウザを閉じてお戻りくださいね。