【猿飛佐助と竜の秘宝】






その日。猿飛佐助は、珍しく己のみの判断で奥州伊達政宗が居城、米沢城に忍び込んでいた。
(まったくさぁ、なんで俺様がこんなこと…俺様もホント旦那に弱いなぁ)
まいった。と、屋根裏で這いつくばったまま苦笑いを浮かべたがすぐにそれを引き締めた。
油断大敵。と、心のなかで呟いてから、佐助はそっと天井板を外すと、音もなく室内に入り込んだ。
(俺様にしたら、警備が厳重と有名な竜の旦那のとこも、まだまだだねー。っと)
長居は無用とばかりに、佐助はざっと室内を見渡し、目的のものがあるだろう場所へ迷うことなく近づいてゆく。
(さっすが、俺様)
思わず口笛を吹きそうになるが、我慢した。佐助は、目的の物を手にすると、代替品を戻す。
そうしてから、天井へ飛び上がった。
(今日も俺様の仕事は完璧…っていうか…もうさ、これがなんだっていうのさ、旦那!!)
佐助は懐にしまったそれを思い出しながら、首を捻った。まぁいい。すぐにわかることだ。それよりも。佐助は、政宗の部屋に置いてきた代替品を見たときの政宗を想像してニヤニヤした。
「いやー、俺様ってば、親切〜!」
誰に。とは決して言わない。佐助は、みつからないうちにさっさと帰りますか。と、その場を去った。





「この辺で、いいか…?」
適当な木で立ち止まると、佐助は周囲の安全を確認してから、しゃがみこんで懐を探る。
取り出したのは、一冊の書物のようなものだった。これを盗み…いや、少しだけ拝借したのには訳があった ―――




*******




ある日。佐助がいつものように主である幸村に用事を言いつけてもらいに、出かけると、主の様子がおかしかった。
真っ赤どころか真っ白になって呆然としていたのだ。
当然、不審に思う。佐助は原因を究明すべく考えた。

その1 大将(信玄)に怒られた。
その2 大将に笑われた。
その3 大将に気づいてもらえなかった。
その4 団子を地面に落とした。

(その1は、怒られつつも、旦那の場合は大将の素晴らしさに感激し、最終的にいつもの殴り合いになるから、その様子がないことから却下。その2も最後は同じだから却下。その3は、真っ白どころか燃え尽きて某はもう駄目だ。佐助、世話になったとか言い出しそうだから違う。その4だと泣く。泣きながら、『さ〜す〜けぇぇぇぇ!!! 某の団子がぁぁぁぁ。だんごぉぉぉぉ!!!!』と言うに…はっ?! まさか旦那拾い食いなんてしてないだろうな。…いや、なんでそっちに考え広げてるの、俺様。違うでしょ!)
一人つっこみしてから、改めて幸村をみた。
「旦那、どうしたんです?」
「ぐっ…なんでも。別に政宗殿がだいありぃに何を書こうと…」
「だいありぃ?」
聞き返すと、幸村は真っ赤になってなんでもないと、大声で言った。もはや返事ではなく怒声に近い。
だからこそ思う。
(破廉恥なこと書いてあったな)
これは確認して、場合によっては牽制しておかないと。ひとの恋路を邪魔したり、口出しするのは、趣味ではない。
けれど、主がこうだと佐助がとにかく色々疲れるのである。
「だーんな、ホレ」
「…んまいでござる!」
甘味を絶妙の間合いで放り込んだ。すると幸村は、モグモグと咀嚼し、ごっくんと飲み込んで、満足げにニコリと笑う。
(…たまに悲しくなるよね…)
佐助は、ハァァァァ。と、地の底まで辿り着けそうなため息をついたのであった。




*******




「…で、これがだいありぃね、たぶん」
あのあと佐助の持てるすべての技を尽くして、聞き出したところによると、黒革表紙のそれは政宗が毎日就寝前に、心にとどめておきたい様々なことを綴っておくものらしい。要するに日記だ。
それをなぜ幸村が、目にしたもしくは、知ったのか。
(大方、竜の旦那が自分で見せたんだろうけど)
と、いうことははじめから幸村に見せるために書いたとしか思えない。
佐助は、悟った。


絶対、ロクなこと書いてない。


と、いうことを。
「見ればわかるよね。ってことで、いざ拝見〜」
ぱら。と、開いた。

「えっと…某月某日晴れ。

 今日も幸村はとてもcuteだった。こいつの唇を吸って味わい尽くし、その中に潜む赤い舌と俺の舌を絡めて吸い上げて、舌先を噛んでやりたい。そのとき、お前は『やめてくだされ』なんて、言うくせに、その瞳は俺とのkissに酔いしれて、うっとりとして濡れはじめていて…俺は、そんなお前に『Ha、そう言うが、これはなんだ?』と、あいつの……を握ってやる。すでにそこは、反応しかけていて、かわいいったらない。それを取り出し、硬くなりかけたそこに指を絡め、指の腹で擦り上げると、たまらず幸村は『あっ』なんて、蕩けちまうような声をあげた。ヤベェ、今すぐにあいつにブッこんでかき回してぐちゃぐちゃにしたくなる。
そんな俺に気づくこともなく、幸村は俺からの刺激にその身を震わせているだけだ。もっと感じたらいい。俺は、いい具合になってきたあいつの……から手を離し、いやらしく開かれた幸村の脚を両側にもっと開かせる。
露になったそこに顔を埋め、内側の皮膚の薄い部分に吸い付いた。『はぁ…ぁっ』俺がそこを吸ったり舐めたりするたびに、幸村はブルブルと体を震わせ、あいつの中心からは、蜜があふれ出す。その蜜で滑ったそこに再び手を伸ばして、根元を締め付けると、幸村が悲鳴をあげた。俺は、それを無視して、口に含む。はじめは吸い上げるようにそれからゆっくりと追い立てるように愛撫を始める。『あっ…はぁ…ぁん!』

   …………」


そっと閉じる。それから、また開いた。
「幸村の乳首もだいぶ開発されてきた。前よりも少し大きくなったし、布が擦れるだけで、最近は勃っちまうようで、たまにモジモジしてやがるからそれがまたたまらない。以前は、乳首を噛んだら痛がるだけだったが、今はそれがたまらなくイイらしい。あいつ、乳首だけでイケるんじゃねぇか。今度、やってみよう」
佐助は、頭痛がしてきたような気がして、額に手を当てた。
「…幸村の綺麗なbackもいつのまにか俺仕様になってきて、自分で俺の……を飲み込むようになって、ずぶずぶと入り込めば、歓喜の声を…。……なんだこれぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!!」
ぺい。と、佐助はそれを地面に叩きつけた。とても達筆な字で書かれているのは、政宗と幸村の情事の記録だ。
(これ、朗読してるよな、絶対)
それを聞いた幸村の姿を想像して、佐助は頭が本当に痛くなった。
「俺様、甘かったなぁ」
遠くを見つめて目を細めた。そう、甘かった。やはり、いくら両想いでも許可してはいけなかったのかもしれない。だがしかし、幸村も真っ白になっていたとはいえ、最後には。
「頬染めて、喜んじゃってたから、救われないよね」
溜息しか出ない。
「俺様びっくりだよ。旦那ったら、大人の階段昇りすぎ」
と、いうよりも。それ以前に。


「普通。毎日、連載のように延々と情事を書き綴る?」
まぁ、これはたぶん。明らかに幸村をいじめてかわいがる用なんだろうけど。
(あの日はこうだったとか言って、苛めるんだ)
佐助は投げ捨てた日記を持ち上げ、最後の真っ白なページを開き、筆を取り出した。
その顔は、ものすごい笑顔だ。


破廉恥大名


そう記す。だが、佐助の書いた文字は紙に吸い込まれて、消えて真っ白になる。
「え?」
かわりに浮き出たのは、さっきまでみてきたものと同じ筆跡で。


“やぁ、はじめまして。俺の名前は伊達政宗。幸村との情事の時の記憶さ。キミは?”


と、出てきた。
そう、日記から。文字が勝手に。


「ギャァァァァァァァァッッッ!!!!火遁 ――― っっ!!」


その後。日記がどうなったのか。
それを知るのは、佐助のみ。の、はずである。








6/22に行われたDSオンリーで配布したペーパーより再録です。
これをDSで初参加イベントで配った私は相当救われません(笑)
このネタ一度でいいから使ってみたかったんですっ。
ものすごい楽しかった&満足しました。
いつも、佐助には本当にすまないことをしていると・・・思います。
20.8.23.更新

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