青色のサンタ




「Hey! 邪魔するぜ?」
ドカン。と、いう爆発音のような音と共に、派手に現れたその人に、幸村は唖然としてしまった。
ぽかん。と、口をあけて彼の人を見上げれば、その者は満足そうにニヤリと笑った。
「・・・ここは、上田でござる・・・」
「あぁ、知ってるぜ。ここは、真田幸村。あんたの預かる城の中だ」
ズカズカと上がりこんで幸村の前にたつ。自然、座っている幸村はさらに上を見上げる格好になってしまう。
なぜ。
まずどうやって、警備を潜り抜けてこの部屋に侵入したのか。
それ以前に、なぜ奥州筆頭の伊達政宗が上田にいるのか。
障子を吹っ飛ばして現れる必要もあったのだろうか・・・。
そういえば、あれを直すのはこの幸村か。

幸村の脳内は大混乱だ。

「ま、幻をみているのでござろうか・・・」
新手の病か。幸村は、ゴシゴシとやや強く目をこすった。
寝ぼけているに違いない。そう思ったのに、いくらこすっても、こすっても目の前の青色は消えてはくれない。
「おいおい、そんなに擦ると痛くなるぜ?」
そういって、幻なのかもしれない伊達政宗は幸村の前にしゃがみこんでその手を掴む。
「なぜ、ここに」
「…」
政宗は目を細めた。少し赤くなったのかもしれない幸村の目元に手を伸ばしてくる。
「・・・赤くなっちまってるぜ?」
「っ!」
決してやわらかくはない指が触れる。ややかさついた指が、目元をなぞり、頬へと流れる。
なにがしたいのかまったくわからぬまま、幸村はおずおずと政宗と視線を合わせた。
(近い!)
至近距離でみる政宗の顔。
戦っているときは至近距離で顔をあわせることはある。
だが、こんな風にまっすぐにじっくりと眺めるのは初めだった。
(綺麗な顔でござる)
整った顔立ちである。切れ長の目がとても印象的で、吸い込まれそうな目に幸村は視線をそらせずにいる。
「やわらけぇ」
頬を軽く押して、そのまま手のひらで包み込むようにして政宗は呟く。
低く柔らかなその声に幸村はドキリとする。
(な、何事でござろうか)
心の臓の音が、やけに煩い。トクントクンという音が、政宗にも聞かれそうで幸村は慌てて、政宗の傍から逃れようと身を引く。
「な、何の用でございまするか」
誤魔化すように、いうと政宗は小さく笑う。
「用、ねぇ・・・? なぁ。真田幸村」
政宗は膝を進めて、幸村に近寄る。ここで逃げては、男が廃る。そう思って、得体の知れない緊張をその内に秘めながら幸村は受けて立つ。というように、ずい。と、身を乗り出す。
自然、再び二人の顔が近づいた。


チュ


「なっ・・・なっ?!」

一瞬。軽くぶつかったものに幸村は言葉を失う。今、触れたものはなんだ。と、相手を見返せば、ニヤニヤ笑う顔と出会う。からかわれた。そう思って、大声をだそうと息を吸ったときだった。


「Merry Christmas。真田幸村。これを、アンタにやるよ」
「・・・・?」


ぽい。と、投げて寄越されたのは小さな箱。見たこともない鮮やかな色彩のかわいらしい小箱に幸村は、またもぽかんとした。
「めりぃくりすますとはなんでござるか」
「異国のeventだ」
「異国の?」
「Yes。…あけてみな?」
言われるがまま、綺麗な包みをとり、中を開けると。


「綺麗でござる・・・」
「アンタは甘いものが好きだからな・・・異国の菓子だ」
菓子と聴いて、幸村の目が輝く。一個、小さな包みに入ったそれを取り出し、丁寧に包装を取り除き取り出す。そして、小さなそれを口に含んだ。
「・・・うまいか?」
ふにゃり。と、幸村の顔がゆるんだ。そのままコクリ。と、頷くと政宗は目を細めて頷く。
口の中にある甘く蕩けるような菓子に心を奪われていたが、すぐにはっとする。
異国の菓子など最高級品である。このような異国の菓子をくれた政宗に礼をしないなどとは、非礼すぎる。
幸村は慌てて、部屋の中をみまわした。
あるものといえば、佐助に黙って隠しておいた干菓子ぐらいのものである。
「そ、某もなにか・・・!」
幸村は、焦った。
今は、夜。城下に走っても店など開いているはずもない。
慌てふためく幸村に政宗は、小さく笑って手の伸ばす。
ぽす。っと、幸村の頭に政宗の手が乗せられた。
「別にいい。物なんていらねぇ」
「しかし! 某の気が済まぬ・・・!」
肩揉みでも、いまから鍛錬でもいい。
なにかしたい。
なにかしなければ。
幸村は必死だった。ぐるぐると今すぐできることを考えて、うむむ。と、唸っている。
ゆえに、伊達政宗の口元が妖しく歪んだのを見逃した。


「じゃぁ・・・俺は、アンタが欲しい」
「某はお館さまのものであるから、それは無理でござる」
「・・・そういう意味じゃねぇ・・・こういう意味だ」
「・・・んっ」
顎を捕らえられて、唇が重なる。始めは触れるだけだったそれは、上唇を吸い上げ、舌先で幸村の唇の形をなぞる。抵抗しようとして少しだけ開きかかった唇の割れ目ににゅ。と、舌が差し入れられてこじ開けられる。
「んんーーーっ!!・・・!!」
後頭部を押さえられて、身動きがとれず幸村は、苦しくて政宗の胸をドンドンと叩くが一向にやめてくれる様子はない。それどこかどんどんと幸村の口腔内を犯していき、驚き慄いて引っ込んでいる幸村の舌を探り当てると、それを絡めて吸う。
「んぅっ・・・んぁ」
くちゅ、ちゅう。と、卑猥な音が耳に入り込んできてそれが余計に羞恥心を煽ってゆく。
(なにも、考えられ・・ない・・・)
だんだんとフワフワしてきて幸村の体から力が抜けていった。
「幸村・・・」
甘い声にうっとりとして、乞われるままに唇を重ねた。吸われて、舐められて。
時折、舌先を甘噛みされて幸村は身を震わせた。
(こんな・・・このような)
破廉恥。そう思っても、体は歓喜に震え、政宗を突き飛ばすことができない。それどころか、トロトロに体は口付けによって解かされてゆき、いつのまにやら、政宗にすがるように抱きついている有様である。
「んっ・・・ぁ・・・まさ・・・むね・・・どの」
ようやく離れた政宗の唇は、幸村と政宗の唾液で光っている。そこから、目が離せない。
「・・・政宗殿」
「・・・幸村・・・」
再びそっとそれが重なった。
それはとても、気持ちがよくて。
幸村は無意識に政宗の背中に手を回した。







END







呟き
メリークリスマスです。クリスマスです。まだイブです。キリスト様のお誕生日は、25じゃ。と、ばかりにギリギリのアップです。
もらってくださる人など皆無だと思いますが、気分だけ。
せっかくサイトを開設したのにイベントごと無縁なのもどうかと思い、激甘にしてみましたが、私の脳内の激甘。全部ネタがR指定でした(滝汗)本文の続きは脳内妄想でよろしくお願いいたします・・・。
殿はたぶん。無断外泊です(笑)そして、お菓子は始めから幸村へとは思っていたけど、無断持ち出しです(笑)
翌朝、気持ち悪いぐらいの笑顔の小十郎が迎えにくるのですよ。ふふふ。ここまで読んでくださってありがとうございました。
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(19.12.24.)