甘味
「燃えよ我が魂」
そう、真田幸村は言う。では、この場合は燃えるのか。萎えるのか。怯えるのか。
(知りてぇな? 真田幸村)
くくく。と、意地の悪い笑い声を立てた。
「伊達殿。こ、これはどういうことでござろうか!」
目の前には、政宗を睨みつける若き虎が一匹。名を真田幸村という。甲斐の虎の秘蔵ッ子として名高い武人ではあるが、今はその威厳が跡形もない。
真田幸村は真っ赤になって怒る・・・と、いうよりも恥しがっている。
と、いうのも。
真田幸村は今。彼的には混乱の極みにあった。両手は上で縛られ、なぜかきっちりと着ていたはずの着物ははだけられて、申し訳程度に帯が引っかかっているような状態だ。
伊達政宗はそんな真田幸村の上に覆いかぶさるようにして、じっと観察している。
これが何を意味するのかなんて、いくら奥手の純情ボーイの真田幸村でも理解できるだろうと政宗は思う。
・・・ここまでしないと気づかなかったら、悪戯を仕掛けた政宗が虚しい。
男同士。恥しがる必要もないだろうに、しきりに。
破廉恥と先ほどから叫んでいる。
その気でもあるのか。
だったら、大歓迎だ。
「good view」
「ぐ・・びゅ・・?」
「普段からこんな風に、肌を露出してるくせに、意外に滑らかだな」
ぴと。と、露になった肌に指の腹で触れる。
つつ。っと、幸村の肌をなでるように動かせば、幸村の顔がさらに赤くなる。
「で、俺のどこが破廉恥だって?」
その口で言ってみろ。と、促せば真っ赤になったまま、あうあうと口をぱくぱくさせる。
どうも真田幸村の貧相なボキャブラリーでは能力の限界を超えてしまったようだ。
「俺は」
つつつ。と、腹筋の割れ目に指を滑らせながら、政宗は涼しい顔だ。
「あんたを食べたい」
「!?」
きょとん。と、いう顔をする。非常にかわいい。
なんでよりによって、幸村なのか。と、日ごろから政宗を悩ましているのだが、これだけかわいい顔をされるとああ、無理だと思う。
(なんつう、かわいい顔しやがる)
このまま唇を塞いでしまいたい。そう思いながらも、なんだかそれではこっちが負けた気がする。
政宗は涼しい顔を保ったまま、意味がわかってないらしい幸村に告げる。
「わからねぇのか?」
「・・・まさか・・・!」
サァァァ。と、血の気が失せた。そんなに嫌か。政宗は、小さく舌打ちをした。
「そ、某は食うても不味いでござるよ。第一、甘くない!肉は硬い。おまけに、人でござるぅぅぅ!!」
「Ha?」
俺は、いつから外道になった。まぁ、幸村ならお約束の展開ではるがやはり頭が痛かった。
だが、ここで萎えては政宗の負けだ。
「いや、あんたは最高のDessertだぜ?」
そういって、ぺろり。と、頬を舐めた。
「ま、伊達どっ・・んっ」
抵抗しようとする幸村の唇を塞ぐ。ちゅう。と上唇を吸って、くちゅり。と舐める。だんだん息苦しくなってゆるんだ唇の割れ目から、にゅ。と、舌をねじ込ませてびくついて引っ込みかけた幸村の舌を探し当て、絡める。
「んっん・・・ふっ」
ようやく解放すると、ハァハァと胸で息をしながら幸村が政宗を睨んだ。
だが、赤らんだ頬に潤んだ目。政宗を誘っているようしか見えない。
(まったくあんたは天然で困る)
そうやって、自覚無しに誘うのだから。政宗は、無言で無防備に眼前に晒された幸村の肌に顔を埋めた。
燃えるのか燃えないのか。
知っているのは、自分ひとりでいい。
「・・・やっぱ甘ぇ。あんた団子の食いすぎじゃねぇのか?」
「なっ! そんなことござら・・・ぁ。そこは駄目でござる・・・ん」
完